【和風台本】無知を知る玉兎【一人声劇】
玉兎【ナミ】言葉と音楽【織】
【和風台本】無知を知る玉兎【一人声劇】
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ご覧くだされ
今宵(こよい)は、見事な満月にございます
両の手に収まるほどの、小さな鏡
この地より見ゆる私の故郷(こきょう)は
人の目に、斯くも(かくも)遠く映るのですね
忘れかけておりました
花の色
人々の声音(こわね)の重なりや
触れた肌の温かさを、
終生(しゅうせい)あの鏡の中に暮らしておったら
私は、知る由(よし)もなかったのでしょう
ですが、それと同じく
貴方(あなた)と永遠(とわ)に心交わせぬ(かわせぬ)苦しさも
知ることはなかった
この国では
好む時に好むところへ
己(おのれ)の足で、赴く(おもむく)ことができても
決して得られぬものがありましょう
人の世は難しい
斯様(かよう)に無知な玉兎(ぎょくと)には
人の心は、未だ(いまだ)遠きものにございます
〜おまけのお話〜
月の都に仕えていた玉兎の白虹は、毎日が大忙しでした。神々の食事の用意から身の回りの世話まで、全て兎の兄弟たちで行わなくてはなりません。
ある時湖に水を汲みに訪れると、水面の底の方で何やら楽しそうに踊りうたう影たちが。夢中になって覗き込んでいると、白虹はうっかり水の中へ落ちてしまいます。
意識を取り戻すとそこは、人間たちが暮らす地の国の都でした。朝日に手をかざした途端、真っ白な毛は朝靄となって消え、熱を宿した五本の指が現れたのです。
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