六等星の夜
₊*̥𝙰𝚜𝚝𝚛𝚊𝚎𝚊☪︎₊*˚
六等星の夜
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__𝕀 𝕞𝕖𝕥 𝕪𝕠𝕦 𝕚𝕟 𝕥𝕙𝕖 𝕤𝕥𝕒𝕣𝕕𝕦𝕤𝕥.✩₊*˚
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少女の影が、薄らいで消えていく。暗闇に溶けていく。
乙女座の星巫女である琉歌が歌い始めて、それをきっかけに星巫女の全員が立ち上がって。
今まで実感のなかった「星巫女が世界を守っている」という言葉は本当だったのだ、と強く感じられた。
もし星巫女がいなければ、世界は滅びていたかもしれないのだ。
ひび割れた星天界が、元に戻っていく。光の粒が溶けるように星天界の周囲を覆い、瞬く間に傷が塞がっていく。
まるで時を巻き戻したかのように、割れていたはずの窓硝子も直っていた。魔法だ、と思った。
星天界がどのような仕組みでそこに存在しているのかは分からないけれど、魔法を見せられた気分だった。
あっという間に星天界は何事もなかったかのように元の姿を取り戻し、消えていた明かりが灯った。
先程までの異常なほどに強張った雰囲気は、少女が消えたことで元に戻っていた。
危機を乗り越えたことで、みんながほっとしたように笑っていた。
灯莉も安心したように笑っていた。真っ直ぐな笑顔だった。
灯莉の笑顔を見て、心に暖かい光が灯った気がした。初めて会った時と同じだった。
――星巫女に選ばれて、良かった。
初めて、純粋にそう思うことが出来た。
星巫女になったばかりの頃は、お母さんがいなくなってしまってすぐの頃は。死にたくて仕方がなかった。
生きる意味を見出せず、息をすることさえ苦しかった。
お母さんが雪涙の元からいなくなったことを思い出せば、今でも胸が張り裂けそうになる。
悲しくて堪らなくて、どうしようもなくお母さんのぬくもりが恋しくなってしまう。
でも、死にたいとは思わなかった。
雪涙が星巫女として活動していれば、いつかきっと――お母さんにも、届くのかもしれない。
そんな御伽話みたいな奇跡を、初めて信じてみたいと思えた。灯莉のおかげだった。
灯莉がひとりじゃないと言ってくれたから。だから雪涙は、もう少しだけ、この世界を信じてみようと思えたのだ。
「……ありがとう、灯莉」
そう、呟くように言葉を発した。不思議そうに見返される。
雪涙は口下手だから、上手くこの想いを言葉にすることは出来ないけど――でも、この気持ちは伝わっていて欲しかった。
揺れる星空が、少しずつ薄らいでいく。世界に光が射しこみ、夜空が色づいていく。
微かな明かりの射し込む外へと視線を向けると、一人、憂い気な表情をした刹那が目に入った。
そういえば、刹那は最初、何かを言おうとしていた。結局、知らない少女のせいで聞かずじまいだったけれど――
声をかけるべきか否か悩み、結論が出るよりも先に意識が薄らいだ。
ああ、夜が明けたんだな。そんな感慨が一瞬胸をよぎる。
夜が明けて、雪涙達星巫女は、元の世界に戻っていく。雪涙達が守った世界に。
その事実に安心し、雪涙はゆっくりと目を閉じた。
◇◇◇
目を覚ますと、自分の部屋だった。
昨日の記憶は、はっきりと覚えている。
長い髪の知らない少女の影が、星天界の外に現れて。
星天界が壊されそうになって、歌うことで世界を守って。
少女の影が消えた後、安心したように微笑んでいた祈鈴の横顔を思い出して嬉しくなった。
祈鈴は、知らない少女の襲撃の間、ずっと咲羽の手を握っていてくれた。
祈鈴は、星巫女達の中で一番優しいと咲羽は思う。
もちろん、お姉さんである千歳も、同じ小学生で友達の琉歌も、すごく優しいけれど――
どこか寂しげな表情をすることが多い祈鈴の笑顔が、咲羽は好きだった。
どうしてなのかは、咲羽にも分からないけれど。でも、祈鈴の笑顔を見るとすごく嬉しくなるのは事実だった。
微睡んでいた意識が、射し込む日の光によって現実世界へと引き戻される。
すごい大活躍をした翌日も、咲羽は学校に行かなければならない。
今までは憂鬱だった朝が、今日はそれほど嫌ではなかった。
昨日の夜の出来事が、咲羽に勇気をくれていた。色の見えない咲羽にも、世界を守ることが出来た。
色がなくたって、目に映るすべてがモノクロだったって。咲羽は確かに世界と繋がっているのだ。
その事実がたまらなく嬉しかった。
学校に行く支度をしようと、ベッドから起き上がろうとして。違和感を覚えた。
身体が、動いてくれない。まるで自分のものではないかのように。自分の意志で、身体を起こすことが出来ない。
疲れているからだろうか。微かに動く両手を使って、鉛のような身体を動かし、なんとか立ち上がろうとする。
星巫女になってから、体調の悪い日が増えたような気はしていたけれど――ここまで酷いものは初めてだった。
這うようにベッドから降り、ふっと身体から力が抜けた。立っていられなくなり、その場にへたり込む。
酷い頭痛がした。頭が軋むような、なんて生易しい感覚ではない。
沢山の錘を頭上に縛り付けられ、その上で内側から鈍器で叩かれているような痛み。
モノクロの視界が揺れて、すぐに真っ黒に塗り潰され。
そのまま、咲羽は意識を失った。
𝕋𝕠 𝕓𝕖 ℂ𝕠𝕟𝕥𝕚𝕟𝕦𝕖𝕕...
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✯𝕃𝕪𝕣𝕚𝕔✯
❄️傷ついたときは
そっと包みこんでくれたらうれしい
🎐転んで立てない時は
少しの勇気をください
❄️想いはずっと届かないまま今日も
🎐冷たい街でひとり
ここがどこかも思い出せない
🎐❄️星屑のなかで あなたに出会えた
❄️いつかの気持ちのまま会えたらよかった
🎐❄️戻らない過去に 泣いたことでさえ
🎐生まれ変わって明日を
🎐❄️きっと照らしてくれる
✯ℂ𝕒𝕤𝕥✯
♓︎Pisces #星巫女_咲羽
🎐咲羽(cv.おとの。)
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♒︎Aquarius #星巫女_雪涙
❄️雪涙(cv.海咲)
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₊*̥素敵な伴奏をありがとうございました☪︎₊*˚
➴Miinya様
https://nana-music.com/sounds/03d0165c
✯𝕋𝕒𝕘✯
#Astraea #星巫女
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