INDETERMINATE UNIVERSE
The Epic of Harmosphere 第1章
INDETERMINATE UNIVERSE
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第4節 探し続けるのは君が残した優しい歌
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何が正しく、何が間違っていたのか?
魔女たちは暗闇の中をさ迷い続ける
それでも彼女たちは忘れない
あの日の笑顔、あの日の想い、あの日の約束を
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「≪移動(トランスポート)≫!」
ヴィオレットがそう宣言すると、目の前の机に置かれた本がゆらりと姿を消す。その様子にヴィオレットは顔を輝かすが、次の瞬間空中に再び本が現れ、地面へばさっと落下する。
「あ……」
さっきとは打って変わってヴィオレットはしょんぼりと落ち込んだ表情に変わる。今ヴィオレットは1メートルほど離れた机から手元まで本を一瞬で移動させる魔法を練習中なのだ。
……結果は見ての通りだが。ほんの1メートルの距離を移動させることにすら苦戦している。
「……集中力が切れてしまったのね。でも最初は上手くできてたと思うわ」
「ううう。最初上手くいったのが嬉しくて、つい魔力が切れてしまいましたぁ……」
「それでも最初に比べると上達したわ。移動魔法は難しい魔法だし、魔力も多く使うから私も数キロの移動がせいぜいだし……」
数キロ。そこまで成長するのに一体何年かかるのだろうとヴィオレットは気が遠くなる気持ちになった。
アンネに弟子入りしてそろそろ一年が経とうとしている。魔力も安定して使えるようになったし魔法も沢山覚えたが、先輩魔女たちのすごさを思い知るばかりだ。
「だから、この辺りで終わりにしましょう。今日はソフィアと王城に行くのでしょう」
「あ!そうでした!」
ソフィアやアビゲイルとの勉強会兼交流会は今も継続中だ。今日はソフィアと一緒に王城に行って魔術科学の機械のメンテナンスを見学させてもらうことになっている。
「わぁ!もうこんな時間!行ってきます!」
そうやって愛用の箒を片手に外に飛び出せば空は生憎の曇り空で、ヴィオレットは雨が降らなければいいなぁと心の中で呟いたのだった。
☽
北の王城の一室。
ジャンヌが自室で本を読んで過ごしていると、突然扉が乱暴に開かれた。そして何人かの兵士たちが足音も荒く乱入してくる。
「……何事だ?」
ジャンヌは眉を寄せる。
北の国の騎士団はその国の大地のような白金の甲冑と白い軍服を身に付けている。しかし、目の前の騎士達は真紅の軍服だ。記憶が確かならばそれは東の国のものだ。
「東の国の軍人が何故ここに?」
「ジャンヌ・フォーサイス。我々と共に来て頂こうか」
「……女王はこの事をご存知なのか」
「誰が我々をここに入れたのかを考えれば分かることなのではないか?」
東の国の兵士たちは馬鹿にするように薄ら笑いを浮かべて、ジャンヌの問いかけに問いかけで返した。その兵士たちの後ろに、ジャンヌは見知った白い軍服の兵士たちがいる。視線があうと兵士たちは顔面を蒼白にして、狼狽えたように視線を逸らした。
……つまりそういうことなのだろう。
ジャンヌは唇を噛み、しかし静かに机に立てかけていた杖のレイピアを兵士に差し出す。
「……僕は女王の意思に従おう」
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南の国のアリソンの家。
小高い丘の上に建てられたこじんまりとした素朴な家は多くの兵隊に囲まれ、物々しい雰囲気に包まれていた。
「アリソン様!お願いです、我々の側について下さい!貴女を逃がしたとなれば東の国が黙っておりません!『博愛の魔女』アリソン様、お願いですからこの国をお守り下さい……!!」
騎士たちの隊長と思しき騎士が必死にアリソンに呼びかける。アリソンはその声に静かな表情で耳を傾け、ゆっくりと口を開く。
「つまり、他の魔女たちとこの国のどちらをとるかと言うことね?」
「は、はい……」
「そんなの──ジャンヌに決まってる」
「は?」
固まる兵士たちにいつも通りの微笑みを浮かべたまま、アリソンは杖である指輪を閃かせ空中に素早く指先で魔法陣を描き出す。
「≪風の刃(ホワールウィンド)≫」
すると突風が巻き起こり、刃となって何十人もの兵士たちに襲いかかる。悲鳴をあげる兵士たちに目も向けず、アリソンはどこからともなく取り出した箒に軽やかに飛び乗る。
「今度こそ間違えないわ。今度こそ貴女のそばに行くから待っていて、ジャンヌ」
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ヴィオレットが王城へと向かうのを見送ったアンネは夕飯の支度にとりかかっていた。
南の国でのびのびと育ったヴィオレットは格式のある場所だと過剰に緊張する傾向がある。今ではかなり魔力が安定してコントロールできるようになったものの、固有魔法の影響で人が多い所が苦手なせいもあるだろう。疲れて帰ってくるであろう弟子のために温かい夕食を用意しておこうと思ったのだ。
するとそこにノック音がする。
ヴィオレットやソフィアが帰ってくるには早すぎるし、アビゲイルはお行儀よくノックをするような性格ではない。訝しく思い扉を開く。
「……何のつもりなの?」
家は兵士たちに囲まれていた。20人ほどの兵士が剣や弓矢を家に向けている。
「この森に住むという魔女だな?お前を拘束させてもらう。大人しくしろ!」
「どういうこと?なぜこんな仕打ちを……100年前、あなたたち人間を護ったのは誰だと思ってるの……!あの子たちはこの国のために……」
アンネは血を吐くような言葉は無視され、兵士たちはアンネを後ろ手に縛りあげようとする。
「もう1人の魔女は家の中にいません!」
「大丈夫だ。ガキの魔女の方は他の魔女と城へ行っている。そっちで片付けるだろう」
その言葉に、アンネがハッと顔をあげる。
「……!貴方たちヴィオレットに危害を……!?」
激しく抵抗し兵士たちを振りほどくと、杖を取り出そうと手を空中へと掲げる。
「暴れるようなら……構わん、殺せ!」
きらりと剣が冷たい光を反射し──そのままアンネの首めがけて無慈悲に振り下ろされた。
☽
その頃、東の国の王城。
ルナが何十人もの兵士に剣を向けられていた。
「ソルはどこじゃ?」
「ソル様には相談事があると別室にお呼びしております。今頃、今のルナ様と同じ『説得』を受けて頂いているはずです」
「ほぉ、我らを謀るとは舐めた真似をしてくれるものだな。……皆殺しにしてやろうか?」
いつもの飄々とした様子と打って変わって殺意を隠しもしないルナの様子に、兵士たちが顔色を白くしてたじろぐ。しかし兵士たちの背後でその様子を見ていた東の国の宰相が、意味深に笑みを浮かべながらルナに語りかける。
「我々に危害を加えたら後悔するのはルナ様の方かと思いますがね?」
「なに?」
「いま各国で魔女たちが捕らえられているはずです。まぁ、逃げた者もいるかもしれませんが魔力の弱い魔女や見習いの魔女もいる。私に何かあれば、その魔女たちはどうなることやら!親しい誰かが傷付くことを酷く嫌うソル様は悲しまれるでしょうなぁ!」
「この外道が……」
ルナは悔しげに呻くが、兵士たちは容赦なくその小さな体を床に押さえつける。
その姿を見て宰相は満足げに笑い声をあげた。
「ははは!魔女どもの時代は終わる。魔法に怯える暗黒の時は過ぎ去ったのだ!」
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🧸ソル・アルレッキーノ(cv.あんに。)
🎀ルナ・アルレッキーノ(cv.あかりん)
✒️アンネ・クリストファー(cv.中条瑠乃)
📓アビゲイル・ヘルキャット(cv.憂沢時雨)
🕛ソフィア・クラーク(cv.はいねこ)
🗡ジャンヌ・フォーサイス(cv.なぎ)
💍アリソン・フローレス(cv.香流 紫月)
🗝ヴィオレット・ホワイト(cv.朔)
🧸🎀赤い赤い その血潮に
浮かび上がる
📓🕛人とヒトならざる者たちの
不協和音 今 夜明け前
🗡💍もう一度
あの日の景色 横顔
✒️🗝届かない
隣で君が いつも通り笑う
all:僕らは願い 夢を繋いだ
見えない霧の中で
なのに 世界は嘘だらけ
決意揺らいで
君が残した 優しい歌を
見失わないように どうか
🗝明日も
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☪︎第1章 プレイリスト☪︎
①→https://nana-music.com/playlists/3770346
②→https://nana-music.com/playlists/3840176
☪︎素敵な伴奏ありがとうございました☪︎
rayure様
https://nana-music.com/sounds/04f3a983
☪︎ 𝕋𝕒𝕘 ☪︎
#魔女ソル #魔女ルナ #魔女アンネ #魔女アビゲイル #魔女ソフィア #魔女ジャンヌ #魔女アリソン #魔女ヴィオレット
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