ここはスタートライン
嵐(ARASHI)
ここはスタートライン
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心地よい夜風、子守唄のような漣の音、月夜。
「…寝れん!ははは…寝れない…」
はぁー…長い長い溜息をついた。ゆっくり体を起こし、足をベッドから下ろす。静かに同じ部屋で眠るフィーを見やる。…良かった、私の小言で目を覚ましてはいないようだ…。以前も私によりかかって眠っていたっけ…。記憶がみりんの胸をキュッと締め付けた。特に今はこの様な記憶は胸を高鳴らせてしまう。…ああ、寝れない、寝れないんだ…今なら寝れなくてとランプを灯し続けていたレオの気持ちが痛い程わかる。フィーとの海、月の道で羽ばたく彼女、レオの突然のプロポーズの相談…何もかもが自分の胸を高鳴らせて、目を冴えさせる。うっかりすると叫び出しそうな胸を抑えて、またゆっくり息を吐く。
「ああ…ああ…なんだろうな、この気持ち…幼かったあの日も、軍師として働いていたあの時も…こんな気持ちになった事がない。ソワソワして、鼓動が早まるのに…なんだか嫌じゃない。走り出したい程の衝動が暴れてるんだ」
窓から見える月を見上げて言葉をなげかける。月は何も答えずに優しい光を届けるばかり。みりんは静かに目を閉じた。
…幸せって静かなものだと思っていた。大好きな兄の様に穏やかで、厳しくも優しい家族が住む家のように淡々と過ぎる…心を満たすモノ、この気持ちが幸せだと思っていた。心荒ぶるのは未熟だから、心燃え上がるのは敵前だから…そう思っていた。でも今は違う。心が揺れ動いて、沢山の記憶や想いが自分の中を忙しなく駆け回るのに、それにワクワクドキドキして、笑顔が止まらなくなる。ああ、明日はどんな日になるのだろう?早く来ないかな。明日はフィーや仲間と何を話そう、レオにどんな協力をしよう…未来は…未来は分からないけど、すごく明るい気がする!心を熱く満たす…この気持ちは、きっと幸せなんだ。
「…おはようございまぁ…ふぁあ…早いですね…みりんさん」
やっと待ちわびた太陽が水面から顔を出し始めた。まだ他の人は起き出していないであろう早朝、早起きを自覚しているフィーは、既にベッドから離れているみりんに少々驚く。
「おはようございます!フィー殿。やっと朝が来ましたね!なんだか考え事をしていたら一睡も出来ませんでした!少し走って来ます!」
…え?…んん?!寝惚けた頭でみりんの言葉を反芻したフィーは時間差で驚いた。考え事して全く寝てないだって!?何か悩み事だろうか…心配になったが、みりんはこの上なく爽やかな笑顔で颯爽と部屋を出ていった。全く状況を飲み込めていないフィーはただポカンとドアを見つめていた。
益々天へと登る朝日は海に反射して、美しい島の景色を幻想的に輝かせていた。誰もいないビーチで走るみりん。体を思い切り動かして雑念を祓った頭で、ゆっくり考える。恋する気持ち、人生を賭けて大きな決断をしようとするレオ、キリエの長い歴史で皆を支える親友のさとら…。グルグルと思考と理想と思い出が頭を埋めていく。私に出来ることは?戦う事ばかりのこの私が、出来ることは…
頭がいっぱいいっぱいになり、堪らず足が止まった。ザザーン…海の音だけが響いた。みりんはふと海に向かいしゃがみ込んだ。手を伸ばして海に触れると、瞬く間に手の周辺が凍った。魔法なんて使ってないのに。心の乱れのせいだろうか?みりんは覗き込んだ。氷に自分の顔がうつる。
『自分は何がしたいの?』
…!!!みりんは体を引いた。氷にうつった自分がそう問いかけたように見えた。恐る恐る氷を覗き込んだが、鏡のように自分をうつすばかりだった。やがて氷は溶けて砕けた。
「…私がしたいこと…」
みりんは呟きながら立ち上がった。
「私は…私は、幸せになる応援をしたい!私は力になりたいんだ!」
決意の様な響きを海に放つと、みりんはまた走り出した。もう頭の中は何をするかを理解している。
「皆!どうか私の話を聞いて欲しい!!」
みりんが宿に着く頃には既に朝食の為、皆が大広間に集まっていた。さとらだけは宿の手伝いであろうか、運良くその場にはいなかった。みりんはずんずんとレオの元へ歩み、自分の考えを告げた。レオは両手で顔を覆ったが、やがて息を吐くと、みりんの横に立ち上がった。
「皆!私の願いはキリエとキリエの民の幸せだ!どうか力を貸して欲しい!その為には、皆がこの事を知るべきだと考えた。皆でこの任務を遂行していきたい!レオ殿だけではきっと皆の力を借りるのは難しい。だから、私からもお願いしたい!」
かくして、みりんの助力と大体的暴露により、プロポーズ大作戦は決行される事となった。無論、この話に意義を唱えるものなどいなかったのだ。
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プロポーズ大作戦の協力をしてください。
尚、このアンサーは「アニソン」で答える事。
又、提出時に次の受注者の指定(無記名ならフリーと見なす)、受注者へのリクエストを記入する事。
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