オルターエゴ
𝚂𝚎𝚌𝚁𝚎𝚝𝚒𝚗𝚊ଓ
オルターエゴ
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──𝑇ℎ𝑖𝑛𝑔𝑠 𝑚𝑎𝑦 𝑐𝑜𝑚𝑒 𝑡𝑜 𝑡ℎ𝑜𝑠𝑒 𝑤ℎ𝑜 𝑤𝑎𝑖𝑡, 𝑏𝑢𝑡 𝑜𝑛𝑙𝑦 𝑡ℎ𝑒 𝑡ℎ𝑖𝑛𝑔𝑠 𝑙𝑒𝑓𝑡 𝑏𝑦 𝑡ℎ𝑜𝑠𝑒 𝑤ℎ𝑜 ℎ𝑢𝑠𝑡𝑙𝑒.
*・。𝚂𝚎𝚌𝚁𝚎𝚝𝚒𝚗𝚊ଓ 6th Sound *・。
🏵Suiren🏵
「……もう十分頑張ってる、これ以上は無理なんだってば」
真っ赤に目を腫らして、彼女は泣いていた。窓から射し込む濃い茜色に絡まる言葉が、刃に変わって胸を刺す。喉がひりつくように痛んで、声が出なかった。
「何にも知らないくせに、無責任なこと言わないでよ!」
吐き捨てられた涙交じりの怒声。乱暴に閉められた、教室のドアの音。それらが去った後、最後に残った静寂。座り込んだ膝を濡らした涙。
もしも私が二人いたなら、私は私を殺していただろう。最低な感情だけを置き土産に、世界が白んでいく。
静かな暗闇の中で目が覚めた。枕元に置いたスマホを裏返し、時刻を見る。午前四時。無駄に早い時間に起きてしまったらしい。眠りが浅いのだろうか、最近はよくこの時間に目が覚める。さっきまで確かに眠っていたはずなのに、寝ずに夜を越したような感覚があった。
落ちた水滴で滲む画面に、初めて頬を伝うものに気が付いた。知らないうちに泣いていたらしい。嫌な夢でも見たのだろうか。思い出そうとしても、遠のいた曖昧な情景は戻ってこない。そのくせ涙は拭っても止まらなくて、瞼の裏だけに夢の残滓が残っているような気持ち悪さだけがある。よくあることだと諦めて受け流すには不快な感覚で、掻き消そうとしてスマホを手に取った。特にしたいことがあるわけでもないのに、染みついた習慣から手が勝手にSNSを開いてしまう。暗い部屋にぽつんと灯るブルーライトは、寝起きの目には痛い。ベッドサイドに置いたままの眼鏡は、ここからギリギリ届きそうにない距離にある。そのためにわざわざ身を起こすのも億劫でそのまま手を伸ばすと、眼鏡ケースごと音を立てて棚から落下した。拾いに行くのも面倒で、小さな苛々が募る。どうせ数時間後には拾うのだと、馴染みの画面に視線を戻して目を細めた。タイムラインに並ぶ、曖昧な匿名情報の羅列。数ヶ月後には世界の誰からも存在を忘れられるような、些末な数十字。時間を潰すためとはいえ、そんなものを懸命に追って何がしたいんだろうと自嘲する。
小さい頃、偉人の伝記を読むのが好きだった。世界の記録に残る素晴らしいことを成し遂げた、一人の人間の生涯を辿ることが。誰もが夢のためにひたむきに努力して、それが実って世界から称賛される。そんな姿を見るのが好きだった。偉人たちの人生をなぞって、頑張る彼らを隣で応援しているような気分だった。自分もいつか彼らのように何かを成し遂げるのだと、純粋に夢見ていた。
そんな幼い憧れの名残がこれだ。頑張っている誰かを追いたくて、その姿から勇気をもらいたくて。SNSを見るようになったけれど、すぐに虚しくなった。自分は何かを成し遂げる人間の器ではないし、何かに向かって頑張っている人が必ず報われるとは限らない。痛々しいまでに現実を映す、脚色のないリアル。その上今の自分には、頑張ることはおろか、誰かを応援する資格なんてない。それでもなんとなく手放せずに、惰性のように今もタイムラインを漠然と眺めている。
「なんで生きてるんだろって思っちゃった。私が消えてもきっと誰も悲しまないよね」
ふと目に飛び込んできた、数時間前の呟き。始めたての頃からフォローしている人のものだった。もっと可愛くなりたい、と頻繁に自撮りを上げている女子高生。同じだ、と思った。名前も知らない彼女はきっと、私と同じように深夜にSNSを眺めていたのだ。一人ぼっちの、静かな暗い部屋で。もちろんそれは私の想像でしかないけれど。手の届かない場所で輝いていると思っていた人が、ちょっとだけ近くにいるような安堵。リプライを送れるほど親しいわけでもないから──そもそも私の方は鍵垢だから認識されているかすら怪しい──わずかな同情を込めてそっといいねを押した。
もしも私が、彼女の友達だったら。無益な想像は飛躍する。落ち込む彼女に、何か声をかけられたのだろうか。ほんの少し考えを巡らせれば、ズキリと胸が痛む。
お前には、無理だよ。
止まったままの時間に取り残された私がそう呟いた。
❁𝕃𝕪𝕣𝕚𝕔❁
🍭現在時刻午前4時
⛓有象無象にもう飽き飽きだよ
⚗️存在 形なんて もはやミュータントさ
🏵白に黒に馴染めず 曖の昧な色して
🧬息を吸って 息を吐いて
死んでるようなものだな
💔実際音頼りにぎりぎり生きていた
🏵⚗️もうどうなっていいんだって
💔🍭恐れなんかは全くないって
⛓🧬沈む夕日が最後は地平に
⛓🍭💔⚗️堕ちてゆくことだけ知ってる
🗝それでもいい お前だけは灰になって消えてくれ
🧬🏵静かに狂ったその姿に呑み込まれてしまう前に
🗝零でも果てでもない 無数の目 頭の中
ぐだぐだうだうだああうるせえな
⛓未桜 -𝙼𝚒𝚘𝚞- (𝚌𝚟.瑠莉)
🔒 𝚋𝚘𝚞𝚗𝚍𝚊𝚛𝚢
才色兼備で誰からも信頼されている優等生の少女。
厳格な両親の元で育ったため、礼儀正しい。
🍭愛奈 -𝙼𝚊𝚗𝚊- (𝚌𝚟.おとの。)
🔒 𝙲𝚒𝚗𝚍𝚎𝚛𝚎𝚕𝚕𝚊 𝚂𝚢𝚗𝚍𝚛𝚘𝚖𝚎
甘いものと可愛いものを愛する夢見がちな少女。
いつか自分だけの「王子様」に出会えると信じている。
💔まわり -𝙼𝚊𝚠𝚊𝚛𝚒- (𝚌𝚟.あかりん)
🔒 𝙸𝚗𝚟𝚒𝚜𝚒𝚋𝚕𝚎 𝙵𝚛𝚒𝚎𝚗𝚍
いつもどこかに怪我をしている、無邪気で幼い少女。
彼女にしか見えない「カミサマ」が存在する。
⚗️理空 -𝙻𝚒𝚜𝚘𝚛𝚊- (𝚌𝚟.Yuz*)
🔒 𝙸𝚗𝚝𝚎𝚛𝚜𝚞𝚋𝚓𝚎𝚌𝚝𝚒𝚟𝚒𝚝𝚢
他者の感情の機微に疎い、好奇心に生きる少女。
幼い頃に事故で両親を亡くしている。
🏵スイレン -𝚂𝚞𝚒𝚛𝚎𝚗- (𝚌𝚟.ひとさきさよ)
🔒 𝚜𝚎𝚕𝚏-𝚎𝚜𝚝𝚎𝚎𝚖
誰に対しても物怖じしない、気の強い少女。
過去に親友を傷付けた経験から、自分を嫌っている。
🧬花依 -𝙺𝚊𝚢𝚘𝚛𝚒-(𝚌𝚟.るみ)
🔒 𝚗𝚎𝚎𝚍 𝚏𝚘𝚛 𝚊𝚙𝚙𝚛𝚘𝚟𝚊𝚕
SNSに依存気味の勝ち気で寂しがりな少女。
#Secretina
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