フィクサー
₊*̥𝙰𝚜𝚝𝚛𝚊𝚎𝚊☪︎₊*˚
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__𝕌𝕟𝕥𝕚𝕝 𝕥𝕙𝕖 𝕥𝕚𝕞𝕖 𝕠𝕗 𝕤𝕒𝕝𝕧𝕒𝕥𝕚𝕠𝕟.✩₊*˚
₊*̥┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈☪︎₊*˚
いつも通りに、なんて言葉を使えるくらいには星天界への召喚も慣れてきた頃。
柊葉はいつも通り、星天界を訪れた。
何度来ても、目の前にどこまでも星空だけが広がっているこの光景には違和感を覚える。
年少の星巫女が綺麗だね! なんて話しているのを見て、虚しくなったことがふと思い出された。
儀式の時間まで、何もない星天界ではすることがない。
この落ち着かない星空に囲まれているよりは、自室にいる方が幾らかましだと思いドームを離れかけ。
階段を下りた先で、長い緑の髪を持つ星巫女――刹那の姿が目に映った。今此処にいるのは、柊葉と彼女の二人だけらしい。
以前も、こんな状況に陥った。その時に言われた言葉は、まだ柊葉の心の奥底にこびりついて離れてくれない。
それからも何度か顔を合わせる機会はあったが、そばに他の星巫女がいたこともあって直接話をすることはなかった。
柊葉が星天界に来ていることに気付いたのだろう、刹那の薄い紫が射竦めるように柊葉の方を向いた。
笑顔を作らなければ。
縛り付けられた義務感に、そう思わされた。
慣れきってしまったはずの作り笑いなのに、どうしてか今日は上手く笑える気がしない。
それでも。上手く笑える気がしなくても、否定されても、柊葉は表情を取り繕うことを止められなかった。
これは、柊葉に残された最後の自衛手段だったから。
本当の自分を守るために編み出した、唯一の方法だったから。
守りたかったものはとっくに無くなってしまって、ただ残ったのは抜け殻のような笑顔だけ。周囲の求める自分を演じるためだけの、外せなくなった仮面だけ。
それでも――それでも柊葉は、演じ続けるしかなかった。
柊葉はそうすることでしか、生きていけなくなってしまったから。
いつもと同じ取り繕った笑みを浮かべ、目を合わせないように刹那の側を通り抜ける。
今彼女と話してしまえば、今度こそ、自分の仮面を剥がされてしまいそうだったから。
だから、家のことがあるとはいえ、出来るだけ関わらないようにしようとした。なのに――
突如、強い力で右手を引っ張られた。後ろへ引き戻される形になり、バランスを崩しかけ――何が起こったかを把握する前に、刹那と至近距離で目が合った。少し俯いた先に映る淡い紫から、目が離せなくなる。
その綺麗な瞳に、自分の嘘を全て暴かれる気がした。糾弾されている。断罪されている。
逃げようものにも、身体が動かなくて――ようやく、壁に押さえつけられているのだと気が付いた。
「その作り笑いをやめろ。不快だ」
冷たい声が鼓膜を震わせる。その声は、はっきりと彼女の本音を物語っていて――
今自分がどんな顔をしているのか、到底想像もつかなかった。
だけどきっと、仮面は剝がれてしまっているのだろう。自分が今笑っていないことは、何よりも自分自身が分かっていた。今湧いた不安も戸惑いも恐怖も、きっと偽物ではない。
偽物でない感情に触れるなんて、いつ以来だろうか。
苦しかった。上手く息が出来なかった。緩やかに首を絞められているかのように、少しずつ呼吸が出来なくなっていく。出ることの叶わない水の中で、必死に藻掻いているみたいだった。
柊葉が表情を崩したことに満足したのか、不意に刹那が手を放した。身体から力が抜けそうになり、壁に倒れかかる。解放されたはずなのに、まだ息は苦しかった。
「協力しろ」
何事もなかったかのように踵を返した刹那が、そう声を投げかける。
「は……?」
思わず声が漏れた。
柊葉の声に振り返った刹那からは、何の表情も読み取れなくて。
彼女の言動のひとつひとつに情緒をかき乱されているのが馬鹿みたいに思えてくる。
真っ直ぐに柊葉を見据えた刹那は、心底忌々しそうな声で、こう言い放った。
「以前此処に来た際、地下へ続く階段のようなものを見つけた。鍵は見つからなかったが……その代わりに、僅かな血痕を見つけた。現実世界でそれについて調べたが、中央政府の人間に――お前の父親に邪魔をされた。だから、お前が協力しろ」
あまりの情報量に、思考が停止しそうになる。
星天界の地下? 確かに建物の構造上、知っている場所の他に空間があってもおかしくないとはいえ――血痕? 調査の邪魔をされた? 柊葉の父に?
どう答えるのが最善か、何も分からなかった。
柊葉の義務は、家のために行動することだ。それ以外の生き方を、柊葉は知らない。けれど。でも。
そんな柊葉を見て刹那はわざとらしく溜息を吐き、一言だけを告げた。
「……星天界は、星巫女以外の者には監視されない。これは絶対だ」
その言葉を聞いて、一瞬、呼吸が止まった。
刹那は言外に、星天界では何をしても監視されない、咎められない。だから家を裏切れ、と言っているのだ。
柊葉が父親と母親を嫌っていることを知っていて、だけど逆らうことが許されていないと知っていて、そんな台詞を吐いたのだ。
半ば脅迫のような方法で、柊葉の仮面を奪っておいて。
その上で、柊葉が逆らえないことを知っていて、協力を請う、だなんて。
何も答えない柊葉から背を向け、刹那は星空から離れるように歩き出した。
まるで、柊葉が着いてくることを知っているとでも言いたげに。
刹那は既に、全てが自分の思い通りに運ぶと確信しているのだろう。
否、確信してから行動している、と言った方が正しいか。
どちらにせよ、柊葉には彼女の言葉を断る理由を見つけられなかった。
何も知らなかったふりをして、笑顔を張り付けたまま生きていれば、きっとその方が楽なのに。
――なのに、柊葉はそうすることを選ばなかった。
掌の上で操られていると知ったところで、不思議と嫌な気はしなかった。
柊葉がこう感じるだろうことですら、見透かされているのかもしれないが。
刹那は振り返ることなく、淡々と前へ進んでいく。
偽物の笑みを消したまま、柊葉は彼女の後を追った。
𝕋𝕠 𝕓𝕖 ℂ𝕠𝕟𝕥𝕚𝕟𝕦𝕖𝕕...
₊*̥┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈☪︎₊*˚
✯𝕃𝕪𝕣𝕚𝕔✯
⚜️今日までの記憶の全部を
消してしまう時まで眠れない
⚡️あしたから生きていく
自分の身代わりが欲しくて堪らない
⚜️大丈夫と言わせて
後から君のせいにさせてはくれないか
⚡️今更意味ないから
後から君のせいにさせてはくれないか
⚜️⚡️出来ない約束を
⚜️とうとうと溢れる一言一言ばかりに
脳を奪われるくらい
⚡️意味を成せない 何も出来ない
⚜️見えない ⚡️逃げたい
⚜️飛びたい ⚡️やめたい
⚜️⚡️逸らせない
⚜️⚡️だから 沈め 沈め
這い上がれないほどまで
飽きるまで 落とせ 落とせ
救い垂らす時まで
✯ℂ𝕒𝕤𝕥✯
♌︎Leo #星巫女_柊葉
⚡️柊葉(cv.希咲妃)
https://nana-music.com/users/8069295
♐︎Sagittarius #星巫女_刹那
⚜️刹那(cv.酢飯いくら)
https://nana-music.com/users/8640965
₊*̥素敵な伴奏をありがとうございました☪︎₊*˚
➴Kris様
https://nana-music.com/sounds/04a1efbf
✯𝕋𝕒𝕘✯
#Astraea #星巫女
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