🎮「あったかもしれない話。」
意気込み▶︎ふざけないでがんばりました。
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終末のない幻想に 触れた気がした
なんて呼べばいいんだろう
変わらない温度
微笑が内臓を 食いつぶす前に
今日を閉じ込めたよ 馳せる未来は灰色
望むなら空想 寂れた嘘
叶うならもっと 聞かせて
心から溢れてた 愛しさをちりばめて
君の声に重ねた 恍惚は遥か
形あるものならば 崩れゆくものならば
この両目は要らない 僕を包んで
Leia...
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企画元:異形の館
https://nana-music.com/users/10414285
#異形頭企画 #異形新春のど自慢大会
🎮 Nino Sullivan (ゆき)
https://nana-music.com/users/9967544
原曲:Leia/ゆよゆっぺ
伴奏:はると様
https://nana-music.com/sounds/05f9de6a
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以下オマケ。ニーノのファンだけ読んでください。
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中華風ドラマ「睡蓮」
*
『探したよ、スイレン』
湖に浮かぶ、その花の名前。地面に膝をついて、ゆっくりとした動作で右手を伸ばす。壊れものを扱うように優しく房を撫で、うっとりと見つめた。
『もう一度、君のそばで笑いたかった。…一人で寂しかったろう?』
勿論、彼女が応えることはない。それはそれは美しい姿を保ったまま、物言わぬ花となってしまったのだから。けれど男はそれでもいいと言うかのように、花がほころぶような笑顔を手向ける。
『大丈夫。これからは俺が傍にいるよ』
男は屈んで、髪が水に濡れないよう耳に掛ける仕草をすると、睡蓮の花に誓いのキスを捧げるように口付け、そのまま湖に身を投じた。
———
OKでーす!これにてニーノさんクランクアップとなります、お疲れ様でしたー!と、一人のスタッフがいいものが撮れたと興奮冷めやらない様子で拍手を送った。それを引き金として静まっていた現場に複数の拍手が響き渡り、お疲れ様、ラストシーン良かった、などと共演者からの声もちらほらと聞こえてくる。当の本人はというと、カットが掛かる前に湖から這い出て、びしょびしょのまま近くに寝そべりイビキを立てていた。そろそろ起きてください、次の現場押してるんですから。そう言うとしぶしぶ目を覚まして、寝転がったままこちらをじとりと見てきて口を開いた。
「少しは休ませてほしいんだけど」
「それはマネージャーに言ってください。私はただの下請けですから」
「よく言うよ。で、次はなんだっけ」
「次は皆さんと雑誌表紙の撮影ですね。早く着替えないと」
「お腹すいた~おにぎり~」
ニーノさんはマイペースな人だ。ああ、自己紹介が遅れました、私はロキさんが居ない時に収集されるアシスタントの一人。山嵐は単独での仕事も多く、現場にはそれぞれタイムスケジュールを管理するアシスタントが居る。他の山嵐のメンバーがそれを必要とすることがあるのかは不明だが、一応準マネージャーのような役割の人員を配置しているらしい。最も、重要な仕事は全てロキさんが担っているので、こちらとしては本当にサポート程度の仕事しかなく、こうして演者と関わることはそこまでない。このニーノさんを除けば、の話だが。
他のスタッフ曰く、基本的に山嵐は個人がしっかり把握しているから自分達の出る幕などないそう。皆裏方に徹することが出来て充実はしているようだ。
話は逸れたが、つまりニーノさんの現場を担当するととても手が掛かって心が折れる。わかりやすい例を挙げると、ニーノさんはいつも何故かお腹を空かせており、そして寝ている。一度何故なのか聞いてみたところ、『糖分がないと頭がだめになる』らしい。本当はもっとよく分からない言葉でこれを言われたのだが、そこは割愛する。スケジュール把握漏れも酷く、こちらが誘導してやらないと動こうとしない。これも何故なのか聞いてみたところ、『いちいち頭に入れるのは無駄だと思って』と言われた。巷ではやれ癒し系だ天然だと言われているが、実の所ニーノさんはものすごくドライなのだ。というか様々なことへの関心がまるでない。
再び逸れてしまった話を戻そう。やっと着替える気になったのか、ニーノさんはのそのそと立ち上がり楽屋へ戻って行った。しかし、以前はもっと大変だったのだ。ロケ車や楽屋へ戻るのすら面倒なのか、その場で脱衣を始めるのだから。女性演者やスタッフもいる中でそんなことを平気でしてしまうようなズボラさに慌てて私達が止めに入らなければならなかったこともある。その現場から出たあとは流石にマネージャーやメンバーに怒られたらしく、以後そういうことはなくなったが。
世話のかかるアイドルのこの後を考えるとため息が出てくる。そうこうしている間に本人が楽屋から戻ってきた。
「なー着替えってこれ合ってる?衣装は次の現場で着替えるんじゃないの?和服動きにくい」
「ああ、今日はちょっと時間が無かったものですから。少しの車移動ですし、大丈夫でしょう」
「ごはんは……?」
「すぐ終わりますから」
ふらふらと疲れきった様子を隠さないまま車に乗り込み、後部座席でまた横になってしまうニーノさん。本当によく寝るなあと思いながら車を走らせ、次の現場に向かった。余談だが、向かった先で撮影中におにぎりを食べだしてしまい、更に時間が押した。そのおにぎりどこから出てきたんだ、と言う前に、サーさんが周りにすみませんと謝っていたので、きっと犯人はサーさんだろう。甘やかさないでください。
*
ドラマ現場のあの日から数日が経った今日。ようやく地上波でラストシーンを含んだ最終回が放送される。山嵐のネームバリューがあるお陰か、視聴率は悪くはなかった。しかしニーノさんの出番は多いわけでなく、実を言うと主人公に一方的な想いを寄せている少し影のある役柄なのだ。もちろん主人公であるヒロインにはお相手役が別にいて、ヒロインが居ない所でいつもお相手役を陥れようとする悪役。コイツがいなければヒロインが死ぬことなく幸せになれるはずだったのに、と先日放送された回では番組やニーノ自身が大バッシングを受けてしまったほどの憎まれ役である。
しかし今日の最終回でその認識を大きく覆されることになるとは、視聴者やファンはまだ知らない。
『スイレンを殺した貴様は、罰されるべきだ。私が貴様を討ち取る』
『悪いことは言わない。おまえは多額の遺産や見舞金を受け取ったろう?手を引いてはくれないか』
『伴侶としてそれは当然の権利だ。貴様の言葉になど、乗るものか』
『...そうか。彼女にもう用はないだろうに。心を奪い、財産を奪い、大義名分を翳し、名誉までも手にするつもりか?』
『フン、御託を』
そう、この話はスイレンの相手役が実は極悪人であるのだ。ありがちな設定ではあるが、この相手役の演技もなかなかなもので。テレビの前の視聴者達からは『理想の恋人』という声が常日頃から我々に届いていたし、結末を知っている私達ですら、本当にヒロインのことを愛していたのではとさえ思ったほどだ。
この後の展開としては、二人が剣を取り戦い、あっさりとニーノさんが倒される。そういう構成だ。
『これで私は英雄となるだろう。ハハ、良いことを教えてやる。スイレン、アイツはつまらない人間だったよ。いずれ殺そうと思っていたが、貴様が葬ってくれたからな。礼を言わねば。』
くつくつと喉を鳴らして高らかに笑う男に対し、敗者となったニーノさんが、悶え苦しんでいた表情をピタリと止め、なんの感情も映さない顔で、その男を斬った。
『ッき、さま、動けない、はずでは……』
そう言って、先程の斬撃で男は事切れその場に倒れた。
『これだから、人間は嫌いなんだ。だけど、素直に祝福をしてあげられなかった俺が悪いのかもしれない。やっぱり俺は、スイレンのことを何もわかっていなかったんだと思う。この人も、きっと根は悪い男じゃなかったはずだったんだ。全部俺が悪い。ごめん、ごめんよ、スイレン』
謎の言葉を残して、ニーノさんは森の中に姿を消した。
というところで、暗転。物語は先日撮影が終わったばかりのシーンに切り替わる。これってもしかして、事務所ゴリ押しでニーノが生き残ったんじゃね、いやいや相手役すげー性格変わりすぎだろ、最悪じゃんコイツ、などとSNSではアンチコメントが相次ぎ、相手役の援護派とニーノ援護派で口論が勃発していた。
CMが明けるとスマホを弄る手を止め、テレビに映る水辺のシーンに集中する。
『これからは俺が傍にいるよ』
ざぷん。湖に身投げしたニーノさんの美しさたるや。自分は普段の姿を知っているのでそうでもないが、お針子は卒倒ものだろう。へえ編集するとこうなるんだあと関心していたら、エンドロールが流れる。これじゃあSNSの通り、脚本はクソだなと思っても仕方あるまい。
すっかり気を抜いてSNSを流し見していると、『え、やばい』『これニーノ?やばすぎ』『どういうこと?』『鳥肌が立った』という文字が羅列され始めた。何事だとテレビに視線を戻すと、そこには信じられない光景が広がっていた。え、こんなシーンあったんだ。聞いてない。
そこには水に濡れた長い黒髪を晒す、上裸の女性の後ろ姿。やっぱりあれか、ニーノさんが実は神秘的な力を持つ神様的な存在でスイレンが生き返るってオチ?唐突なファンタジー?しょーもな。携わった人間が思うことではないが、クソドラマだったなーと思っていると後ろ姿だった女性の顔がゆっくりと画面に映し出される。しかしそれはヒロインである女優の顔じゃなく、男の。男!?えっ!?これニーノさん!?エンディング曲が終わり、静寂の一瞬。直後に、ぽつんと湖の中佇むニーノさんが、唇を開いて、おそらくこれから真相を語るようだ。
https://nana-music.com/sounds/067f5c0a
『…スイレン。君の代わりに、生きてみたんだ。好きな男のために人間になりたいという、君の願いを叶えたかっただけなんだ。でも彼を殺してしまった。君として生きて、俺以外に愛されるのが辛かった。
憎かった。俺は君に触れることができないのに、アイツはベタベタと、いやらしい手で、俺の、スイレンの体を触るんだ。でも君は幸せだったろう?理解していたんだ、だって、だって君の好きな人の手は、とても心地よかったんだ。君が俺の中でちゃんと生きていたからだ。そうだろう?
そうじゃないと。そうじゃないと…こんなのまるで、俺がアイツに恋をしていたみたいじゃないか。でも本性を知って、失望したから、君のせいにして。』
ぐしゃり。愛した花を、握り潰した。つう、と伏せた瞳から涙が零れ落ちる。
『違う...俺が睡蓮だったんだ。ひとりぼっちの花は、俺だったんだね...』
そこで画面は潰された睡蓮の花に切り替わり、ENDというテロップが表示された。
———
「ニーノさん、あのドラマやばかったですね」
「どのドラマだっけ」
「ほら、睡蓮の。」
「ああ。」
後日。この日はニーノさんのアシスタントではなく、他の演者のサポートとして現場に行った時にたまたまニーノさんと鉢合わせたので、先日大反響を及ぼした作品について聞いてみることにした。
大あくびをしながらも返答はしてくれるニーノさん。
「もう、SNSが大騒ぎでしたよ。主人公も相手役も食ってしまうほどのどんでん返しで」
「うん。スイレン役の女優さんも最後のは知らなかったみたいで、放送後に声掛けたんだけど、唾かけられたんだよなー」
「えっ、聞きたくなかった...」
スイレンという女性は初めからいなかったということなのかとか、女優と顔が違いすぎるので女装をしていたという設定には無理があるとか、そもそも男同士の恋愛の話なのかとか、色々聞きたいことはやまほどあったが、もうその話はおしまい、セリフ覚えないと...と言ってニーノさんは次の大河ドラマの台本を広げて、そのまま机に突っ伏して寝息を立ててしまった。いつも思うが、なぜ毎回その状態でセリフを覚えられるのか疑問である。NGを殆ど出すことがないのでこちらは何も言えないが。
すやすやと幸せそうな顔をして寝ているように見えるが、若干眉間にシワが寄っている。マネージャー曰く、ここのところドラマの仕事ばかりで皆と会えないから機嫌が良くないらしい。かくいう私も、何度サーさんと呼び間違えられたことか。サーさん、きっといつも苦労していらっしゃるんだなあお疲れ様です、と心の中で合掌。
だがその日の撮影が終わるとニーノさんと話す機会はめっきり減り、どうしたんだろうかとマネージャーに聞くと、『もうサーがいない現場なら行かない。全部断って 』と言われたそう。本人を問い詰めたりメンバーに話を聞くと、仕事を詰めすぎてご飯をまともに食べれていないらしい。それは大変だが、その条件はちょっと意味がわからない。どんだけサーさんに甘えてるんだろうあの人。面倒見がいいからお世話してしまうんだろうなと、同情を感じざるを得ない。
それからまた数日経ったある日、ニーノさん主演のドラマが決まった。うわあ、ニーノさんまた機嫌悪くなりそう。大丈夫かなあ。そう思ってキービジュアルの撮影スタジオに行くと、案の定ニーノさんは床に寝転んでいた。開いた台本で顔を隠し、仰向けで寝ていた。でも今日は保護者の皆さん(山嵐)が数人付き添いで来ているらしく、ジョニーさんやアイヴァーさん、マネージャーに小言を言われている。が、ニーノさんは知らんぷりして寝転んだままだ。プロデューサーと監督が少しピリつき出して、やばいこのままじゃニーノが干されると業界の全員が思ったことだろう。
しかしジョニーさんが何か思い付いたかのようにニーノさんに耳打ちすると、ニーノさんは人が変わったようにシャキシャキと動き出した。勿論撮影そのものは完璧で見事時短で終わった。予定よりも随分やる気を出してくれたようで、皆ニーノさんを褒めた。一体、彼に何があったと言うのだろう。
好奇心が隠せない私はまた聞き取り調査を開始する。
「いきなり動き出したので驚きましたよ。ジョニーさんになんて言われたんですか?」
そう聞くと、ニーノさんは見たこともない満面の笑顔でこう言った。
「...カルフォルニアロール食べ放題!」
次の日、週刊誌にこの発言が載せられて話題を呼んだことは、また別のお話。
ちなみに余談の余談だが、ドラマ『睡蓮』。実際は相手役の男にはニーノさんの女装姿にしか見えておらず、女優が演じたスイレンは、ニーノさん演じる『スイレンを愛する男』の願望の姿という設定だったらしい。これを知ったのは、後に美麗な姿で相手役の男に寄り添う女装したニーノさんの、作中のラブシーンを模した写真が数枚アップされたことで裏設定が明らかになったからだ。
以下、公式SNSに寄せられた声レポート。
『ニーノ女装似合いすぎて怖い』
『これなら抱ける』
『キスシーンまであるのかよ』
『お針子の私、無事死亡』
———
※この物語はあくまで「あったかもしれない話」です。
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