美しき残酷な世界
The Epic of Harmosphere 第3章
美しき残酷な世界
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第2節「魔女達は生きる意味を問う」
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※一部、グロテスクな暴力表現が含まれます。ご覧になる場合は自己責任でご覧下さい。
「死ね!『死の魔女』!≪悪しき者は追う者がなくとも逃げる(アップライト·ウィズアウト·フィア)≫!」
シリウスが指を鳴らすと、その手に握られていたナイフが一直線にフレイ目掛けて飛んできた。
「わっ!待てって!誤解なんだってば!」
「問答無用だ!!!」
「話くらい聞けよ……!≪展開(テイク·アウト)≫!」
プレイは慌てて転がって逃げるが、シリウスが見えない糸を引っ張るように手を引くとナイフは空中で方向転換をして再びフレイに襲いかかる。
フレイは咄嗟に魔法で収納していた剣を取り出すと空中でナイフを叩き落とす。だが、床に落ちたナイフは無情にもまた宙に浮かび上がった。
(これがあの魔女の固有魔法か!敵の追尾能力ってところか。くそっ、まずいな……魔力は僕よりずっと強いうえに、もし『魔女狩りの魔女』なのが本当なら戦闘経験も豊富だ。それにもし間違ってへカティアにナイフが飛んでいったらまずい……)
フレイはテーブルを蹴り上げると、盾のように自分の前に立てかける。鈍い音と共にナイフが三本机に刺さったのをゾッとした思いで見届けると、へカティアの手を引いて隣の部屋へと飛び込む。
「机を蹴るなんて。お行儀がわるい……」
「お行儀で喧嘩ができるかよ!そんなこと言ってる余裕があんならチャキチャキ足動かせ!」
2人でそのまま窓から外へ飛び出す。とりあえずこのまま戦い続けるのは不利だ。逃げるか体勢を立て直さなければならない。
「待って、こっちは木が生えてて雪が積もってない」
抱え込まれていたへカティアが突然森の方を指さしてそう言った。確かに雪が少ない所の方が足跡が残らないから逃げやすい。冷静な指摘にこんなに小さいのにやはり頭の良い子なのだなとフレイは感心した。
「よし、こっちへ逃げるぞ!」
「うん」
フレイは小さな手を握り直すと、そのまま森へと足を向けたのだった。
☪
「……こちらか」
シリウスは微かに残った痕跡を追って森の中を歩いていた。ナイフを避けられ、更に足跡が残りにくい森に逃げ込まれたのは予想外だったが、この程度ではシリウスの追跡から逃れることはできない。
「……っ!あれは……」
微かに残った足跡の先に人影を見つけてシリウスは木の影から様子を伺う。
雪に紛れてしまいそうな白い髪。確かあの子供は死の魔女が連れていた子供だ。どうして1人で……まるで何かを待っているかのようだが……。
(──しまった!!!!)
己の油断に気付き慌ててその場を離れようとしたが、次の瞬間には頭の上から枝に積もっていたと思われる大量の雪が落ちてきた。姿勢を崩したところに更に枝の上から飛び降りてきた人影が、その勢いのままシリウスを地面へと押し倒した。
「ぐっ……!!!」
「かかったな!僕も命は惜しいんでね!ちょっと動けないくらいに痛めつけさせてもらうぞ!」
『待ってフレイ!』
「な、何だよ……寝覚めは悪いけどそうしないと僕たちが危ないんだぞ……」
『いいえ、違うわ。そうじゃなくて……』
死の魔女がシリウスに剣を向けたが、腕の中にいる人形が突然言葉を発してそれを止めた。
シリウスは人形が喋ったことにも驚いたが、人形が魔女をフレイと呼んだことにも目を瞬かせる。確か村の者に聞いた魔女の名前はへカティアだったような……
『その魔女さん……シリウスさんだったかしら。多分呪われているわ。下手に手を出さない方がいいわ』
「呪われ……!?えっ!僕思いっきり近付いちゃったけど呪われたのか!?」
『いえ、うつるタイプの呪いではないみたい』
「はぁ……それなら良かったけど」
「フレイ、大丈夫?」
「あぁ、へカティアも怪我はないか?」
フレイ呼ばれた魔女は心配そうにへカティアの体のあちこちを点検している。そしてへカティアと呼ばれた魔女は村人の言っていた「恐ろしく、残酷で、人の命を弄ぶ魔女」というイメージからはかけ離れた儚げな少女である。
「いや、うん……すまないが……私たちはきちんと話をした方がよさそうだな……」
「だからそう言ってるだろ!」
☪
一方、その頃。とある村で村人たちがとっておきの酒をあけてささやかな宴会をしていた。
「あぁ、これで忌々しい魔女を追い払えた!」
「死の予言だなんて嘘に決まってる!あの気持ちの悪い魔女が俺たちを呪ってたに違いない」
「一昨年の流行病もあのガキのせいだ」
「村長が魔女狩りの魔女なんてのを見つけてきてくれたおかげで俺たちゃやっと安心して暮らせるぜ」
「どっちが死んでも俺たちに不利益は無いもんなぁ」
その言葉に男たちはどっと笑い声をあげる。村人たちにとっては魔女は忌むべき存在。村で起きた全ての悪いことはきっとへカティアのせいなのだ。疑問も持たずにそう考える村人たちは、せいせいしたとばかりに酒をあおっていく。
しかしそこに扉をノックする音が響いた。
「んん、なんだぁ……?」
ふらつく足取りで扉を開ければ、そこには思わず酔いが覚めるような美しい女性が3人立っていた。
「お、おいおい!随分なべっぴんさんたちだなぁ!こんな夜中にどうしたんだ?道に迷ったんなら……この村に泊めてやっても良いぞ、へへっ」
下心丸出しの笑顔を見せる男に、桃色の髪を持つ美女は微かに微笑んだあとに片手を軽く振った。
次の瞬間、男の頭部が壊れたおもちゃのようにぽろりと落ちた。そして少し遅れて首から吹き出した血が部屋の天井を真っ赤に染めた。一瞬あっけにとられた部屋の中の村人たちは一斉に悲鳴をあげて部屋の奥へと逃げようとする。しかし出入口は首のない死体が転がっている目の前の一つしかない。
「あーあ、人間ごときがぎゃあぎゃあと……うるせえんだよなぁ!全くイライラするぜぇ……!」
「マリオン様、この人たちはどうしましょう?」
「うーん、まぁ薬の材料も足りなかったし協力してもらおうかな」
人間の心臓が30個ほど必要なんだよ、とマリオンは穏やかに笑った。
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💀ヘカティア・ヌーメニア(cv.唄見つきの)
🪆フレイ・テレシアス(cv.うにの子)
🌌シリウス・スクローイ(cv.琉伊)
🐍アダラ・バートリ(cv.RAKKO)
🏛マリオン・ヴィリエ(cv.はいねこ)
🖼イライザ(cv.小花衣 栞)
💀その夢は こころの居場所
🪆生命(いのち)より 壊れやすきもの
🌌何度でも 捨てては見つけ
🖼安らかに さぁ眠れ
🏛脈打つ衝動に 願いは犯され
🐍忘れてしまうほど また想い出すよ
All:この 美しき残酷な世界では
まだ生きていること「何故」と問うばかりで…
嗚呼ボクたちは この強さ 弱さで
💀🪆🌌何を護るのだろう
🐍🏛🖼もう理性など
All:無いならば
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☾第3章 プレイリスト☽
https://nana-music.com/playlists/4044295
☾ 素敵な伴奏ありがとうございました☽
なっく様
https://nana-music.com/sounds/04ff061d
☾ 𝕋𝕒𝕘 ☽
#進撃の巨人 #日笠陽子
#魔女ヘカティア #魔女フレイ #魔女シリウス #魔女アダラ #魔女マリオン #イライザ_Harmosphere
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