死ぬ天才。
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死ぬ天才。
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「キャラクターが勝手に動くって聞いたことない?
ほら、天才ぶりたい作家たちがこぞって言うやつ。
自慢じゃないけどさ、
俺もそうだったんだよ。
頭の中で勝手に冒険が始まって
キャラクターたちの声も聞こえてた。
キャラクター達が生きるその街の喧騒も全部全部聞こえてた。
それが今さ、
キャラクター達がこぞってこっちを見てるだけなんだよ。
見たことない冷たい顔で、何も言わずただ見てる。
あんなに楽しそうな顔で冒険してた奴らと目を合わせるのが嫌でさ、
そっちは無視して、
新しい真っ白な原稿用紙に向かうでしょ?
想像より先に恐怖がくる。
この原稿用紙をどう埋めようか?じゃなくて
埋めなきゃ、がくる。
スランプなんだ、ちょっと休めばまた書けると思って
気休めに本屋さんにでも迎えば、
グッズになったキャラクター達と目が合う。
その日、無理矢理ペン持って、無理矢理主人公を殺した。
その原稿はまだ提出してない。
ネームも作らなかったし読み返してもない。
もう無理なんだよ。
俺はもう書けない。」
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