花に雨を、君に歌を
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花に雨を、君に歌を
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#星詠みの詩
【任務 ケイローン組】
僕たちは、星神の天文台から東の方にある小さな村にやってきた。僕たちの任務は「夏を取り戻すこと」。
こんな、某映画みたいな任務あります?夏を取り戻す?今夏だよ?ま、とりあえず現地に行ったらわかるかぁ~と思ってそこに着いた途端言葉を失ってしまった。
僕の目の前に広がるのは、まっしろな世界。そしてキンキンの風。
「……この場所の季節って、夏だよね……?場所間違ったかなぁ」
「あはは、夏だねぇ」
ケイローンはにこにこ笑いながら答える。
「夏!?本当に!?雪降ってますけど!!!???」
「だから、夏を取り戻すのよ。私たちが儀式を行って、狂ってしまった気温をもとに戻すの」
早く行くよ、とサジタリアスは祭壇へと進んでいく。ケイローンも軽やかな足取りで後に続く。こんなおかしな時に冷静でいられるの、本当にすごいなぁ……。
祭壇には、枯れた花と雪がうっすらと積もったお供え物があるだけだった。きっと、ここの神様の信仰は薄れてしまっているんだね。僕とサジタリアスでお花を新しく変えて、古いお供え物もきれいなものと入れ替える。
それから互いの手をつないで、祈るように目を閉じる。
……。
…………。
………………あれ?いつもの声が聞こえないや。
いつもならすぐに星が語りかけてくるんだけど、今日は少し時間がかかっている。もしかして僕が冷静じゃなかったから……?ひえええ!ごめんなさいごめんなさいちゃんと集中します!!今から!!!!!!!
≪星が、語りかけている。もっと、耳を澄まして。≫
聞こえた!よしっ!
僕たちはより一層強く祈る。すると、降り続いていた雪がやみ、どんよりとした雲の切れ間から日が差してきた。
よかったあぁあ、成功だ……!
「お疲れ様。うまくいったね!」
ケイローンはスキップするような足取りで僕たちに近づいた。
「今日は少し時間がかかったような……私、何か間違ってたかな」
「んー、でもうまくいったからいいんじゃない?さっさと天界に戻りますかぁ」
ケイローンののんきな一言に、サジタリアスの表情がひきつるのが見えた。
うわああああん!この後の仕事が険悪ムードになるのやだよおおおおおお!!!!!!
そんな気持ちを抱えながら、僕たちは神々の天文台へと向かった。
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