はじまりのまえ、おしまいのあと
未来古代楽団 feat. DAZBEE
🩵 だれもしりはしない 🏛 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 第13部〖神話〗 Ⅰ. 決断 一夜明け、また朝が来た。昨日の出来事など嘘だったかのように、日常は何も変わらず続いている。エクレシアとニネヴェは地下へ降り、もう一度聖典をAI機器に読み込ませようとした。しかし── 「駄目だぁ。やっぱり、白紙のページは読み込めませんでしたね」 「……そうか」 エクレシアは眉間に皺を寄せながら顎に右手をやり、数秒固まった後、やけにさっぱりとした顔つきになりニネヴェを見つめた。 「残念だが、研究はここまでのようだね。この聖典はレプリカで間違いない。神話を模して書かれた創作話といったところだろうか」 昨日サフィと話をしてから、ニネヴェに聖典のことをどう伝えるべきかずっと頭を悩ませていた。けれど、不器用なエクレシアは上手く誤魔化す方法を知らない。考え続けた末、結局事実をありのままに伝える決断をした。案の定、素直なニネヴェは特に疑問を抱くことも無く、ただ告げられた真実にガックリと肩を落とした。 「そう、ですか。じゃあ、あたしたちが今までしてきたことは、全部意味の無いことだったんですね。……せっかく、こんな辺境まで来ていただいたのに、エクレシアさんもさぞお辛いでしょう」 悲壮感を漂わせながらも、ニネヴェは自分の感情よりもエクレシアのことを真っ先に気にかけてくれているようだ。その優しさに胸を打たれながらも、エクレシアは微笑んで首を横に振る。 「いいや、それは違うよ、ニネヴェ。世界に無意味なんてないのさ。例え今は意味の無いことに思えても、私たちの軌跡は、必ず未来の礎となる」 エクレシアは背伸びをして、自分より頭一つ分も大きなニネヴェの頭をそっと撫でた。 「それにね。何も無かった、なんてことはないよ。君は私と出会って、聖典に触れて、ものごとを『知る』喜びを覚えた。その体験は、とても有意義で素晴らしいことだと思わないかい?」 「あ……! 」 ニネヴェは目を見開いて、お菓子を貰った幼い子どものように一瞬で顔を綻ばせた。彼女の中で、何かのピースがはまったのだろう。 「確かに、そうですね。あたし、エクレシアさんから聖典の話を聞いて、もっと色んな歴史を知りたくなりました。教えてもらった古代ロマルニア帝国のお話も、とっても面白かった。この気持ちは、今もまだ消えてません!」 「ふふ、そうだろう。それに、私だってこの生活で得たものがあったよ。君の作る食事があまりに美味しいものだから、食、ひいては暮らしへの興味が出てきたんだ。老いてからも惜しみなく研究を続けるために、健やかな毎日を心がけなければと身に染みて感じたよ」 「わぁ、それじゃあ、あたしもエクレシアさんにプレゼントを贈れていたんですね!」 エクレシアとニネヴェは顔を見合わせると、どちらからともなく吹き出したのだった。 この物語は、大多数の人間から見れば、何も起こらなかった物語。天使たちの真実は秘匿され、日常は変化することなく地続きに流れる。エクレシアとニネヴェが出会っても出会わなくても、世界は同じ形のまま回り続けている。 けれど二人は、二人だけは、確かにかけがえのない最善を得たのだ。その真実は、彼女たち自身と、天界だけが知っている。 「さようなら、エクレシア。人間と過ごす時間は、やはり悪くなかったよ」 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── むかし、あるところ なつかしいおはなし おしまいのあとを だれもしりはしない ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── ⛪️エクレシア cv.唄見つきの https://nana-music.com/users/1235847 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 前章 第12部〖禁忌の扉と8番目の天使〗 前節 Ⅰ. 託された真実 (楽曲: 🧊すずめ(feat.十明)/RADWIMPS) https://nana-music.com/sounds/06d2ea6e 次節 Ⅱ. 君は未来に何を見る? (楽曲: 🏛️神々が愛した楽園〜Belle Isle〜/Sound Horizon) #ロマルニア帝国の聖典より #リサ伴奏 #グリムエコーズ
