唇の凍傷
ワルキューレ / マクロスΔ
唇の凍傷
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MISSION:01『ラビーレ星銀河探索部隊』
song💋唇の凍傷
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ラビーレ星の中心に高くそびえ立つビルの最上階に、一人の女がいた。彼女は暫く静かに街を見下ろした後、ふと顔をあげ、白む空の向こうに視線を転じた。気味悪い紫の霧が、ゆっくりと街全体を覆うように近づいてくる。女は傍に置いていた無線機を手早く取ると、ビルにいる全ての者に向かって司令を出した。
「こちら、銀河防衛大臣秘書、鹿目こよみ。南東の空、高度1.1.6付近にウイルスを発見しました。銀河探索部隊は直ちに戦闘用意をお願いします。『歌乙女』はワルキュリア装着の上、前線にて待機してください。以上」
こよみと名乗った女は、険しい表情でそう伝えた後、無線を切り、胸元のポケットから薄紫色のペンダントを取り出した。それにそっと口づけしながら、彼女は先程とはうって変わった穏やかな表情で呟いた。
「かつて争いを凪いだ天の女神たちよ。我ら歌乙女を守り給え」
こよみがそう口にした瞬間、ペンダントは淡い光に形を変え、こよみの体全体をあっという間に包み込んだ。数秒後、光の中から出てきたこよみは、黒のスーツから華やかな衣装へと装いを変えていた。彼女は星のように煌びやかな姿のまま、迷うことなく窓から飛び降りた。
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十七年前。突如銀河系に現れた原因不明のウイルスによって、ラビーレ星の人々は次々と病に倒れ伏していった。第二王女が生まれ歓喜のさ中にあった星は一転、絶望に捕らわれたかのような暗い日々が続いた。
当時の中央政府は、そんな状況を打開する為に調査と研究を重ね、『歌』の力で発動しウイルスを消滅させる装置、通称『ワルキュリア』を開発した。その後、適正テストから装置との適合度が最も高かったのは15歳から25歳までの娘たちであることが判明。政府は5年間の任期を定め、星中から『歌乙女』と呼ばれる6人の少女たちを選定することになった。
『歌乙女』にはウイルスと戦う危険がつく一方で、本人とその家族に多額な補助金が当てられ、中央での華やかな暮らしが約束されるという魅力的な見返りがあった。その為、星の中でも取り分け貧しい人々はこぞって自分の娘を『歌乙女』に、と声を上げた。そしていつしか、『歌乙女』になること、家族の中から『歌乙女』が選ばれることは一種のステータスとなっていった。政府の戦略は順調に実を結び、こよみを含む現在の『歌乙女』たちもまた、様々な恵まれぬ環境からこの地に集った娘たちであった。
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「こよみさん、お疲れ様です」
「本日も女神の加護を願って。よろしくお願いします!」
こよみが戦闘機の立ち並ぶプラットフォームまで飛んでいくと、そこには既に『歌乙女』のうち二人、都と月音という少女たちの姿があった。この二人は仲間内でも真面目な方で、要請があった際にはこうしてこよみよりも早く到着していることが多い。こよみは満足そうに微笑んで、二人の傍に駆け寄っていく。
「流石です、いつも早いですね。……あの気弱な大臣とは違って」
「あはは、そんなこと言っちゃ駄目ですよ。万莉さん、とても頼りになりますよ」
都はとりなすようにそう言うが、こよみは自身の上司であるあの女の事が気に食わない。『歌乙女』の中でもワルキュリアとの適合度が最も高く、恐らくは星の中で一番強いと言われている彼女。しかしその実態は、思わず溜息をつきたくなる程の臆病者だ。
「きっと、まゆると楼はあの人を起こしに向かっているのでしょう。世話がやけます」
「またそんなこと言って。こよみさんと万莉さんは前任期からの付き合いなんでしょ?あたしらよりも信頼し合ってるの、分かってますって」
月音はからかうように笑いながら、軽やかな口ぶりで言葉を紡ぐ。そんな彼女を軽く睨みつけ、こよみは邪魔な髪をゆっくりとした動作で耳にかけた。
銀河防衛大臣にして、『歌乙女』のリーダーでもある雪ノ瀬 万莉は、こよみと同様前任期より二代に渡り『歌乙女』を続けている希少な存在だ。他の少女たちは皆今年の選定で選ばれている為、月音の言う通り、こよみと万莉は彼女たちに比べれば親しい間柄だ。だが二人の間には、ある出来事を境に決定的な壁が出来てしまった。こよみが必死に前に進もうとしているのに、万莉は今でも『彼女』の幻影にとらわれ続けている。
「こよみさん、来ましたよ」
「あ、ええ。知らせてくれてありがとうございます」
過去を憂いていたこよみだが、都の声かけには瞬時に反応する。彼女は、まるで何事も無かったかのように顔を上げると、目の前にいる背の高い娘を真っ直ぐ見つめた。
「遅いですよ。万莉さん」
「ご、ごめん。……行こうか」
「ええ」
今にも掻き消えそうなその声を合図に、『歌乙女』達は空へと舞いあがる。南東の空に靄が出現してからおよそ二時間。世界は平穏の色を取り戻したのだった。
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📘砂和 都(CV: みやこなん)
https://nana-music.com/users/4336977
🥝鷹島 月音(CV:スピカ)
https://nana-music.com/users/1416874
🔮鹿目 こよみ(CV:海咲)
https://nana-music.com/users/579307
🔮彷徨ってる流氷には
ある秘密が隠されていた
信じられない偶然から
出会ってしまったの がんじがらめね
📘混沌の中迫り上がっていく
🥝超氷点 今 百八変化
🔮唇は 💋熱く溶けそう
🥝完全融解 できあがっていく
📘I don't know ただこの衝動を
🔮繰り返し 💋パッと放っては
💋この果てしない銀河の中 恋をした
🔮溢れだす想いバラバラ
💋悪気ない本能ゆえに重なる
📘🥝まだ奪わないで
🔮かじかむ声を
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イラスト:千咲町地域支援課臨時職員 秋ひつじ
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