瞬きもせずに
H△G / テラリウム𓈒𓂂𓏸
瞬きもせずに
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𓏸𓂂𓈒𓂃そう、そして君はくちびるを噛んだ♔𓂃𓈒❁𓈒𓈒𓂂𓏸
朝、目が覚めて。
変わらない天井を見つめる。
いつもの制服。
いつも少し遅れて発車するバス。
いつものクラスメイトに、いつもの授業。
代わり映えのない日常に、もし異世界への扉があれば。私は躊躇いもなく飛び込むと決めていた。
実際に異世界……とは少し違っているけれど、放課後にスクールバッグへしのばせた少し古い型の鍵を取り出し踏み込む異空間は、変わらぬ日常に大きな刺激をくれたと強く思う。
錆びた鍵穴に異空間への入場キーを挿し込む瞬間だけは、誰にも怒られずに私の好きな世界へ行けるのだと心が満たされていた。
𓂃 𓈒𓏸𑁍𑁍𓏸𓈒 𓂃
森の中にある図書館のような場所で、少しは顔見知りと言えるようになった8人が自由に過ごしていた。
アスターが来たことに最初に気がついたのは、今日も翡翠色の髪を丁寧に結っているルピナスだ。 目が合ったことに気づいた彼女は、少し気まづそうに目を泳がせて、ぺこりと会釈をして奥の本棚へ消えていった。
本や窓の外へ視線を向けていた数人も、アスターが来たことに気づくと友好的な人たちから挨拶が投げられる。
「こんにちは、アスター。近頃はずっと会えてなかったから会えて嬉しいわ!」
「こんにちは。私ともお久しぶりですね。
お元気そうでよかったです」
「アスターさん…!こんにちは!
…あの!さっきアスターさんが好きそうな本をユズちゃんとツバキさんが見つけたってはなしてて…」
来るのが最後になるとどうしてもこうなってしまうのは、アスターだけではなく皆もそうなのだと苦笑を奥歯に噛みこんで、話しかけられた順にアザレア、スミレ、エリカと返事を出していく。
普段、クラスメイトから同じように話しかけられるときはなんとなく敬語で返してしまうのだけど、ここにいる人たちには何故かそうしなくてもいいと言ってもらえるような気がしていた。話が進むと3人の話題が別へと移ったので、そっとこの場から離れることにする。
ユズとツバキさんが手招きをしている方へ行くと、近くで本を開いていたナズナや窓の外を目で追っていたアベリアも気にしている様子で、時々こちらに視線を向けていた。
機嫌が良さそうなツバキとユズは、今どきなかなかお目にかかれない、アニメーション作品やフィクションでしか見たことの無い分厚い本を差し出してきた。
異空間ではいくら時間があるとはいえ、これを読み切る集中力が私には無いなと思うと同時にユズやツバキさんもおそらくぱらぱらとしか見ていないだろうなと机に置かれた本の数ですぐに察した。
数分前にも見られただろう光景を再演しながら、ふと。気になる一節が目に入った。
小さい頃の私はお話を書いたり、絵を描くことがすきだった。
習字やそろばんの習い事が忙しくて、絵を描くことは早々に辞めてしまったけれど、お話を想像することは今でもこっそりと続けている、誰にも言えないアスターの趣味のひとつだった。
そんなふうに誰にも告げていないはずの物語の一節が、この本には記されていた。
この本を見たはずのユズとツバキさんを見ると2人はそれぞれナズナに話しかけたり、アザレアたち3人に混ざりに行ったりで、本当にただ私にこの本を勧められれば満足だったらしい。反応を見てたのしむ…なんてよくよく考えれば、アスターの書いた一節だと知らない彼女たちには到底無理な発想だったと気持ちを落ち着かせた。
一息ついて、改めて考える。
彼女たちはこの本を私に勧めたのだ。
例の一節を目にしたかはわからないが、私の描いた世界が一節だけでも含まれたこの本を、私が好きそうだと感じてくれた。
今まで私の中で留めていた物語の主人公や言葉たちを認められたようで誇らしかった。
どうしよう。すごく、凄く嬉しい。
言うことを聞かない頬の緩みを抑えたくて、きゅっとくちびるを噛んだ。
初めての感覚に戸惑う私を、優しい木漏れ日がさしていた。
〖瞬きもせずに〗
☕️瞬きもできないほど儚く
通り過ぎてく日々を、
🍀僕らは光の中に閉じ込めた。
そんな気がした。
🎨何か描(か)こうとして
何も描(か)けなかった。
🫧真っ白で、でもどこか透明な白色
🍹何も描けなくても
何か描こうとした。
💄色あせることのない青春グラフィティ。
🧊靄(もや)がかる朝霧の中、
🫐地図にない場所目指した。
🌷ありふれた毎日が嫌いだった。
(全員)瞬きもできないほど儚く
通り過ぎてく日々を、
僕らは光の中に閉じ込めた。
青春が今終わりを告げても
後悔なんてないよ。
🌷そう、そして君はくちびるを噛んだ。
木漏れ日の中。
𝑚𝑒𝑚𝑏𝑒𝑟𓂃◌𓈒𓏲𓆸
No.1 アザレア💄
CV. IRYU
No.2 アスター🌷
CV. あじのもと
No.3 アベリア🫧
CV. 蓬
No.4 エリカ🎨
CV. 木綿とーふ
No.5 スミレ🫐
CV. はいねこ
No.6 ツバキ🧊
CV. 唄見つきの
No.7 ナズナ☕️
CV. 瑠莉
No.8 ユズ🍹
CV. 07
No.9 ルピナス🍀
CV. 春野
🏷𓂃𓈒𓏸︎︎︎︎
#瞬きもせずに
#H△G
#terrarium_Sct
𓂃 𓈒𓏸𑁍素敵な伴奏ありがとうございました𑁍𓏸𓈒 𓂃
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