ノマド
ネガティブマジカルガールズ
ノマド
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第2話「微かな希望、小さな第1歩」
「それじゃあ早速ネームレス退治に向かおうか」
リトルリトルがそう告げると、白い部屋がコーヒーに垂らしたミルクのようにぐにゃりと歪んだ。
思わずほのかは目を閉じたが、やがて目眩が止み、喧騒が耳に飛び込んできたので恐る恐る目を開いた。すると目に入ったのは二階建ての薄汚れた建物。雑然と並んだ自転車に、くたびれた自販機。
「ここは……羽間駅……?」
「そう、ここはオマエらの住んでる羽間市の駅だ。羽間市はボクたちの住む世界に繋がりやすくて、ネームレスが出現しやすいんだ」
ほのかは自分の呟きに答えたその声に振り向き、思わず小さく悲鳴をあげてしまった。
何故ならそこにはさっき頭を吹き飛ばされたはずの少女が立っていたからだ。
「あ、あなたさっき血だらけに……でもその声は」
「うん、ボクはリトルリトルだよ。さっきの体を魔力で修復したんだ。これで実体のないボクもほんの少しだけこの世界で活動できるよ。魔法少女をサポートする生き物は人間の形になって手助けをするんだろ?」
青い髪の少女の言葉に答えたリトルリトルは、ちなみに『中身』はさっきの空間に捨ててきたよと事もなげに続ける。その顔にはさっきから貼り付けたような完璧なまでの笑顔が常に浮かんでいる。
ほのかはさっき体験した真っ暗な世界に放り出された少女の魂に思いを馳せ、震える指を握り締めた。改めて人の命を生き返らせたり奪ったりする、人間を模倣する目の前の不気味な存在に恐怖する。
思わず涙が込み上げそうになったその時、沈黙を破るように場違いなほど明るい声が響いた。
「ね、ねぇ!自己紹介しない!?」
金髪を三つ編みにした少女が引き攣った表情で、それでも笑顔をほのかたちに向けてきた。
「は?自己紹介……?何言ってんの?」
「でも、あ、あたしたち、これから一緒に戦うんでしょ?なら、もっと仲良くならないとじゃない……?」
紫の髪の少女が呆れたように答える。ほのかならそんな風に言われたらきっと口ごもってしまうだろうが、金髪の少女は負けじと言葉を続けた。
「確かにそうかも。お互い名前も知らないのは不便だよね。私は桃園きらり、羽間高校の1年生だよ」
「……!ありがとう!あたしは浅黄うらら!同じく羽間高校の1年生だよ!ウチの学校ってクラスが多いからきらりのこと知らなかったなぁ」
それに答えたのは桃色の髪の少女だった。
さっき震えながらもリトルリトルに死体に戻されてしまった少女の目を閉じさせていた子だ。
(2人ともすごい勇気……)
だからほのかも震える声で答えた。
「み、翠川ほのか……羽間第二高校1年生です……!」
「……藍原あさひ。栄井女学園1年生」
「あーたん、サカジョとかメッチャお嬢様じゃん!えーっとぉアイは紫京あいらだよ~!きらりんとうららんと同じ羽間高校の1年生!」
「あ、あーたん……?」
2人をきっかけにして、次々に自己紹介していく。その様子を見てリトルリトルは頷いた。
「自己紹介は終わったね。さぁこれから初めてのネームレス退治だ」
×××××
それは駅の近くの路地にあった。
景色の一部が陽炎のようにゆらゆらと揺れている。一瞬目の錯覚かと思う程度の揺らぎ。けれどそこにリトルリトルが手を触れると生き物が口を開くように真っ暗な空間が開き、5人は飲み込まれる。
「相手はたくさんの孤独の負の感情を取り込んで、実体化しかけているネームレスだ」
「ひっ………!」
今度こそほのかは悲鳴をあげた。
虫のような6本の足。体はぐちゃぐちゃの残飯が固まってできており、微かに腐臭が漂っている。そして何故か顔はパソコンで出来ている。5mほどの異形は何もかもがちぐはぐで気味が悪かった。
「魔法の使い方は感覚で分かるはずだよ。時空が歪み始めているから早めに退治をよろしく」
リトルリトルの言葉と共に少女たちは光に包まれる。
光が宙に散るといつの間にか5人は色とりどりのドレスに身を包んでいた。ほのかのドレスは緑色で、特にバレエシューズのような靴は不思議な煌めきを放っている。そこから力が今まで感じたことないくらい強い力が湧いて来るのを感じた。
「言われなくてもそうするわ」
最初に飛び出したのはあさひだった。
手をネームレスへ向けると、ぴきりという音とともに空中に鋭い氷の針が出現する。氷の針はネームレスの体を貫いていく。
(す、すごい……!)
ネームレスは唸り声のような雑音をあげると、足を振り上げてあさひに襲いかかる。
「あさひちゃん!危ないっ!」
「大人しくしてよね~!!」
そこに飛び込んできたのはきらりとあいらだ。
きらりはピンク色のリボンをどこからともなく取り出すと、それでネームレスを拘束する。そしてあいらが注射器のような武器で謎の液体を打ち込む。
「大人しくなるようなオクスリ打っといたよ~!」
「私が抑えてる間に……きゃあっ!」
己の危機を悟ったのか暴れだしたネームレスにきらりとあいらが振り飛ばされそうになり、ほのかが思わず一歩踏み出すとふわりと体が浮き上がる。
──体が羽のように軽い。
比喩ではなく、本当に体がとても軽くなっている。
(これが……わたしの魔法……?重さを変えられるの?)
それならば。
ほのかは空中でそのまま一回転しながら、靴に力が流れ込むようにイメージする。その瞬間、ほのかの靴が淡い緑の光を発する。暗闇にエメラルドグリーンの輝きが軌道を描く。
「止まれ……!」
その瞬間、ネームレスがまるで見えない手に地面に押し付けられるように叩きつけられた。
「お、抑えてる、から、今のうちに、誰か……!」
「ほのかナイス!そりゃーーーっ!」
うららが大きくジャンプしながら両手に持った二刀流の剣を構えると、パソコン形の頭部へ全体重をかけて一気に振り落とす。頭部が地面に落ちると同時にネームレスは金属が擦れ合うような異音をたて、塵になって消えていく。それと同時に暗闇の世界は消え去り5人はいつの間にか先程の裏路地に戻っていた。
「や、やった……!」
「良かった!倒せたぁ!」
うららに抱きつかれながらほのかは呆然と、けれど初めての充足感に胸をいっぱいにしていた。自分があんな力を使ってこんなことができるなんて。
「ね、ねぇ!皆で連絡先交換しない?」
すると、そこにきらりが声をかけてきた。
「こうして一緒に生き返ったのも何かの縁だし……私たち、友達になれるかな……?」
友達という言葉にドキリと胸が高鳴った。
それはずっと憧れていた響き。
同じような最期を迎えたはずの仲間。きらりの自信のなさそうな、けれど何かを期待するような眼差しはほのかにも心当たりがあった。彼女もきっと拒絶されることを知っている、知りすぎてる人間なのだ。
……もしかしたら、こんなチャンスはもう二度と無いのかもしれない。
「もちろん!ていうか、もう友達だよー!」
「……は、はい!私で良ければ……」
うららにつられるようにして、がくがくと頷くときらりは嬉しそうに破顔した。だが、あさひとあいらはあまり乗り気でない様子だった。
「……連絡先は交換した方が便利だからするけど、私は習い事もあるから忙しいの。ネームレスを倒す時に集まるだけ連絡して」
「う~ん、アイもマジスタライブの配信とかしないとだからケッコー忙しいんだよね。あ、カフェ行く時とかは誘ってね♪」
その言葉にきらりが顔を曇らせる。だが、うららが慌ててそんな3人に明るい声をかけた。
「まぁネームレス退治の時は一緒なんでしょ?そのうちみんな仲良くなれるよ!ねっ、ほのか!」
「は、はい……」
最低に最低を上塗りした最悪の日。
まだ問題も懸念も山積みだけど──それでもこの日、ほのかには2人初めての友達が出来たのだった。
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❤️桃園きらり(cv.瑠莉)
💛浅黄うらら(cv.うにの子)
💚翠川ほのか(cv.蓬)
💙藍原あさひ(cv.唄見つきの)
💜紫京あいら(cv.ここあ)
💔=全員
💙途方もない時間だけ
また過ぎていく
❤️💛此処は理想郷では無い ましてや
💛描いた未来じゃ無い
💜終わりのない未来など
なんて下らない
❤️💚夢の隙間に問う 私は何処へと
💚行くの
💙💜遠い遠い先の方へ
💚痛みと歩いていた
❤️💛💚騒がしい街の声が
💛頭に響く
💔夢の底でもがくのなら
💙💜この夜をいっそ喰らってしまいたい
💔呆れる程に傍にいて
💛愚かでいい 💚二度と無い
💔今を生きていたいだけ
❤️それだけだ
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♡伴奏♡たまごふりかけ様
https://nana-music.com/sounds/0649cb41
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