D56 シオン
紫苑本丸
D56 シオン
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#紫苑本丸
今日は夢見が悪い。
悪夢を見た…というよりあの日のことが頭の中で再生された。
最近本丸中から元気が無くなった。
今剣は桜の件以来来なくなり、堀川も昨日のことがあってから明らかに元気がない。
まぁ、堀川はあれを初めて見た訳じゃないだろうが…どれもこれも全て私のせい。
私はここに何をしに来たのだろうか。
「生まれ変わるため。」
そう、新しく生き返る為に来た。
今の私はまた繰り返そうとしているだけ。
「変わらなきゃ…いけない。」
私によくしてくれた人が、私のせいで苦しむのは間違っている。
そんなことぐらい私にも分かる。
分かっているけれど…怖い。
変わるのが怖い、知ってしまうのが怖い。
それを考えることもしたくなくて審神者業に逃げようと、書類に目を移すと見知らぬ手紙が紛れ込んでいた。
「拝啓
暦の上では夏となりましたが朝夕には春の風の冷たさが感じられるこの頃です。
審神者となってから一ヶ月以上経ちましたが、慣れましたでしょうか?
話が変わりますが、本日はシオン様にお伝えすることがあり政府から…いえ、個人的に文を出させて頂きました。
近日、シオン様の本丸に政府から刀を一振送らせていただきます。名を膝丸、良い奴だから仲良くしてやって欲しい。
それはさておき、審神者になってから何か変わったことはあっただろうか?
焦らずとも少しずつでいい、自分のことを語ろうとしなくていい。
自分を飾ろうとしなくても彼等は何も言わないし責めない。
もう何も恐れなくていい…彼らを信じて欲しい。
大丈夫…、悲しみは続かないから。
でも、無理だけはしないで欲しい…大丈夫、君のことは俺が必ず忘れることはないから。
美濃国本丸番号60番 審神者シオン様
担当者 イツキ」
悲しみは…続かない。
前も彼が言っていた言葉。
どこか言い聞かせているようにも思えるそれを…今は信じてみたいと思った。
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