芸者 ﹣予告﹣
林原めぐみ
芸者 ﹣予告﹣
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分かんない の 、 仕合せ って 何 。
これは異国の文字である。
私にとって、頭の中で訳しながら読むことは、
何ら難しいことではない。
少しザラザラした紙だ。
一枚一枚丁寧に積み重ねてある。
私はカンテラを文机と思しきものに置き、
紙を持ち上げた。
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一週間。
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此れ程に奇妙な1週間があっただろうか。
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私には、解らなかった。
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別に帰りたいとも思えないし、
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淋しいとも思えないので、
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私はもう少し此処に居ようと思う。
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恐らく、これは日記なのだろう。
黄ばんだ紙の一枚一枚に、
涙の跡があった気がした。
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逢いたい。
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まるで私の心はそう訴えているようだ。
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もう戻らないと決めた。
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戻れないと思っている。
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致し方ない事だと、
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私は解っている筈だ。
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もうあの時の私はいないのだから、
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もう少し楽になりたい。
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それなのに、どうして。
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日記はここで終わっている。
独特な字体のせいか、
どこか気味の悪さを感じた。
空には雲が集まってきている。
部屋もますます暗くなり、
少しだけ、何か不吉なものを想像してしまう。
何処かから視線を感じた。
私はカンテラを持ち、部屋を後にした。
思い返してみれば、
あの人は、几帳面な人だった。
待って いた 。
信じて いた。
✍︎ ??
┌ ┐
- 予 告 -
' 薄 ら 氷 心 中 '
芸 者
└ ┘
#薄ら氷心中
#今宵秘密の狩庭で
#庭の狩人ー芸者ー
#第五人格
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