シンクロニズム
デセール♂
シンクロニズム
- 27
- 3
- 0
・可愛い自覚をしっかり持っている青年。自分の可愛さを理解しており、それを万人受けするように昇華させている自己プロデュース力の高い人物。努力の塊。
『欲張りなんだね、お兄さん。食べたかったら、本日のデセール2個あげてもいいよっ!』
煮込むためのソースをほぼ飲み干した男は、喉の乾きに苛まれてワインを水のように飲む。少し息を切らして、口の端からこぼれたワインを拭っていると、跳ねるような足取りでやってきた青年の給仕がクロスの上にクリームブリュレを置いた。パチンとウインクをして、戻っていく彼は声の甘さと見た目と所作が合わさって、女性のような少年のような、それでいてしっかりと青年らしい不思議な存在であった。
目の前にあるクリームブリュレと飾りのフルーツやソースは、見た目に馴染みはあれど食べた事など一度もない。どうして俺がこんなスイーツに馴染みがあるのだろう。俺は何故ここに―
何かを考えようとする頭と裏腹に、手が焦がされた表面をパリ、と割る。
……あぁ、食事が止まっていたようだ。飲みすぎだろうか。食べなければ、食べ進めなければ。甘すぎないカスタードとほろ苦く焦がされたカラメルの温度差、甘苦の差、食感の違い、全てが男を楽しませる。デセールはこれくらいがちょうどいい。焼き菓子の類は重すぎる。カラン、とスプーンを置くと給仕が戻ってくる。もうひとついるかとイタズラっぽく聞いてきたが、軽く首を振っておいた。
#洋食屋さかもと
コメント
まだコメントがありません