【朗読】 描けないもの 数十作目
ピアノ:siata様 台本:min cast「」
【朗読】 描けないもの 数十作目
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ようこそ、おいでくださいました。
数ある店の者の中から私めをお選びいただき、誠にありがとうございます。
今夜が貴方様にとって特別なものとなりますよう、せいいっぱいのおもてなしをさせていただきます。
『とある女性の口上』より
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今日も彼女は、わたしのアトリエへとやってくる。
そして、布一枚の姿になり、椅子へと座るのだが…。
「あのー…」
彼女は、座ってすぐ太陽の温かい日差しに眠くなったのか、船を漕ぎ始めた。
コクリコクリと、揺れるからだ。
サラサラと落ちる髪。
わたしは今更になって、布が全部ずり落ちてしまわないかと不安になった。
「お疲れのようですので、今日はやめときましょう…か?」
呼びかけても、反応はやはりない。いつものことだが、今回は違う。
わたしの呼びかけに気づいてもいないのだ。
よっぽど疲れているのだろう。
「あのー…」
その時だった。突然、彼女のからだが大きく傾いた。
ガタッ
「ああ!」
わたしは手に持っていたものを全て放り、ギリギリのところで彼女を受け止めた。
危なかった…。怪我をさせてしまっては大変だ。
改めて、彼女を見る。
心地良さそうな寝顔。長いまつ毛。そして、
隠そうにも隠せないような、深いクマ。
わたしでも容易に抱えることができるほど軽いからだ。
一体この人はどんな仕事をしているのか。
純粋に、彼女のことを知りたいと思った瞬間だった。
近くにあるソファに寝かせ、毛布をかける。ここまでの動作、彼女は一切目を覚まさなかった。
わたしは椅子の背にもたれ、彼女を見つめた。
「綺麗だな…」
自分では覚えていないが、わたしはそう呟いたらしかった。
そして、いつのまにか眠ってしまっていた。
目を覚ました時にはすでに彼女の姿はなく、一枚の書き置きが残されていた。
『ありがとう。』と。
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だんだん彼女のことも種明かしがされていきますよぉ。
まだまだ幸せですね。
これからです。min節は。(←自分で言うな)
siataさん、BGMをお借りいたしました。一音一音空からこぼれ落ちてくるような素敵な音色をありがとうございました。
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https://nana-music.com/playlists/3589431
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