文字のない聖書と――。【朗読】
演者【ましゅ】台本【希鳳】
文字のない聖書と――。【朗読】
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目を覚まして、カーテン越しの太陽に一瞥し、背伸びをして机に向かう。パソコンの電源を入れ、いつも通り煙草を咥え、おもむろに手を伸ばした先にフリントの切れたオイルライター。軽い舌うち。
机の奥に眠っていた、随分前のおまけのライターを引っ張り出して加えた聖書に火をつけた。
ジリジリと音を立てて灰になっていく煙草の先端を見つめ、目に入った煙に顔をしかめる。軽い舌うち。
書きかけの小説の続き。昔見た、夢の名残。
燃え尽きた煙草と、火の点かないライターと。
その部屋に有った全ての要素が、腐りきった自分を表しているようで。
どうしようもなく空虚で、何もなくて。もう続かない物語を見つめ、吐き出したため息は白く、濁っていた。
いっそこのまま灰になれたなら、楽になれるのだろうか。
体に悪い聖書は、ただ燃え尽きるだけで。
何も答えてはくれなかった。
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