アイノシズク
₊*̥𝙰𝚜𝚝𝚛𝚊𝚎𝚊☪︎₊*˚
アイノシズク
- 113
- 19
- 0
__𝔻𝕒𝕣𝕝𝕚𝕟𝕘 𝕀 𝕟𝕖𝕖𝕕 𝕌. ✩₊*˚
₊*̥┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈☪︎₊*˚
璃月の体調は、蛇遣い座の季節に入ってから悪化し続けている。
あの日、星巫女が全員星天界に揃った日。
刹那の告げた話は、俄かには信じられないものだった。
世界からは一柱の神様が既に失われていて、それが隠蔽されているなんて。
この世界に暮らす人々にとって、神様の存在は絶対的なものだ。それは施設育ちの二人にとっても例外ではない。
神様は、いつでも私達を守ってくれている。生まれた時からそう刷り込まれているかのように、その実在を疑ったこともなかった。
中央政府も名目上は神の信託の元に政治を行うことになっているし、中央政府に管理されている施設も同様だった。
世界は、十二柱の星の神様を中心に回っている。神様の御心のままに、この世界は存在している。
何度もそう教えられ、世界に暮らすほとんど全ての人々が、心からその言葉を信じていた。信じていると、思っていた。
時代の流れか、星巫女は都市伝説のように扱われることも多くなり、熱心に信心を持っている若い人はあまり見られなくなっていたけれど。
それでも、神様を貶すことは絶対にしてはいけないことだとされていた。
神様は不変で、絶対的な存在。
だからそれが、他の何かによって穢されるようなことはあってはならなかった。
神様の存在が隠されているなんていう刹那の話は、容易に信じられるものではなかった。
それがどんなに信憑性の高いように語られた話であっても、簡単に信じることは出来なかった。
だけど、刹那の告げた「蛇遣い座の季節」に入ってから。確かに二人の――特に璃月の体調は、悪化の一途を辿っていて。
それは、璃星と璃月だけに限った話ではないらしい。
黒髪の少女の襲撃は、頻繁になった。星天界を襲ってこなくても、その姿を遠目に確認する頻度は格段に増えた。
それらは全て、刹那の話の通りで。
星巫女達は、刹那の話を信じざるを得なくなった。
双子座の星巫女である二人の召喚頻度は同じはずなのに、璃星と璃月では明らかに璃月の方が具合が悪くなっている。
昔から、璃星と璃月のどちらかは体調を崩しやすかった。
それが片割れだったのか、それとも自分だったのか。今となっては、もう分からない。
あの施設の中では薬なんて与えられないから、片割れが死なないことを祈って眠っているしかなかった。
どうしても具合が悪そうな時には、何度か医務室に忍び込んで風邪薬を盗み出したこともあった。
あの日の記憶は、少しずつ薄れて曖昧になってしまっている。
あの頃は、どちらが璃星でどちらが璃月かなんて、気にせずに生きてきたから。
辛いことも、痛いことも、苦しいことも。二人が二人でいる限りは平気だと思っていたから。
そうやって、二人で全部を半分こにして生きると決めたはずなのに。
今の璃星は、璃月に何もしてやれない。
自分よりもずっと苦しんでいる璃月の痛みを、共有してやれない。
それが歯痒くて悔しくて堪らなかった。
璃星と璃月の心臓は、ひとつだったはずなのに。
いつの間にかそれは二つに分かれて、それぞれが別々の鼓動を刻み始めた。
そうなってしまったのは、いつからだろうか。お互いがお互いであると定めた日からだろうか。
ボクが璃星で、彼女が璃月。
そう定めたから、璃星は璃月に対してどこまでも無力になった。
ならば、自分がどちらであるかはっきりせたのは、間違いだったのだろうか。
璃星が璃星でなければ、璃月の苦しみを分かち合えたのだろうか。
璃月がいなくなってしまうかもしれない。二人が離れ離れになってしまうかもしれない。
そんな恐怖も不安も抱えることがなかったのだろうか。
二人の境界は、曖昧なままの方が幸せだったのだろうか。
幾つもの疑問が浮かぶけれど、答えは無かった。
璃星と璃月は、もう一人へは戻れない。
分かれてしまった鼓動のリズムは、気付いた時には少しずつずれ始めていた。
怖い。怖い。怖くて堪らない。
璃星になってしまった璃星は、一人では生きられない。
璃星と璃月が怖いのは、死ぬことではない。
死ねば、それで終わりだ。永遠の暗闇に溶けて、二人で朽ちていくだけだ。
生きている方が地獄のような場所で暮らしていた二人にとっては、痛みからも苦しみからも解放される死は、恐れるものではなかった。
怖いのは、二人が引き裂かれること。
施設から逃げ出してきたのだって、それを恐れたからだ。
例えば、璃月だけが死んで、璃星が一人取り残されるなんて。絶対に認められないし、許せない。
璃星は、璃月と二人だからこそ生きていけるのだ。璃月のいない生涯なんて、そんなの生ではない。
璃月だって、きっとそうだろう。
自分が先に死んでしまうことも、片割れが先に死んでしまうことも。
一人になることが、怖くて堪らないのだ。
幸せな生活も、豊かな暮らしも、何も望まない。
二人で一緒に生きていけるのなら、進む先で辿り着くのが地獄だって構わない。
璃星も璃月も、そう想い合っている。
二人でいたい。
この世界に望むことなんて、たったそれだけだった。
「……どこにも、いかないで」
か細い声で、璃月が縋るように璃星の手を握る。
「どこにも、行かないよ」
ボク達は、二人で一人だから。
たとえ、心臓が分かれてしまっているとしても。
自分に言い聞かせるように、璃星は小さくそう呟いた。
𝕋𝕠 𝕓𝕖 ℂ𝕠𝕟𝕥𝕚𝕟𝕦𝕖𝕕...
₊*̥┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈☪︎₊*˚
✯𝕃𝕪𝕣𝕚𝕔✯
⛓物憂げな冬の惑星で
靴下も持たず生まれたよ
🔗寒空に僕ら凍えて
少し痩せたまあるいイノチ
🎐ここがどこかわからないで
手を伸ばしたりとか
🍂いつもなぜか恥ずかしくて
これといって訳もなくて
❄️そんな日々が難しくて
立ち止まっているから
🎈ここだよって声枯らして
誰かを呼ぶんだ
🎐🍂正しくありたいと胸を焦がす
🎈❄️されど知る あれない自分
🔗それでもあなたの頬を落ちる
⛓🔗シズクだけが僕の理由
🎐❄️🎈🍂⛓🔗Darling I for U
ただ愛してる
Darling I need U
夜を越える
✯ℂ𝕒𝕤𝕥✯
♓︎Pisces #星巫女_咲羽
🎐咲羽(cv.おとの。)
https://nana-music.com/users/7930665
♊︎Gemini #星巫女_璃星 #星巫女_璃月
⛓璃星/🔗璃月(cv.唄見つきの)
https://nana-music.com/users/1235847
♏︎Scorpio #星巫女_千歳
🍂千歳(cv.07)
https://nana-music.com/users/96726
♑︎Capricorn #星巫女_灯莉
🎈灯莉(cv.瑠莉)
https://nana-music.com/users/6276530
♒︎Aquarius #星巫女_雪涙
❄️雪涙(cv.海咲)
https://nana-music.com/users/579307
₊*̥素敵な伴奏をありがとうございました☪︎₊*˚
➴だんご様
https://nana-music.com/sounds/05b7459d
✯𝕋𝕒𝕘✯
#Astraea #星巫女
コメント
まだコメントがありません