【朗読】　描けないもの　　数作目

ピアノ:rito様　台本:min cast「」

僕の研究する画家は、変わった人物だった。 デビューしてしばらくの期間は果物や植物、景色と、無生物を描いていることが多い。少し経つと、鳥や犬、身近な動物を描くことが多くなった。 だが、彼が時代の流れや自らの人生に苦しんでいる時期に描かれた作品は、すべて、 たった1人の女性だけだった__。 『とある美術誌』○×芸術大学発行　教授コラム　より ーーーーーーーーーーーー 「では、始めましょうか。」 　たった一枚の布を纏う彼女は小さく頷いた。俯いたまま決して目を合わさない。 「そこの椅子に好きなように座ってください。」 　彼女が座ると同時に、わたしもキャンバスの前に座る。パレットに指を通し、筆をとる。 　彼女はもう静止したまま動かなくなっていた。 　耳にかかった髪がはらりと落ちる。 　羽織った布が片方、肩からスルリと落ちる。 　わたしは筆で、その形をなぞった。 　華奢で、今にも消えてしまいそうな儚さ。 　何度描いても、それをわたしは完璧に表すことができた試しがあっただろうか。 「疲れた時はおっしゃってくださいね。」 『…』 　いくら話しかけても、彼女が口を開くことはない。 　ただ、わたしのアトリエに訪れ、布一枚の姿でじっと動かず、それが終われば静かに去っていく。それだけだ。 　何を、思っているのだろう。 　何を、描けば良いのだろう。 　窓からさす午後の光。 　その黄色い光に、彼女は溶けていた。 　わたしたちだけの時間が、流れていた。 　 ーーーーーーーーーーーー 久々にシリーズものを書こうとしているminです。 芸術の授業にときめいているので書きたくなった題材でした…w 絵を描くのはわたしも好きです。 　 一応シリーズものですが、気にせず、気に入った話だけ読むでもOKですので！ ちょっと内気で、無意識に欲望強めな、画家さんをよろしくお願いします。 ritoさん、お世話になっております。 やっぱりこの曲、そしてritoさんのピアノ、好きです。 ありがとうございました。 このシリーズのリンクです。 https://nana-music.com/playlists/3589431 #rito #画家 #絵描き #芸術 #声劇 #朗読 #1人声劇