客が帰った後に部屋の出窓を開けて外を眺めつつ、煙管を吸うのが習慣になったのはいつからだったか。
他の見世の灯りが煌々と輝く夜更けの空を眺めながら、禿が気分転換にと置いてくれたラジオの有線を聴きつつ、大きく煙を吐き出す。
聞きやすいテノールがこれから流す曲の説明をして、声が途切れた。
声とは対照的で寂しげな音がポツリポツリと流れはじめて、視線は外に向けたまま耳に入ってくる音に意識を向ける。
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【歌詞】
あてもなく一人 さまよい歩き続けた
かすかな吐息を ただ白く染めて
移り変わりゆく 季節のその儚さに
理由もなく 涙がこぼれた
「今も愛している…」
降り続く悲しみは 真っ白な雪に変わる
ずっと空を見上げてた
この身体が消える前に 今願いが届くのなら
もう一度強く抱きしめて
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愛だ恋だと騒ぐ奴らをバカにしてきたが、この曲のようにただ一途に思いを募らせるのも悪くないのかもしれない。
出会ったばかりだというのに気になっている男の姿が脳裏にチラついて、フッと自虐めいた笑みがこぼれる。
この時代に身分なんてものはないはずなのに、あの男と俺とでは身を置く環境も歩んできた道も違いすぎる。
煙管を咥えて煙を胸の奥深くまで吸う。
誰かを欲しいと思ったことも、誰かに求められたいと思ったこともないけれど…
思うくらいなら許されるだろうか。
ついと視線を上げて夜空を見上げても、煌々と輝く灯りが眩しくて星も月も見えない。
まるで希望などないといわんばかりの景色に、目頭が熱くなった気がした。
そのまま思考を放棄するように、胸深くまで吸った煙を勢いよく吐き出す。
手に持った煙管でラジオの電源を落とせば、窓の桟に寄りかかって目を閉じた。
どうか明日が来ませんように…
ただ、それだけを祈って。
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Vocal 来栖 涼 (CV. 愛川 ゆうひ)
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企画 CROSS×RESOMANCE
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