小さな恋のうた
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小さな恋のうた
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#アニソン #からかい上手の高木さん #高木さん #高橋李依 #MONGOL800 #小さな恋のうた #恋してマーメイド #声劇 #お魚さん
🐟スペシャルアフターライブソロ曲編⑨🐟
【小さな恋のうた】by三野笠子
🐠「先生からのエール、受け取れ!」
素敵なご本家様
『小さな恋のうた』
https://youtu.be/dTRE1wsqKXM?si=ObiPeEIbqzCk6VaD
お借りした伴奏作成者様
櫻(萌歌団)様
https://nana-music.com/sounds/06839ede
【キャスト】
(敬称略)
🐠 三野笠子(みの かさこ)cv.おたけ
〔 https://nana-music.com/users/1276899 〕
『広い世界の1つの真実』
私があの人に会ったのは、私が高校生の頃だった。
当時、私が通っていた高校は田舎にあり、近くの高校との統合が決まっていた。
私達の代で生徒は最後…その生徒も3学年合わせて40人といないが。
小さな田舎の学校ではあったが、私はこの学校のあたたかさが大好きだった。
特に好きなのは、春。
校庭を囲むように植えられたたくさんの桜が咲く。
穏やかな風に舞う桜と、それを見守り続けてきた私たちの学校。
…無くなるなんて、想像もつかなかった。
この場所が、この青春が、一緒続けばいいのに、なんて思っていた。
私が3年生になった春、教育実習の先生が1人やってきた。
その男性は爽やかな容姿で性格も優しく、すぐ生徒達の人気者になった。
確かにすごいいい人だったけど…私はその人の瞳はいつも何処別の場所を見ているような、そんなふうに感じていた。
なんとも言い表しにくいんだけど…何処か遠くに行きたがっているというか、何か別のものを求めているというか…
綺麗な容姿も相まって先生はなんだか物語からでてきたキャラクターのようだった。
私は美術部に入っていたので、モデルになってよ〜なんて冗談混じりにお願いしてみてもやんわり断られた。絵画映えしそうなのに。
…あの日も、私は絵を描いていた。
「…なんか、違う。こうじゃない気がする…」
制作途中の絵画が気に入らない。だけど、理由はわからない。まただ。
私は今、廃校になる大好きな学校と大好きな桜並木を残したくて絵を描いている。
どうしても、大好きな景色を残したい。なのに納得がいく作品が描けない。
廃校が決まってからずっと挑戦して、何枚も何枚も描いてきた。だけど何かが足りない。
「…もう、時間がないのに。」
この春の桜が最後の桜だ。来年は…ない。
ラストチャンスなのに、と私は焦り、それがより筆を鈍らせる。
悪循環に陥り自分ではどうしようもできなかった。
「おや、綺麗な絵ですね。」
そこに現れたのは先生だった。なんでこんな人気のない美術部なんかに?
「校庭の絵、ですね。僕もあの景色好きです。」
「…でも、何か、足りないんです。もうこの春が最後なのに…!花が散るまで後少ししかないのに…!」
先生に言ってもどうしようもないじゃん、早く次を描かなきゃ。
次の作品を描くために新しく準備を始めると何故か先生も横で同じ準備を。
「久しぶりに、僕も何か描いてみようかと。」
「先生絵描けるの!?」
まさかの。こんな見た目サッカー部部長な先生が。
い、いや、そんなそんな。どうせ簡単なイラストとか…
「え、うっま。」
全くそんなことなかった。あっという間に先生は美しい夕焼けの街並みをかきあげた。
あれ?この街並み…学校から帰る時によく見る光景に似ているような?
「…僕は、この部活出身ですから。」
「え!?先生先輩なの!?そんな運動部みたいな見た目して!?」
「実は運動音痴で運動は全く。」
「ええ…」
衝撃的だったが、なんだか嬉しかった。少し親近感が湧いた。
その日から私と先生は一緒にたくさんの絵を描いて、たくさんの話をした。
先生はいつか旅に出て、たくさんのものを見て世界の素晴らしさを教えられるような美術教師になりたい、と話してくれた。
鳥みたいに自由な先生。きっとあなたの瞳は遠い世界を見ていたんだね。
そして、先生の実習は終わり先生は帰ってしまった。だけど、手紙のやりとりはずっと続けてくれた。
どうやら、世界中を旅して色々な絵を描いてるみたいで、たまによくわからない海外から綺麗な絵手紙が送られてきた。
そして、次の春…。私は高校を卒業した。
校庭から大好きだった場所を眺めるとやっぱり寂しくなってしまう。
だけど、大丈夫。
卒業だからなのか、先生からは綺麗な桜が描かれた絵葉書が送られてきた。キャンバスと何枚もの絵葉書を抱きしめる。大切な、大切な宝物。
私は、この春に街を離れて美術大学に進学する。
先生のおかげで、夢が見つけられたから。
…見つけられたのは、夢だけじゃないんだけどね。
それを先生に教えるのは次に会えた時だから。
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広い宇宙の数ある一つ 青い地球の広い世界で
小さな恋の思いは届く 小さな島のあなたのもとへ
あなたと出会い 時は流れる 思いを込めた手紙もふえる
いつしか二人互いに響く 時に激しく 時に切なく
響くは遠く 遥か彼方へ やさしい歌は世界を変える
ほら あなたにとって大事な人ほど すぐそばにいるの
ただ あなたにだけ届いて欲しい 響け恋の歌
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「ふうう…やっとついた。久しぶりに来たな…」
久しぶりに帰ってきた地元。世界中を旅してまわったお土産もあり荷物が大量だ。
そして、書き溜めてきた絵葉書も…
久しぶりに地元に来たのは理由がある。
「…久しぶり、大好きな場所。」
あたたかな風に舞うピンクの花びら、白く輝く校舎。…大好きな母校。
もう、廃校になって使われてないけど…変わらず綺麗だった。
「変わってないなあ…」
こっそり校舎に入り、思い出の部屋へ。
そうそう、いつも放課後この廊下を歩いて、美術部に向かって、この扉を開けたら先生が…
「…え…?」
先生が、いた。
思い出に浸った自分の見間違い?いや、そんな、だけど…確かに…
「…せん、せい…?」
震える声で呼んでみたら、先生が驚いたように振り向いた。
「…久しぶりですね。やっと見つけてくれた。」
その優しい笑顔は、あの頃と何も変わらなかった。
「…先生…!私、ずっと、あなたを探して旅をしてたんです。あなたのようになりたくて。そして、気持ちを伝えたくて…」
いつの間にか私は『先生』じゃなくてただの『笠子』に戻っていた。
あの時、伝えられなかったもの、やっとあなたに渡せる。
「先生、私…」
…その後、その廃校後は桜が美しい美術館として有名になった。
入り口には…少し古びたキャンバスが飾られているらしい。
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