深海少女
₊*̥𝙰𝚜𝚝𝚛𝚊𝚎𝚊☪︎₊*˚
深海少女
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__𝕊𝕙𝕦𝕥 𝕦𝕡 𝕓𝕖𝕪𝕠𝕟𝕕 𝕥𝕙𝕖 𝕕𝕒𝕣𝕜𝕟𝕖𝕤𝕤.✩₊*˚
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星巫女に選ばれた日――死のうとして死ねなかった日から。雪涙は生きる意味を見いだせないまま、父親に引き取られただ無為に日々を送っていた。
姉も妹も父も、雪涙に対しての態度はよそよそしい。距離を置かれている。
今の雪涙は、厄介者で腫れ者だ。あそこで死んでいればよかったのに、と何度思っただろうか。自分の意思では辞めることの出来ない星巫女という制度を心底恨んだ。
もしあの日星巫女に選ばれていなければ。雪涙は今頃、お母さんと会えていただろうに。きっとお母さんは、優しく雪涙の頭を撫でてくれていただろうに。
今の雪涙は、ひとりぼっちだ。誰にも存在を望まれず、求められず。ただ「星巫女である」がために、無意味に息をしている。
どれだけ星巫女というシステムを嫌っていようが、選ばれてしまったものは仕方がない。強制的な召喚に拒否権はなく、星天界に辿り着いたら役目を果たさないといけない。
今日も雪涙は、もはや日常となった浮遊感と一瞬の暗転と共に、星天界に呼び出された。
ここに来たのは数日ぶりだったけれど、前回来た時とほとんど変わっていなかった。変わっているとすれば――その場にいる星巫女のメンバーくらいだろうか。前は双子の星巫女と青髪の星巫女がいて、お互い無干渉なまま一言も話さずに儀式を終えたのだが――今、雪涙の目の前には、最初に召喚された時に隣に座っていた星巫女の少女がいた。名前は確か、灯莉、だったか。中学三年生で、雪涙よりひとつ年上だったはずだ。身長は雪涙より少し低く、幼い顔立ちで、紫の髪をツインテールで結っている。
「雪涙ちゃん、だよね?えっと……初めまして、でいいのかな?私は山羊座の星巫女、灯莉っていうんだ!よろしくね!」
笑顔と共に話しかけられた。まさか声をかけてくるなんて思ってもいなかった雪涙はすぐには言葉を返せず。言葉に詰まったままおずおずと自分の名前を口にするので精いっぱいだった。「会話」という行為自体が久しぶりで、久々に聞いた自分の声は頼りなさげに揺れていた。
どういう風に会話を続ければいいのか分からなくて、沈黙が場を支配する。雪涙が上手く話せなかったからだろうか。灯莉は折角こんな雪涙に対して声をかけてくれたのに。申し訳なかった。
「……あのね」
灯莉が突然切り出した。私のお母さん、入院してるんだ。
続いた言葉に息が詰まった。
灯莉の口調は、さっきと同じように明るくて、だけど声を発した彼女は俯いていた。
「お母さんは頑張ってるから、私だって頑張らなきゃって思ってるんだけど……寂しい、なあ……」
星空に呟くように放たれた言葉は、今まで雪涙が聞いたどんな言葉よりも真っ直ぐだった。雪涙は、何を言えば良いのだろう。何かを言いたいのに、その想いを上手く言葉に出来ない。自分の無力さにもどかしさが募る。
「ごめんね、いきなりこんなこと言っちゃって!私、先輩なのにね…?」
何の言葉も口にしない雪涙が困っていると思ったのだろう、灯莉はそう言って笑って見せた。そうじゃないのに。言いたい言葉が雪涙の中で空回ってちっとも出てこない。
だから。その小さな手を、そっと取って優しく握った。昔、お母さんが雪涙にしてくれたみたいに。
「私も」
言葉が零れた。こんなことを言いたいわけではないのに。気付けば声を発していた。
「……私も、お母さんが好きだった。今は、もう会えない。いなくなった。私はお母さんのところへ行きたかった」
俯いていた灯莉が顔を上げた。驚いたように、こちらを見ている。これ以上話すべきではない。そう分かっていても。灯莉がゆっくり頷いてくれるから。ぽつ、ぽつと口にした言葉は止まらなかった。
「私が迷惑だったのかもしれない。私がもっとちゃんとしていればよかったのかもしれない。そんなことを思ったけど、今更なにを思っても全部無駄だった。お母さんは、帰ってこなかった」
言葉を少しずつ発するたびに、悲しくて苦しくて、胸が張り裂けそうになる。なのに涙は一滴も零れなかった。雪涙はいつもそうだ。 お母さんがいなくなった時でさえ、泣くことが出来なかった。
「雪涙」という名前はお母さんから貰った贈り物だから大切にしているけれど。それでも皮肉だなと感じてしまう。
何と言葉を続けて良いか分からず、自然と顔は俯いていた。そのまま視線だけを向かいに座っている灯莉に投げかける。
雪涙の乾いた瞳に映る灯莉の目から、涙が伝っていた。
どうして泣いているのか、とか、泣かないで欲しい、とか。そう言った言葉を告げることは簡単だった。
だけど。雪涙は、そうしなかった。灯莉の紫水晶の瞳から伝う透明な涙は、確かに雪涙の心を軽くしてくれた。心に溜まった重く暗いなにかが、星闇に溶けて消えていった気がした。
だから、代わりに一言だけ告げた。ありがとう、と。
その言葉に小さく頷いた灯莉は、真っ直ぐに雪涙を見据えてこう言った。
「……雪涙ちゃんは、ひとりじゃない」
はっきりとした、芯の強い声だった。雪涙よりも年上のはずなのに、幼い印象を受ける声。
その言葉は雪涙の心に、真っ直ぐに染み渡った。昨日までの雪涙なら、否定していたはずの言葉。お母さんがいなくなった日に、周りから何度か言われても、何も響いてこなかった空っぽなはずの言葉。
だけど、灯莉の言葉は、不思議と雪涙の閉ざされた世界の扉を開けた。
――こんな雪涙でも、もう一度、誰かに愛されてもいいのだろうか。
𝕋𝕠 𝕓𝕖 ℂ𝕠𝕟𝕥𝕚𝕟𝕦𝕖𝕕...
₊*̥┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈☪︎₊*˚
✯𝕃𝕪𝕣𝕚𝕔✯
❄悲しみの海に沈んだ私 目を開けるのも億劫
🎈このままどこまでも堕ちて行き 誰にも見つけられないのかな
❄どこへ向かい、何をすれば? ふと射し込む一筋の光
🎈手を伸ばせば届きそうだけど 波に拐われて見失った
❄あれは一体なんだったのかな 🎈あたたかくて眩しかったの
❄無意識のカウンターイルミネーション
🎈嘘つきは誰?(※Telephone)
🎈❄深海少女 まだまだ沈む
暗闇の彼方へ閉じこもる
深海少女 だけど知りたい
心惹かれるあの人を見つけたから
✯ℂ𝕒𝕤𝕥✯
♑︎Capricorn #星巫女_灯莉
🎈灯莉(cv.瑠莉)
https://nana-music.com/users/6276530
♒︎Aquarius #星巫女_雪涙
❄️雪涙(cv.海咲)
https://nana-music.com/users/579307
₊*̥素敵な伴奏をありがとうございました☪︎₊*˚
➴bataojisan様
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✯𝕚𝕝𝕝𝕦𝕤𝕥𝕣𝕒𝕥𝕚𝕠𝕟✯
たぬ様 @wotanu_nana
✯𝕋𝕒𝕘✯
#Astraea #星巫女
#深海少女 #ゆうゆP #初音ミク
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