【声劇台本】夜曲
○:●:BGM:Les feuilles mortes Joseph Kosma 演奏:ssy 台本:明烏
【声劇台本】夜曲
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●「あのとき」
飲み慣れないスコッチが、手元ですっかり薄くなっていた
○「あのとき?」
●「残念だった、帰れちゃってさ」
あのときもここでこうしていた
大雨で帰れそうにないと、電話を入れる背中をみつめて
○「…残念なんてものじゃなかったわ」
●衝動的に彼女に触れたが、それは衝動的というにはあまりに 控えめな動作になってしまった
○「こんなふうに予定が狂うこと、若い頃はもっと楽しめた気がする」
●目の前のグラスとコースターが
にわかに輪郭をはっきりさせる
○「そんな顔しないで、
私だっていつも あなたの未来に嫉妬しているのよ」
●「それなら」
ずっと一緒にいてくれたらいいじゃないか
○「私はね、私の人生が気に入ってるの、そんなに幸せというわけではないけれど、幸せかどうかなんて、そう重要なことではないでしょう?」
●触れた手はこんなにも暖かいのに
○「だからそう、これはね、愛なんかじゃないと思うの、
だって私、あなたの幸せなんてもう
どうだっていいんだもの」
●この人がいなくなったら、死んでしまうかもしれない
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