#星詠みの詩
【タウラス】
また、アリエスに肩を叩かれてしまった。最近、気を抜いたらすぐにうとうとしてしまう。任務の時もそう、ご飯を食べる時も、お風呂に入っている時も……何をしていても、ものすごく眠い。任務に時間がかかることで体力を消耗してしまっているのかと思った。けど、たくさん眠っているのにそれでも強い眠気が来るから、きっと違うんだと思う。
頑張って起きなきゃって思ってるのに、気づいたら寝てしまう。そうして気が付いた時には3時間も4時間も寝ていて、アリエスやエウロペに迷惑をかけてしまうから、どうにかしないと……。
それでも、また眠って、起きてをくりかえして、いつもきまっておんなじ夢を見る。友達……なのかな、大好きな女の子。きれいな金髪の女の子が、横たわる私のそばにいる夢。名前も知らないその子は、アイリスの花を持っていて、いつもとても悲しそうな顔で私を見て「ごめんなさい」って言うの。
大丈夫だよって頭を撫でようとするんだけど、夢の中でも、体が動かなくて。
どんどん世界が真っ暗になって、目が覚める。
──あの夢に出てくるあの子は、誰なんだろう。
それだけじゃない。あの子が持っていた花とおんなじ花が、天空の塔の近くに咲いているのを見たことがあった。
天空の塔の裏って言ったらいいのかな。人目につかないような、ちょっぴり寂しい草むらに、そこだけにポツンと咲いたアイリスの花。はじめは何かの目印か、種がどこからか飛んできたのかなと思っていたけど、おそらくあの花は、枯れたりしおれたりしないように星の魔法をかけてある。
それを使えるのは、監督官だけのはず。
──あの夢と、なにか関係があるのかな。
考え事をしていたら眠くなってきちゃった。
……ごめんね、アリエス。またたくさん眠っちゃいそう。このまま目が覚めなくなることも、あるのかな。
もしも、目覚めなくなってしまったならば。
「その時は、私が大好きなあの花を……」
手向けの花にしてほしいな。
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