刀剣乱舞
刀剣男子 〜三百年の子守唄〜
刀剣乱舞
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2「願いの泉」刀剣乱舞
一騎打ちにて膝を着いてしまって以降、なんとか能力を上げたいと励むも、いまいち成果の感じられない日々。
そんな私を付喪神たちが陣の外へ連れ出した。
姿見の付喪神には、大き過ぎて一緒にはいけないからとポケットに入るサイズの手鏡を渡される。
荷馬車に乗せられ、それを案山子が引いてくれた。
大きな扇の付喪神や壺の付喪神たちは懐かしいだの何だのと談笑しながら揺られている。
すぐ横でしゃもじの付喪神が行き先について質問している。
柄の部分には厳島神社と焼印が押されておりお土産として買えるもので、付喪神としては比較的新人…新神?のようだ。
「お星、あんたニはこの場所……どう見えル?」
到着早々簪の付喪神に問われたものの、草木は枯れかけ湿ってぬかるんだような地面。カビのような泥のようななんとも言えない臭い。
空もどんよりとしており、所々設置されていた腰掛けのようなものはくずれてしまっている。
とうてい泉とは思えない。
「しいて言うなら…………沼っぽい、ですね」
恐る恐る答えれば、その答えで特に気分を害した様子もなく、簪はしゃらりと体をゆらした。
「まあな……ではお星よ。何かひとつ奉納してみよ。」
匂い立つその姿 妖しき光
青き血の薫り 闇に満ちていくさあ斬り合おう
戦道独り行く 漆黒の龍
撃ち込むは 怒り祈り本能か一振りの風
この勝利 運ぶために
今 馳せ参ず 武人の誉れ
刀剣乱舞 熱く 熱く この身を焦がし
今 駆け抜けてく
刀剣乱舞 永久に 永久に 主命 胸に抱きて
この身 燃え尽きるとも
「え、ァ…ま、え?え???」
何でも良いと言われたので思わず好きなゲームがミュージカル化された時の曲を歌ってしまった。
……のだが。
「ほう、これは……」
「6振りの刀が、人型になったぞ!!」
比較的小柄な少年が目の前に来て跪くと、残り5振りも同じように跪き、こちらを見た。
「あ、ああああ…ううあああぁぁぁ」
「実態を持って動くとは、今までの鍛錬も無駄では無かったようだ。良かったな、お星……お星?」
「もももももものよ、あおぇおお!く!!!いっし!!と、んんんぼぉ」
ぎりぃ…とおかしな悲鳴をあげることしかできない。自分の妄想がダダ漏れになってしまったのだろうか。顔は火照り恥ずかしさから覆うも、もっと見たくて指の隙間から見てしまう。
なんてテンプレート通りの行動を……と思わなくもないが、人間動揺するとこうなってしまうのだと身をもって知った。
…こんな形で知りたくなかった。
恐らく3分ほどの短い時間。
歌によって現れた6振の刀は細かい光の粒が弾けるように消えてしまった。
「これが、願いの泉の由来だ。この場では、願ったものが現れる。歌を奉納するものに力があればそれはより強固なモノとなる」
誇らしげに、どこか懐かしい話をするように簪の付喪神は言った。
ふと、先ほど感じていた悪臭が和らいでいる。
はて、気のせいか?慣れてきたのかと周囲を見回すと足元に新芽が出ていた。
「今は穢れで汚れちまっているが、元は綺麗な湖だった。それこそ、関ヶ原中から神やら付喪神やら人間が集まり宴をするような」
その穢れを祓ってほしい、ついでにそれが鍛錬にもなるだろうというのが付喪神たちからの提案だった。
この湖を完全に元の姿に戻せるか、正直今の力では不十分だろう。
「願いの泉の浄化、やってみます」
それでも、無理やり投げられた仕事ではない、託された付喪神たちの願いや期待に応えたいと思った。
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