レディーレ
バルーン/キャプション:マツダイラ
レディーレ
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#七色連歌 #蔵がりツクモ
刹那:無銘
ひとつ、面白くない話をしてやろう。
ある一振りの刀が在った。特段可もなく不可もない刀であったが、それなりに斬れ味は悪くないようでな。様々な者の手に渡り、握られた。時には腰に下がるだけの物であり、時には敵を斬る獲物になり、時には持ち主の死を看取ったそうだ。初めの頃はそれなりに思うことがあったが、気付けばどうとも思わなくなった。こころがなくなったんじゃあねえ、そういうものだと思うようになったんだと。人はかくあるもの、物はかくあるもの、自らも、そうあるものだとな。世ってのは「そういうふう」に回ってるもんなんだと、気付いちまったわけだ。
まあ、だからなんだ、ってわけじゃあねえ。刀は変わらず、刀であるだけさ。誰かの腰に下げられ、時に肉を斬り、時に死を看取り、時に飾られるだけのモノと化す。それが定めってもんだ。人に作られた以上、物は飽くまで人の意思に追いずるだけ。そこに何が在ろうと──どんなこころが在ろうとも。
さあ、話は終いだ。俺みてえな埃被りに語り部をやらせるんじゃあねえよ。
ん? 刀のいまの所在? さあて、そこまでは俺も分からんね。何処かで物としてその命を果たしちまったか、──もしくは、今でも何処かの蔵の隅で、何時かの思い出の箱を開けてるのかもしれないかもな。
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