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ストーブ【原曲キー】【旅芸人一座の物語〜第18話】
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リレー小説【旅芸人一座の物語】第18話です。 物語の時系列としては 第17話「僕のこと」のあとくらいです。 つながっていませんが。 一方その頃、町では。って感じです。 第17話「僕のこと」 https://nana-music.com/sounds/063402dd 以下、過去作品の紹介からあらすじ紹介まで、 はこべさんのキャプションを転載します。 その後、物語になりますのでお楽しみください♪ ※文章の無断転載はなさらないで下さいね。 ※作中の登場人物は全て架空の存在です。 nana上のフレンドさんからお名前はお借りしている部分もありますが、性格その他全くの創作です。 ご了承ください。 ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ 【旅芸人一座の物語】 企画:エリス羽衣 書き手:エリス羽衣・清水はこべ(箱) ★まとめ読みプレイリスト ① https://nana-music.com/playlists/3601402https://nana-music.com/playlists/3730970 ★時系列順まとめページ https://nana-music.com/sounds/061cd18e ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ 旅芸人一座の物語 第18話「ストーブ」 書き手:エリス羽衣 ボーカル:エリス羽衣 ★これまでのあらすじ 王宮に招かれた旅芸人一座。その実態は、王宮の秘密を探る諜報集団。 何も知らない、貴族の少女アコベールは、一座の歌姫エリージャの歌に魅了され、エリージャもまた、アコベールの無邪気さに癒される。 一座が王宮を去る日、馬車の荷台に隠れて、こっそりエリージャについて行こうとしたアコベールだったが、すぐに見つかり、王宮へ帰される事に。 一頭の馬に乗り、王宮を目指すエリージャとアコベールが見たものは、炎に包まれたアコベールの屋敷だった。 炎を逃れた二人は、老医師ミムルドの元を訪れる。 ミムルドは、アコベールの後ろ盾になる事を約束し、エリージャはミムルドの屋敷を立ち去る。 一座に戻ったエリージャは、ミムルドから託された伝言を座長ジェイに告げた。それを聞いたジェイはさっそくミムルドを訪ねることにしたのだった。 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 【王宮の一部が火事で焼失】 【旅芸人の一座が関与か?】 いましがた手に入れた瓦版の見出しが、これだ。 あの一座が、こんなに有名になるずっとずっと以前 あたしは一座の演奏を聴いたことがある。 あの頃、あたしは居酒屋『猫と月』の 住み込み女中だった。 身寄りのない10代の娘にしては運がよかったほう だろう。住むところも食べるものもあったのだから。 でもその頃のあたしには、 その境遇を「運がいい」とは思えなかった。 毎日毎日、店の掃除、皿洗い、給仕、また掃除―― 自分の部屋へ戻って寝たらまたすぐ朝が来て、 同じことの繰り返し。 かと言って、この先どうしようなんて 考える頭も余裕もなかった。 ただひたすら、毎日をこなしていた。 そんな冬のある日のこと。 「スー、ちょっと来い」 店の主人に呼ばれて行くと、明日から10日間ここで 旅芸人が公演するから場所を作れと言う。 そういわれても、どのくらいの広さが必要なのかも 分からないあたしが困っていると、 店主の後ろにいた背の高い男がぺこりとお辞儀をして 「手伝います」 と言った。 それが「旅の一座」の座長、ジェイだった。 2人で客席をいくつか片づけて作った 即席の舞台での、初公演。 いつものように忙しく給仕、皿洗いをしながらだったが 初めて聴く楽器演奏と歌声はそれはそれは素敵だった。 『猫と月』の営業が終わって、 自分の部屋で寝台に倒れ込んでからもずっと、 頭の中で音楽が鳴っていたくらいだ。 翌日。営業前に、あたしは即席舞台を念入りに掃除した。 後ろの壁も、なんだかすすけていたので はたきと雑巾で綺麗にした。 あの人たちに、小綺麗な場所で気持ちよく 演奏してほしいと思ったからだ。 その夜の公演もやはりとても良かった。 お客さんも、満ち足りた顔で くつろいでいるように見えた。 外は寒いけれど、『猫と月』の中は暖炉の火と 一座の演奏であったかい――そんな気がした。 そうなってくると、毎日の掃除にも張り合いが出てくる。 一座の人たちにも気持ちよく演奏してほしいし、 お客さんにも楽しんでもらいたい。 そんな気持ちが自分の中から出てくることにビックリだ。 思いついたことがあって、テーブルを動かそうと 四苦八苦しているところに、後ろから声がかかった。 「いつも熱心に掃除してるんだな」 振り返ると、あの背の高い座長が立っていた。 「手伝うよ」 「座長さん!ありがとうございます!」 「ジェイでいい」 もっとたくさんの人が演奏を聴けるように、 客席の向きを工夫したいのだと言うと ジェイは目を見開いてから 「ありがとう」と笑ってくれた。 それからぽつぽつ、準備中にジェイと話すようになった。 これまで音楽の演奏など聴いたことがなかったこと。 演奏も歌もすごく楽しくて、 頭の中でずっと鳴っていること。 冬は嫌いだったけど、 今年は一座の演奏のおかげで特別なこと。 お客さんの顔が今までと違うこと。 ジェイのことも、訊けば教えてくれた。 自分の一座を持つのが夢だったこと。 今は結成したばかりで人数も少ないし知名度もないけど、 いつかあちこちから呼ばれるくらいの 一座にしてみせるということ。 ジェイも若い頃にご両親を亡くしているということ。 あたしもそうだと言ったら 「住み込みの仕事は手放すなよ」 と真顔で言われた。 びっくりしたけど、心配してくれてるのが嬉しかった。 10日間の公演なんてあっという間だ。 最終日、いつにも増して念入りに舞台周りを掃除して、 テーブルと椅子も配置する。 今日はきっとごったがえずぞという店の主人の 言葉どおり、営業開始後すぐに満席となり、 立ち飲みの客まで現れる始末だ。 せっかくの最終日なのに、 ゆっくり聴けないのが残念だったが、 給仕の間に体中を耳にして音楽を貪り聴いておく。 と、演奏者が替わり、ジェイが前に出てきた。 ジェイは、歌も楽器もやるがあまり何曲も 歌うことはない。あくまで「座長」なのだそうだ。 ♪冬が嫌いなのを 寒さのせいにしていたよ…… 初めて聴く歌だった。 ああ。これは、あたしの歌だ。 なぜだかそのとき、そう思った。 あの歌を、この胸の真ん中に大事に抱いて、 今日までやってきたのだ。 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ あれから十数年。ジェイに言われたとおり、 住み込みの仕事は手放さなかった。 ただ、家族は増えた。 『猫と月』の料理長である夫と、10歳になる息子だ。 「スー、そろそろ店を開けてくれ」 「はーい」 あたしは瓦版をクシャッと丸めて屑籠に投げ捨てた。 『猫と月』の一日が、今日も始まる。 あたしはジェイを信じている。 ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ お読みいただきありがとうございました😊 前回、次ははこべさんのターンと予告していましたが、 cさんのオリジナル曲を聴いたらなんだか 書きたくなってしまって😅 順番を快く譲ってくれたはこべさん ありがとうございます💕 こちらは原曲キーで歌いましたが、+4キーでも歌っています😊 https://nana-music.com/sounds/063c8e04 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 「ストーブ」 【旅芸人一座の物語〜第18話】 ★音楽 c「ストーブ」 作詞:c 作曲:c 演奏:c https://nana-music.com/users/4393753 歌唱:エリス羽衣 コーラス:c 
 ★読み物 「旅芸人一座の物語」 企画:エリス羽衣 https://nana-music.com/sounds/05fd857f 書き手:エリス羽衣・清水はこべ(箱) (第18話書き手:エリス羽衣) #cオリジナル #オリジナル曲 #旅芸人一座の物語 #エリス2022の02 #cさんとエリス

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