泥中に咲く
💐ノエル・ラスペード💐
泥中に咲く
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ミオを新しい家族の元へ引き渡した。
以前から何度もうちの孤児院へ訪れてくれていて、その度ミオのことを気にかけてくれていた優しい老夫婦だった。
これで彼も、幸せになれる。
あの家族と一緒なら、きっとミオは大丈夫だ。
「さぁ、俺も準備をしよう。」
自分以外誰もいない広い孤児院の中、そう呟いた。
もう、疲れてしまった。
一刻でも早く、全てを投げ出して楽になりたかった。
両親も、弟も、次々に自分の前から居なくなる。
周りには助けてくれる人も、頼れる人もおらず、ずっと独りで生きてきた。
自分と同じ様な思いをする子どもが少しでも居なくなるように、と孤児院を開いたのだが…
「…俺のことは、誰が救ってくれるんだ。」
子ども達と暮らした日々は、楽しかった。
笑いもしない、人形のような俺のことでも、彼等は慕ってくれた。
最後まで、無責任な人間だと思う。子ども達にも、申し訳ないことをした。
特に、ミオにはもう合わせる顔がない。
ミオ・ルーゼル。孤児院を開いて、初めに引き取った子だ。
両親を亡くし身寄りもなかった彼を、俺が引き取ったのだ。
大人しく引っ込み思案な性格で、俺以外の人にはほとんど懐かない。
それが可愛くて、どこか、弟に似ていて。本当の家族のように愛していた。
「ノエル兄さんは、僕のそばからいなくならないよね…?」
頭に、離れる前日のミオの声が響く。
…今日はもう眠ろう。疲れているんだろう。
明日には、全て終わるんだ。
ドンドンドンッ
その時、玄関のドアを激しく叩く音が聞こえた。
こんな時間に、誰だ?
「〜〜ん!〜〜る…さん!!」
分厚いドアの向こうから、微かに声が聞こえる。
ドアを叩く音はやまない。寧ろ、激しさが増すばかりだ。
警察を呼ぼうか悩んでいた時、その声が聞きなれたものだということに気づく。
急いでドアを開けると、
「ノエル兄さんっ!!!」
手から沢山の血を流したミオが、泣きながら倒れ込ん来たのだ。
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ヒガンバナ💐ノエル・ラスペード ソロ「泥中に咲く」
砕けた心が濾過(ろか)できなくて
涙はそっと枯れてゆく
もう一粒も 流れなくて
可笑しいよねって 笑ってる
酷烈な人生
あなたを遮る迷路の荊棘(けいきょく)
濁世(じょくせ)の闇立ちはだかる
君は誰よりも憂う人
だから今 僕らは溺れかけてる寸前だろう
正しい呼吸に救われた
今はいつか死ぬために生きてるだけだ
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💙ノエル・ラスペード (cv:水葬)
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