比較症候群
葵木ゴウ/音街ウナ
比較症候群
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________「自信は持たなきゃ」________
幼い頃の僕ら 怖いもの知らずだった
大人になった今じゃ 怖いものばっか増えた
人の視線なんかは その最たる例だ
比べたがりの僕ら それで誰が得するんだ
他人のああだこうだは関係ないなって
拗らせた頭では理解も出来ねぇ
“自分”らしく生きたいだけなのにね
どうにも隣の芝生が青すぎて嫌だ
この病状は一生重症だ きっと
僕らは”自分”にすらなりきれんまんま
くたばっていくのだ
「みんな違ってみんないい」じゃ騙されねぇぞ
もっと明確な
結果をくれよ 僕が僕を
認められるような
__________ ⚡️ × ❄️ __________
劣等感に支配されて生きるその姿は、悠祐にとって鏡に映る自分の姿だった。
その感情を理解できるからこそ、悠祐は彼に無責任に言葉をかけることも、突き放すこともできないでいる。
「清汤」
悠祐が優しく声をかけると、訓練場を眺めていた清汤は振り返る。
いつもは楽しそうにみんなと笑いあっている彼は、どこか疲れた表情を浮かべているように見えた。
悠祐はゆっくりと歩み寄りながら口を開く。
「何してた?」
「みんなの訓練、見てたよ。」
下手くそな言葉遣いだ。最近英語を覚えてきたばかりの清汤は、これでもかなり上達しているがやはりぎこちない話し方をする。
悠祐は彼の隣に立ち、同じように訓練場を見下ろした。
「清汤は参加しねえの?」
「俺、…ううん、いいや」
「なんで?」
「……俺まだ、みんなみたいに強くないし、…怪我させるかも、しれないし」
俯いたまま答える清汤。
清汤は誰よりも優しい人間だ。だからきっと、自分が参加しても足手まといになるだけだと思っているんだろう。
そんなことは無いと周りから何度言われようと、清汤は曖昧に笑うだけで変わることは無かった。
清汤は、その身に余る人間離れした力で他人を傷つけることを、酷く恐れている。
「訓練なんだから怪我してなんぼだけどなあ」
「……」
「……まあ、嫌なら仕方ないさ。
けど、無理に堪えようとか、周りを見なくていい」
「え?」
「比べなくていいよ、他の奴らと。
お前らしく生きてくれた方が、ずっといい」
お前はなんとなく俺に似てるから…なんて、きっと今後一生言うことは無いんだろうけど。
お前が辛そうにしてると、俺も少し辛いんだ。
お前には才能があるよ。
お前のその力は守るための力なんだから。
俺は知ってるんだよ。
ずっと前から。
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