珊瑚に願いを
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珊瑚に願いを
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思いの外、報告書が早く終わった二人。どちらかが誘うでもなく、お気に入りの丘に行き、ポーっと空と海を眺めている。
「…なんか…何となくですけど…皆さん以前より仲良くなってませんか?特に相部屋の二人はすごく仲良くなってるような…」
「私も思ってた!恋人同士みたいだよね!…って!それを言ったら、シノちゃんと私も恋人同士…?」
びっくりして見つめるシノを後目に、うーんと空を仰いで顎を指でさしながら考えるちぇり。
「素敵!!男の子だったら、きっとシノちゃんに恋をすると思うなー!!」
な、何言ってるの?!と言いながら、不思議とほっとするシノ。少し想像してみる…憧れの先輩じゃなくて、ちぇり君と並んでデート…きっと笑顔が溢れて楽しいデートになるだろうなぁ…
「シノちゃん…?あれ?思い出し笑い??」
は!何考えてるんだろ私!!真っ赤になりつつ、シノは慌てて話を変えた。
「あ、え、えっと…恋人と言えば…」
不意に浮かんだあの笑顔。綺麗なのに走り回るせいでボサボサの髪、いつもズレた眼鏡…。
「ニフ先輩って恋人居るのかなぁ…」
「ええ!!居るの!?キリエにずっと居るけど知らなかったぁ!きゃぁ!素敵だね!」
違う違うと静止するシノ。ちぇりの言うように、そんな話は聞いた事も無いし、実際どうなのかも知らない。ニフ先輩の恋人か…おっちょこちょいな先輩だから、優しい人だといいなぁ…。二人で勝手に素敵な恋人を想像して遊ぶ。妄想とはいえ、恋バナに興奮する小さな二人。つい盛り上がり声が大きくなったのだろうか、崖の下から太鼓の音と声がする。
「ハーウェ!ハーーウェ!!あー!やっと気づいたぁー!可愛い子二人で楽しそー!今そっち行くねー!待っててよー?」
太鼓を小脇に抱えたアラタだった。長い腕をブンブン振り回して、2人の話題に興味津々だ。暫くしてアラタは丘を登って2人の元に現れた。
「…ふんふん。あー、僕の事振ったあの眼鏡の理事会オネーサンかぁ。君の先輩なんだねー?」
え!振られたの!?と驚いて耳を逆立てるちぇりに、バトン観光の話だよ!と突っ込むシノ。アラタはヘラヘラ笑いながら話を続ける。
「もしオネーサンに恋人がいたらダメだけどぉ…この島に恋の御守りがあるんだぁ。探してみるぅ?」
恋の御守り!?二人は色めきだった。元々、悪神と人間が結ばれて出来た国、ロマンティックな寓話なら島に沢山あるのだそうだ。
「この島の浜辺に時々綺麗な珊瑚が流れ着くんだ。波に長い間もまれて綺麗に丸くなった珊瑚!僕の御先祖様がランダ神に愛の証にプレゼントしたんだよー。それ以来、この島に着いた珊瑚を大事に持っていると、珊瑚が運命の人を呼んでくれるって信じられてるんだぁ。もし好きな人が見つかったら、その珊瑚をあげると結ばれるんさね!素敵でしょお?」
珊瑚が恋人を呼んでくれる…!二人は目を輝かせて、早速珊瑚探しに向かった。
「なるべく綺麗なピンク色だよー!頑張ってねぇ」
バトンの浜は全て美しい白い砂だ。異物があればとても目立つ。まして赤や桃色の珊瑚なんて…と甘く見ていたのかもしれない。そもそも、バドン周辺には宝珊瑚は成長しない。遠い海から稀に流れて来るのだそうだ。まして運の悪い事に彼女達の前に、珊瑚を探せと遣いを受けた2人組が拾っていたのだ。炎天下のバドン、照り返しの強い砂浜…白のお下げも栗色の耳も、暑さにやられ頭を垂れている。
「見つけた!!…ああ…なんか白い…とてもピンクって言えないなぁ…うーん」
「ああ!あったよぉ!!…くーん、でもこんな小さい珊瑚じゃ無くしちゃうよねぇ…」
お土産に渡せる物で、さらに色の指定まである…思った以上の大仕事だ。見つからずに落ち込むシノにちぇりは二人手分けして探そうと提案した。せっかくのバカンスで別行動なんて!と初めは渋ったが、島の全ての砂浜を見るにはやむを得なかった。集合時間を決めて、今いる浜辺に戻る事を約束した。
傾いた太陽が世界を臙脂色に燃やし尽くす頃、疲れ果てながらも嬉しそうなちぇりが尻尾を振り回しながら待っていた。そこに同じく疲れ果てたシノが現れた。ちぇりは待ちきれず叫び出す。
「シノちゃぁん!!あったよ!綺麗なピンクの珊瑚!!見てみて!!」
よろよろと微笑むシノが手を開くと、美しいピンクの珊瑚があった。あ…と声をあげるちぇり。二人とも頑張って見つけ出していたのだ。
「そ、そっかぁ!なら後輩のシノちゃんのをあげようよ!きっとそれがいいね!」
「いえ!ちぇりちゃんの方が少し大きいし、せっかく見つけたんだから、ちぇりちゃんのにしよう」
お互い譲り合い、何とも言えない空気になる。2つあげちゃう?それは恋の御守りとして良くないような…むむぅ!と二人は腕を組んで悩み出す。ザザン!大きな波と共に、二人の間に何かが流れ着いた。
「わっ!可愛い!!1番綺麗なピンク色!」
「すごい、たまたまこんな形になるなんて…!」
それは小さいが美しい桃色のハート型の珊瑚だった。こんなに探したのに、あっさり流れてくるなんて!二人は笑ったが、無論この珊瑚を土産にする事にした。既に見つけた珊瑚は、可愛い二人の恋の為、大切に持ち帰った。
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「ハートの珊瑚」を入手しました。
キリエに帰った際、商店街で二人のどちらかが使用を宣言すると、クエストが発生します。
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