
テルーの唄【旅芸人一座の物語〜第20話】
宮崎吾朗 作詞・谷山浩子 作曲・若松正司 編曲
リレー小説【旅芸人一座の物語】第20話です。 物語の時系列としては 第3話「天体観測」のあとくらいです。 第3話「天体観測」 https://nana-music.com/sounds/05fd857f 以下、過去作品の紹介からあらすじ紹介まで、 はこべさんのキャプションを転載します。 その後、物語になりますのでお楽しみください♪ ※文章の無断転載はなさらないで下さいね。 ※作中の登場人物は全て架空の存在です。 nana上のフレンドさんからお名前はお借りしている 部分もありますが、性格その他全くの創作です。 ご了承ください。 ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ 【旅芸人一座の物語】 企画:エリス羽衣 書き手:エリス羽衣・清水はこべ(箱) ★まとめ読みプレイリスト ① https://nana-music.com/playlists/3601402 ② https://nana-music.com/playlists/3730970 ★時系列順まとめページ https://nana-music.com/sounds/061cd18e ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ 旅芸人一座の物語 第20話「テルーの唄」 書き手:エリス羽衣 ボーカル:エリス羽衣 ★これまでのあらすじ 王宮に招かれた旅芸人一座。 その実態は、王宮の秘密を探る諜報集団。 何も知らない、貴族の少女アコベールは、 一座の歌姫エリージャの歌に魅了され、エリージャも また、アコベールの無邪気さに癒されていた。 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 王宮での興行も半ばを過ぎた頃。 アコベールの父、ステラリア伯爵は初めて宴に出席した。 隣国からの賓客を接待するためだ。 音楽や踊りに興味を持てない伯爵にとっては 退屈な宴だった。 が。 ゆうやみせまるくものうえ いつもいちわでとんでいる たかはきっとさみしかろう 歌詞の一節が、伯爵の心を捉えた。 赤く染まる空。 乾いた空気。 飛んでいく一羽の鷹。 独りで生きていくのだと心に決めていた。 けれども時折こころは揺らぐ。 そう、そしてあのとき――― “どうかなさいましたか?” 隣国からの客の声で、伯爵は我に返った。 “いえ、失礼いたしました。 あまりに良い声なので、つい” 慌てていることを悟られないよう、笑みを浮かべて 対応しながらも、伯爵の耳は歌い手の歌を求めていた。 まるで自分のことを歌われているような気がした。 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 「ゆうべの宴はよかったぞ。 踊りも演奏も良いが、何よりも歌が良い」 朝食の席で、伯爵は上機嫌で話していた。 正面に座っている最愛の妻は、スープに少し 口をつけただけであとは何も口にせず、黙っている。 「今日もあの歌い手は出るだろう。 一緒に聴きにいかないか、ナディーシア」 「気分が優れませんので」 ナディーシアの返事は素早く、そっけなかった。 「ご一緒できずに残念ですわ。 少し休ませていただきます」 ちっとも残念と思ってなさそうな口調で ナディーシアはそう付け加え、席を立った。 気まずい雰囲気が流れる食卓をなんとかしようと、 乳母が口を開く。 「旦那さま、たまにはお嬢様とご一緒なされては? お嬢様も大層」 「いや……良いのだ。 それよりもナディーシアの体調が心配だ」 一座の興行を気に入ってらっしゃるんですよ、という 乳母の言葉は、伯爵の言葉にかき消されてしまった。 アコベールは、無表情で静かに座っていた。 できるだけ気配を消そうと努めているようだった。 父親がアコベールに話しかけないのは、 娘を愛していないからではなく、 アコベールがそこにいることに気づかないからだ、 とでもいうように。 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 一座の興行最終日。 ステラリア伯爵は、一人で宴に出席していた。 前回は接待という仕事があっての出席だったが、 今回は全くの自由参加だ。 妻も娘も伴わずに一人で来ている伯爵を、 ほかの貴族たちは物珍し気に見ている。 「ステラリアが来ているのか。これは珍しい」 王弟、王妃に続いて、最後に席に着いた王が 興味深げな顔をして声をかける。 伯爵は、深々とお辞儀を返した。 楽器演奏、男たちの群舞、女たちの舞、 歌い手による歌唱、今回の興行の中で人気だった演目が次々と披露される。 歌い手も何度か出てきて歌っていたが、 伯爵の心を捉えたあの曲を歌うことはなかった。 ついに座長が登場し、最後の口上を述べた。 芸術を愛し支援してくれるこの国の王と王妃への 感謝を示し、今後の一層の精進を誓い、 次回来るときには一段と実力を磨いてくる、 というような内容を述べたあと、 先ほどの歌でお開きとしたいが、最終日なので 再演希望があれば受け付ける、と座長は言った。 ステラリア伯爵は、迷わず手を挙げた。 「曲名は知らないのだが……鷹の歌を。 鷹はきっと寂しかろう、という歌を 今一度聴かせてはもらえぬだろうか」 「喜んで承ります」 ほかにも何人かの再演希望を取りまとめたのち、 座長は一礼して袖に引っ込んでいった。 希望を述べたのが最初だったからか、 まず歌い手が出てきた。 ♪ゆうやみせまるくものうえ‥‥ ‥‥こころをなににたとえよう たかのようなこのこころ こころをなににたとえよう そらをまうよなかなしさを 「全く、珍しいこともあるものだな」 歌い終えお辞儀する歌い手に ひときわ大きな拍手を送るステラリア伯爵に向かって 王は思わずといった風情で話しかけた。 「今夜は良い夢を見られそうです」 伯爵は頬を紅潮させたまま言葉を返した。 彼が王の前でこれほどまでに感情をあらわにするのは、 初めてのことかもしれなかった。 ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ お読みいただきありがとうございました😊 久しぶりの一座の物語です。 アコベールの両親登場! アコベールの家出理由が垣間見えるような 家庭環境ですね😅 さあ、これを出してしまったら私の手元には もう一座の物語のストックがありません。 しばらくの間は読者としてはこさんのターンを 楽しませて頂こうかな♪ 🔹「旅芸人一座の物語」に、 オリジナルの主題歌とMVが出来ました! 「架空映画化」をイメージして、 素晴らしいクリエイターの皆様にご参加頂いて、 数ヶ月の濃密なやり取りを経て生まれた作品です。 「夜明けの足跡」オリジナルMV (架空映画「旅芸人一座の物語」主題歌) ✴︎nana https://nana-music.com/sounds/0654ab2b ✴︎YouTube https://youtu.be/MnLi_6_yc_M ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 「テルーの唄」 【旅芸人一座の物語〜第20話】 ★音楽 手嶌葵「テルーの唄」 作詞:宮崎吾朗 作曲:谷山浩子 編曲:若松正司 演奏:さおり https://nana-music.com/sounds/0606e6bf 歌唱:エリス羽衣 ★読み物 「旅芸人一座の物語」 企画:エリス羽衣 https://nana-music.com/sounds/05fd857f 書き手:エリス羽衣・清水はこべ(箱) (第20話書き手:エリス羽衣) #旅芸人一座の物語 #さおりさんとエリス #エリス2022の07 #エリスジブリ #エリス手嶌葵
