【声劇台本】夏が来る。

朗読:/台本:すー/BGM:ててぃさん

絶対胃もたれしながら読むもんじゃない ーーーーーーーーーーーーーーー 暦は水無月を迎えていた。 これからじりじりと暑い 夏がやってくる。 …夏はどうも好きになれない。 ビールも、プールも、 特段興味が無かった。 開放感に身を任せる人々を 横目に見ながら 図書館へと歩みを進める。 ここは静かでいい。 物語に没頭出来るこの空間が 自分は好きなのだ。 1ページ、また1ページと 本をめくる。 「…今日はだめだ。」 ため息を一つこぼし 静かに本を閉じると外へ出た。 室内との温度差に じわりとにじむ汗が鬱陶しい。 街なかを歩いていると 楽しそうに笑い合う男女が すっと横を通り過ぎていった。 辺りを見回すと 家族連れやカップルで 溢れかえっているように思えてきて 自分だけが取り残されたような感覚に 歩みをとめた。 つい最近、 新年の挨拶をしたばかりだと思っていたのに。 空気はすっかり春を通り越して 夏の匂いがしていた。