三日月ファンタジー
SOARA/キャプション:想空葵
三日月ファンタジー
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#七色連歌 #出席番号ゼロ
久藤 碧:一慧
夢を見た。
あの高校時代の夢。
未来も過去も後悔も希望も
全てを置いてきたあの時の夢。
あの日の朝、
いつも通りの日が来ると思ってたんだ。
けど、それは叶わなかった。
夢を辿れば、靴紐がやたら解けたり、
黒猫が目の前を通り過ぎたり…なんてことを思い出す。
虫の知らせ…か。
はは、そんな小さな声じゃ気づかねぇだろ。
もっと大きな声で聞かせてくれよ。
ボーカルとして鍛え上げたその声量、
ここで生かさなくてどうすんだよ。
なんて、今更思っても後の祭りか。
過去は変えられない、
どんだけ後悔しても何も変わらねぇ。
わかってんのに、それと向き合えない
今の俺が嫌いだ。
…そんな後悔ばかりだったからか?
今、お前が目の前にいるのはよ。
…見てられねぇってか?
…幻想に語っても無駄か。
言葉なんて喋っても全部、
俺の都合に合わせたものしか出ねぇよな。
俺はよ、お前がいないと生きてる心地がしねぇ。
けどよ、それでも生きてんだ。
…なぁ、こうは思わねぇか?
お前がしっかり俺の中で生きてるから、
俺は生きてんだ…ってさ。
俺はよ、今の俺が大嫌いだ。
夢に向かって努力するような純真さもなくしちまった。
自分を出すことすらできなくなっちまった。
それでもお前は俺に死ぬなっていうんだろ。
だからここにいるんだろ?
知ってる、お前は明るくて楽しそうな俺を見るのが好きだもんな。
だから、
この偽りすら、俺は愛してやる。
お前がいた時と変わらない世界を目指す。
なんて、昔の俺らしい言葉だろ?
少しずつでいい、あの頃と変わらない
前向きな俺を演じてやる。
いつか、演じてるって思わなくなるくらいに。
こんな思いを、これからの俺の物語を、
お前も見守っててくれよな。
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