まっくら森の歌
🌼無垢の悪魔・リリィ
まっくら森の歌
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✝︎✝︎✝︎✝︎✝︎✝︎✝︎🌼無垢の悪魔・リリィ Episode1✝︎✝︎✝︎✝︎✝︎✝︎✝︎
その少女は気付いたら黒い森にいた。
普通の赤ん坊なら捨てられた時点で森の毒に侵されて死んでいただろう。しかし、生まれつき持っていた高い魔力が彼女を生かした。
その魔力ゆえに、彼女は両親に疎まれ森に捨てられたに違いなかったが彼女はそれを嘆くことをしなかった。家族という概念も、人は親から産まれることも、自分が何者かさえ、教えてくれる者がいなかったからだ。
毒のある草を食べ、呪いに濁った水を飲み、瘴気の噴き出す地面に寝そべり眠りについた。
そうしてゆっくりと毒と呪いと瘴気を取り込んだ彼女は、背中から捻れた小さな羽が生え、異形の悪魔となった。
だが、彼女はそれを嘆くこともしなかった。それが悲劇だと誰も教えてくれなかったからだ。
✝︎
彼女は黒い森の近くを通る旅人の記憶を「食べる」ようになった。
黒い森は隣国との国境にある。急いで隣国へ向かう浅はかな旅人がやむなく黒い森のそばを通る道を使うのだ。しかし彼女はそんなことを知る由もなく、そこをたまに人間が通るという事だけを理解していた。
その日は満月が明るい夜だった。
彼女はいつものように森の傍を通り過ぎる旅人を襲い、頭の中を「食べる」。空腹の時に地面に生えている雑草を口に入れる時のように、彼女は罪悪感も無くそうした。
男を育ててくれた優しい両親の記憶、愛する美しい妻、そしてまだ赤ん坊の娘。胸の中がふわふわするような良い香り。小さな生き物。見たことも無い鮮やかな色が瞼の裏に踊る。頭に触れる手。柔らかく何かを呼ぶ声。その記憶が脳髄を通りごくんと「飲み込む」。
そしておしまいだ。
(もっと、たべたいなぁ)
彼女はいつも胸の奥がすーすーしていた。まるでお腹が空いている時のように。だが、頭の中を食べた一瞬満たされた気がしても、また胸の奥のすーすーがぶり返す。
(こういうのオナカスイタっていうんだよね。でも、ごはんたべたいときと、すーすーするところが、ちがうんだよなぁ)
彼女は胸ということすら知らない部分を撫でているその時、突然何かが草むらから飛び出してきた。咄嗟に彼女はその何かを地面へと引き倒した。この森には毒を吸って凶暴化した魔獣も多いからだ。
それは恐らく人間だろうが、今まで見た人間に比べて細くて小さかった。顔もつるりとしていて見慣れない。彼女は生き物には性別があることもよくわかっていなかったので、珍しそうに目の前の生き物を観察した。
この生き物は目が綺麗だ。怪我をすると流れる液体と同じ色をしていて、なんだかすきだなぁと彼女はぼんやりと考えた。
「ぉま……えが、この森の……悪魔……か?」
「あくま…?」
あくま?前に頭の中を食べた旅人もそう言っていた気がする。あれは自分のことだったのだろうか?よく分からないけど、自分はあくまっていうんだ。
それは彼女にとって衝撃だった。
何者でもなかった彼女はその時初めて自分が悪魔という一つの「個体」だと認識した。
「えへへ!わたしってあくまっていうんだ!おしえてくれて、ありがとう!」
喜びのままに目の前の生き物に飛び付くと、驚いたように体を跳ねさせ、困惑した様子で彼女を見返した。手の中で握りしめた銀色の変な形のものを見せてくる。
「近寄るな!銃で撃つぞ!」
「ジュー?よくわかんない。それかみつく?狼みたいに?」
「噛みつきはしないが……」
「なら、こわくないよ」
「……お前、何なんだ?仲間はいないのか?」
「なかま?」
「……一人なのか?」
「うん。ずっとずっとひとり。いつのまにかここにいて、それからずっとひとりだよ」
そう答えると目の前の生き物は絶句したように押し黙ってしまった。不思議そうに彼女は目をぱちくりとさせた。
これがシスルと小さな悪魔の出会いだった。
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✞Lyric✞
ひかりのなかで みえないものが
やみのなかに うかんでみえる
まっくらもりの やみのなかでは
きのうは あした まっくら クライ クライ
さかなはそらに ことりはみずに
たまごがはねて かがみがうたう
まっくらもりは ふしぎなところ
あさから ずっと まっくら クライ クライ
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🌼「無垢の悪魔」リリィ (cv.Arisa)
(https://nana-music.com/users/2155787)
高い魔力を持っていたため、忌み子として黒い森に捨てられ一人ぼっちで生きてきた少女。
黒い森の瘴気や呪いを取り込んだせいで悪魔となったが元々は人間。他人と関わりを持たず育ったため、世の中のことを知らず、善悪の区別や倫理観も曖昧だが素直で人を疑わない性格。
今はまだ何も知らない悪魔。きっと愛すらも。
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✞素敵な伴奏をありがとうございます✞
arkin様
https://nana-music.com/sounds/01063fd7
✞Tag✞
#悪魔リリィ
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