始発とカフカ
n-buna / テラリウム𓈒𓂂𓏸
始発とカフカ
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𓏸𓂂𓈒𓂃 はらはら心を知って征く♔𓂃𓈒❁𓈒𓈒𓂂𓏸
中学二年生の後半に入ったころ。叔父さんの結婚をきっかけにおばあちゃんが一人暮らしになると、お母さんとお兄ちゃんが話していたのを聞いて、アベリアは真っ白だった進路希望書に向き合った。
𓂃 𓈒𓏸𑁍𑁍𓏸𓈒 𓂃
春。桜が散って足元がうっすらピンクに彩られた道を歩いて、慣れない景色を眺めた。
この町で過ごすのはいつも夏休みかお正月だけだから、少しだけ肌寒いこの季節は新鮮だ。
おばあちゃんに進路の話をしたときはとても驚いていたけど、「アベリアが決めたなら」と迎え入れてくれた。心なしか嬉しそうな顔で迎えてくれたおばあちゃんはアベリアが好きなものをたくさん用意してくれていて、そんなに気遣わなくてもいいのにって思いながら、なんだか照れくて、嬉しかった。
『ご入学おめでとうございます!』
何度か経験してきた入学式。受験のときに何度か訪れただけの校舎にこれから毎日通うのだという不思議な感覚を持ちながら足を踏み入れた。
何年か前に立て直したのだという校舎はここらでは人気の高校らしく、アベリアがもともと住んでいた街で見かける女子高生となんら変わりないおしゃれな上級生が多かった気がする。
𓂃 𓈒𓏸𑁍𑁍𓏸𓈒 𓂃
中学生の頃、アベリアには友人と呼べるほどの親しい人はいなかった。アベリア自身、特別友人を欲しかったわけではないのもあるが、誰に対しても態度が変わらないのが自分たちだけの特別な関係だとかを感じないのが主な要因なのだろうと思う。友人関係は面倒なものだ。そこに色恋が混ざればなお面倒になる。
「〇〇ちゃんが××君を好きって知ってるのにどうして仲良くするの!?」
〇〇ちゃんが××君を好きだなんて、アベリアは聞いたことはなかった。明らかに目線で追っていることは知っていたけれど、それだけで彼女が彼を好きだと決めつけて気を使うのはあまり良くないだろう。その程度でしか考えていなかったことだったのだが、周囲はそうではなかったらしい。だんだんとアベリアと目が合う人は減っていった。
正直なところ、あまり気にしていなかったのだが、何故かアベリアに気づかれずスルーされたとしても、何度誘いを断っても声をかけてくる人がいたのだ。
彼女は変わり者ではあったが、アベリアとは違ったタイプの変わり者で、仲の良い友人たちといつも一緒にいたのを覚えている。どうして彼女がそこまでアベリアに親しくしてくれたのかはわからないままだが、良い人だったのだろうと思う。
そんなアベリアにも最近、友人に近い人たちができた。——近いというのは、どういったところから友人と定義するかわからないからそうしている。
アベリアの下駄箱に入っていた鍵とメッセージカード。——見つけてから数日間、カバンの底の方に押しやられていた——メッセージカードに記されたように手順を踏むと、不思議な空間がアベリアを待ち受けていて本当に驚いた。
そこで顔見知りになった人たちと少しずつ話すようになって、その空間へ足を運ぶことも増えた。
そこにやってくる人たちは自分のラインと他者のラインをしっかりと理解している人たちで、アベリアにとってはそれが心地よかった。
よく漫画やアニメで見るような友人関係とは違う距離感で、クラスの女子たちの異様な褒め合いもなく、大人たちの何かを探るようなものでもない。ただ単に、話したいときに相手と噛み合えば会話を交わす。どちらかがそうではなければ自身の中で消化して穏やかに流れる空を見て過ごす。
ここはアベリアがもともと住んでいた街よりもずっと空気が綺麗だ。
『息がしやすい』と思ったとき、アベリアは初めて深く深呼吸をして、自然と広角が上がった。
〖始発とカフカ〗
💄🫐見返すには歩くしかないのに
上手く足が出なくてごめんね
🫧🎨アベリアが咲いている
眼下の街を眺めている
🍹☕️窓の桟の酷く小さな羽虫を掬って
押し潰した
🌷🧊初夏の風に靡いた、
白花が今日も綺麗だった
🍀教科書にさえ載っていない心情は
🍀🫧今日が愛おしいようで
🫧誰かがつまづいたって死んだふり
(全員)僕らは はら はら はら はら
心を知って征く
🫧今更 ただ、ただ 花を摘まんでいる
(全員)あなたは カラカラ カラカラ
遠くを歩いて征く
震えた言葉で書くまま
🫧紙が終わっていく
𝑚𝑒𝑚𝑏𝑒𝑟𓂃◌𓈒𓏲𓆸
No.1 アザレア💄
CV. IRYU
No.2 アスター🌷
CV. あじのもと
No.3 アベリア🫧
CV. 蓬
No.4 エリカ🎨
CV. 木綿とーふ
No.5 スミレ🫐
CV. はいねこ
No.6 ツバキ🧊
CV. 唄見つきの
No.7 ナズナ☕️
CV. 瑠莉
No.8 ユズ🍹
CV. 07
No.9 ルピナス🍀
CV. 春野
🏷𓂃𓈒𓏸︎︎︎︎
#始発とカフカ
#n-buna
#terrarium_Sct
𓂃 𓈒𓏸𑁍素敵な伴奏ありがとうございました𑁍𓏸𓈒 𓂃
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