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03
-mimosa-
ぬくもりある人生を願って
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「部長いい子ちゃんアピールやばくない?」
「それな、マジで無理すぎる」
毎日のように耳に入ってくる悪口の数々を無視して、私はいつも通り執筆作業を進めた。
____中学のときに物語を書くことが好きになった私は、高校に入学する前から文芸部に入ることを決めていた。そんな私には、入学前説明会のときに仲良くなった麻里亜という友人がいる。彼女は私とは正反対な性格だったが、意外にもウマが合って一緒に入部することになった。私たちが入った当初はきっちりとした部活だったが、私が部長になるころには、すっかり緩すぎる部活と化していた。コンクールの提出期限を過ぎる、部誌が出せない…。問題が起きる度に私が代表として叱られ、精神はどんどん削られていった。そんな事情なんて知らない部員たちの怠け癖は日ごとに悪化し、ついには私への悪口を言ったり、ミーティングに来なかったりし始めた。さらに最近は麻里亜の態度も冷たいように感じて、私は彼女に直接訊いてみることにした。
「麻里亜」
私が話しかけると、執筆作業…ではなくゲームをしていた麻里亜は、迷惑そうに眉をしかめた。
「…最近、部員たちの態度がおかしい気がするんだけど」
麻里亜は軽く鼻で嗤ってからこちらを見た。
「それはね、お固い頭をしたアンタなんて、ウチの部活には必要ないからだよ」
「か、固いって…。私は常識の範囲内の話しかしていないけど。それに、みんなが怠けてるから…、私が怒られるから言ってるんだよ」
「常識常識うるっさ。てか、アンタが怒られてるのをこっちのせいにしないでくんない?」
「は?」
…私は、麻里亜の態度から"彼女が関係しているのでは"という答えに行き着いていた。そうであってほしくないと思いつつも、彼女を睨みつける。
「何その目。アタシは焚き付けただけなのに」
「!……やっぱり、関わってたんだ」
私は勢いよく荷物を引っ掴み、そのまま部室を出た。まさか麻里亜が…、信じていた友人が、火付け役だったなんて。私を、嫌っていたなんて。
「…あ」
夢中で走っていたら、いつの間にか家の前に辿り着いていた。私は家の中に入ると、帰宅を告げることなく自室に向かった。自室に入った途端、視界に入った作品の数々を力任せに引っ張り出し、破いては投げ捨てを繰り返す。散々音を立てた結果親に心配されたが、それさえも突き放し、ただただ感情のままに暴れまくった。やがて感情の制御が利くようになると、力尽きたように眠りに落ちた。
🥀
甘い花の香りがして、目を覚ます。目の前には古風な家があって、それ以外は塗りつぶされたようにモヤが覆っている。夢…にしてはリアルだな、と思っていると、急に家の扉が開いて少女が飛び出してきた。
「うわっ…!?」
「わ、わわ、驚かせてごめんねお客さん…!え、ええっと、とりあえず入って!」
少女は驚いて固まっている私の手を取ると、そのまま家の中へと招いた。
「…すごい」
室内はたくさんの香りと花で溢れていて、気分が高揚する。少女は私の手を離し、ちょっと待ってて!と言うと、奥のほうに姿を消した。言われた通りに待っていると、少女が可愛らしい花を手にして戻ってきた。
「はい、どうぞ!」
「え?あ、ありがとう…」
少女からその花を受け取り、眺める。それだけで少し、癒されたような気分になった。
「あのね、お客さん。信じることを、諦めないでほしいんだ」
少女の言葉にはっと息を呑み、視線を落とす。疑問よりも先に言葉が強く刺さってしまって、苦しい。
「…裏切られたくないから、信じたくないっていう気持ちも分かる。…だけどね、人を疑ってばかりだと、心が疲れてしまうんだ」
「心、が…」
確かに疲弊しているように感じた私は、そっと胸に手を置いた。あれ、でも…。
「それだったら疑わなければいいんじゃって、思うよね。だから…これは私自身のお願い。人間関係は脆いし、また傷つく可能性だってある。それでも…、私はあなたに、人と関わる人生を歩んでほしいんだ」
俯いたまま黙っていると、少女の明るい声が少し遠ざかった。
「…もちろん、その選択をしなくてもいいよ。ただ、覚えてはいてほしいな。私の話と……私が、あなたの側にいるっていうことを」
「えっ…?」
側にいるって…?と聞こうとして顔を上げると、そこに少女の姿はなかった。代わりに自分の周りを埋め尽くすかのようにモヤが現れて、私は勢いよく目をつむった。
🥀
手の中に冷たい感触がして、目が覚める。ぼやけた視界を手のほうに向けた瞬間、私は目を見開いた。そこには、あの少女からもらった花があったのだ。
「……優しい、色。まるであの子みたい」
ふふ、と唇から笑い声が漏れたのと同時に、私の頬をあたたかな温度が伝った。昨日は、全然泣けなかったのに。私は、花を手で優しく包み込みながら静かに涙を流し続けた。
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いつでもいいよ
ひどい顔して生きるくらいなら いつでもいいよ
そんなこと言うと君はきっとまた泣くね
「簡単にさよならなんて言わないで」って
人は一人では生きていけないなんて
嘘だと本気で思ってたよ
泣きたくなかった
でも星を仰いで 君があまりに優しく歌うから
もう一度信じてみようかな
上手くいかない泥だらけの日々も
鮮やかに吹いた風が巻き上げた星屑と
驚くほど綺麗に混ざって光った
もう少しだけこの世界で夢を見て
生きることを選んでもいいですか
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💛ミモザ cv.RAKKO
https://nana-music.com/users/5226056
💐本家様
『もうあなたを一人で戦わせたりしない』
Music & Lyrics 傘村トータ様
https://youtu.be/Tqs1cu9MFWQ
※伴奏を公式様からお借りしているためギフト等は御遠慮頂けますと幸いです。
https://piapro.jp/t/Z5rT
イラスト︰ゆん様
SS︰琉伊
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