【声劇台本】Ephemeroptera:産卵
●黒蟻【】× ○蟻地獄【】(楽曲:Zzz様)
【声劇台本】Ephemeroptera:産卵
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産卵、斃死。
──「本能」とは?
●黒蟻(くろあり)
…雌♀ 蟻地獄に捕食されて以来、その意識の中で生き続ける。
蟻地獄とは頭の中で言葉を交わす。
○蟻地獄(ありじごく)→ 蜉蝣(かげろう)
…雌♀ 黒蟻を捕食したのち、蛹になった。
今は羽化して蜉蝣となり、黒蟻とともに産卵場所を探す。
--------------(以下台本📚)---------------
(01.28)
●白とも黒ともつかぬ、がらんどうの空間。何もないその場所で、向かい合って死んでいた。死んでいたけれど、私たちは会話をした。
(01.14)
○「わちきらは、あの後…どうしたっけか?」
●「2人で卵を産んで、確かそのまま、何か大きな生き物に、……踏み潰されたとおもう」
○「卵、もろとも?」
●「うん」
○「…そう……」
(0.53)
●「大丈夫。私たちの子なら、そこにいるよ」
○すぐそばで、小さな小さな蟻地獄が、何もない地面を引っ掻いていた。
(0.42)
●「巣を作ろうとしている。誰に教わったわけでもないのに」
○顔をあげたその子の頬には、幾筋もの涙の跡が走っていた。
(0.31)
●「……短い、一生だったねぇ」
○抱きしめた身体は、ひしゃげそうに弱々しくとも、しっかりと「蟻地獄のかたち」をしていた。
(0.16)
○「……嗚呼、わちきの子。大事な大事な…」
(0.09)
●むごたらしい本能のことしか、考えられずに。
○それでも、うつくしい命を、繋ごうとする。
#台本コピペ禁止 #台本引用添付禁止 詳しくは↓
https://nana-music.com/sounds/03c27550/
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(設定📒)
黒蟻と蟻地獄。
無事に羽化し、蜉蝣となったふたりは遂に産卵の時を迎える。
産み落とした卵から孵るであろう小さな蟻地獄は、
すぐに砂に潜って巣を作り、狩りを始めるはずだ。
その場所から動けずに、3年もの間、たったひとりで。
だからせめて、雨風を凌ぎやすい場所に。
……そう考えて、その薄羽蜉蝣は、地面に降り立った。
自らの命の終わりが近いことも、痛いほどに感じながら。
──卵を産み落としたそのとき、
ふたりを取り巻く世界が闇に包まれた。
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『本能』をテーマにした3連作、3作目。
これで、黒蟻と蟻地獄の物語はお終いです。
今年5月に『ダーウィンが来た!』を観て、『本能』のむごたらしさ、生きることの苛烈さに衝撃を受けてから、随分時間が経ってしまいました。視聴後、ネットでも色んな情報をかき集め、なるべくクロヤマアリやアリジゴク、ウスバカゲロウの正確な姿を描写できるように頑張ってみました。以下のリンクにもお世話になりました。有難うございます。
★https://jungle-time.com/antlion-3019/
★https://toyokeizai.net/articles/amp/320562?display=b&_event=read-body
楽曲は、最後までZzz様にお世話になりました。この3部作はZzz様の楽曲で、と決めさせていただいて…。全てにピアノ楽曲をお借りしましたが、どれも心を鷲掴みにしてくるような、不思議な音色が織り込まれているように思います。鳥肌が立ってしようがありません…。本当に本当に、有難うございました💐✨
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❗️台本利用時の注意は、プロフィールをご覧ください。
❗️台詞・性別の変更不可✖️です。卵を産める「雌」であることが大きな意味を持ちます。
❗️コラボ時は、楽曲様に拍手・コメントを!
……少しだけ裏設定を考えてありますので、ついでにここでメモさせていただきます。
🐜この黒蟻が蟻地獄の巣に落ちてきたのは、完全なる不慮の事故ではありません。実はこの黒蟻、「自殺」を考えていました。
「子どもを産みたい」「空を飛びたい」という夢を強く抱いていた黒蟻。しかし、そんな夢が叶えられるはずもありません。渇望が強ければ強いほど、絶望は深く、彼女は「自殺」を考え始めました。…第1作のときの黒蟻がなんとなく自身の死に対して冷めていたのは、それが理由とも考えられます。
🐜なお、「自殺」とは「生きようという本能に反する」こと。彼女は、突然変異的に「本能に反する存在」となったわけです。
🐜「なぜ、黒蟻の意識が、蟻地獄の意識と共存するようになったのか」。
このことに対する説明として……
①まずひとつ【物語中での直接的な原因として】彼女の夢に対する「念」があまりに強く、それだけが身体を離れて残ってしまったため。
②そしてふたつ【物語を書いた私の意図として】自殺を望む黒蟻の「異常性」に、このような「異常な事態」を重ね合わせる形をとってみました。
🧚🏻蟻地獄はきっと、黒蟻の意識に触れたことによって、本能に疑問を生じるようになっていったと思います。日々を生き、子孫を繋ぐことに対して。本作のラスト、子どもを抱きしめて嗚咽する彼女はもはや、卵を産み落として死んでいくだけの、ただの薄羽蜉蝣ではありません。
…そしてまた、この「白とも黒ともつかぬがらんどうの空間」自体が、黒蟻だけでなく蟻地獄にも何か強い意識の変化がおこったことの証ともいえます。精神世界上に広がる、不思議な空間です。
🧚🏻悲しい終わりかたになってしまいましたが、ふたりはきっと「この子を独りぼっちにしないで済んだ」と思っているのではないでしょうか。ふたりの母親と、その小さな赤ちゃんが、どうか、安らかに眠れますように。
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