人魚の墓
2.
バサリ
本の落ちる音がした。
夢現、虚空を見つめる。
小さなテーブルに、ぬるくなった紅茶。
ページの折れた人魚伝説の本。
私の部屋だ。
夕焼けに染まる室内に、電気をつける気力もない。
あれは、一体なんだったのだろう。
見ず知らずの場所で死ぬ夢なんて、
しかも食べてほしいだなんて。
とんだ悪夢だ。
しかも白昼夢ときた。
気味が悪い。
無性に乾いた喉に、紅茶を一口。
美味しくない。
なんだか疲れた。
今日はもう、ご飯も食べずに寝てしまおう。
またあの夢を見ないことを祈って。
鳴り止まない蝉の声に、耳を傾ける。
海に近い私の部屋。
風に揺れるカーテン。
潮の匂い。
あの場所も、海が近いのかもしれない。
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歌詞
あの日持って帰ったライターで煙草に火をつける
煙で前が見えなくなった
換気扇の音 消えた
部屋に残った缶ビール 干した下着がうなだれた私に見えた
ぐちゃぐちゃになった部屋
死体みたいなぬいぐるみ
今夜はパレード
弱めの冷房に揺れた前髪が
あの夏を何度も思い出させる
ねむるまちに行こう
ねむるまちに行こうよ
今夜も街灯は耐えきれずに目をつむるんだ
Illust&song select:フクダ(https://nana-music.com/users/10226832)
#人魚の墓 #落椿の音
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