声劇台本 「お薬」
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声劇台本 「お薬」
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「お薬」
薬は用法・用量を守り、服用しましょう。
名もない孤独が私の神経を痺れさせるようにそう呟いた。どうやらワンルームの小洒落た私の一室だけでは、自分の重すぎる愛を受け止めきれないようだ。
独り暮らしをした人なら分かるであろう行き場のない虚無感がしきりに話しかけてくる。
優しい嘘なら吐かないでくれ。卑しい真実なら黙っていてくれ。低気圧による圧迫感と共にその寵愛は止まることを忘れてしまっているようだ。
他の女を食べたいのなら、まず私を嫌いになってくれ。私のことが嫌いなら、早く他の女を持ち帰ってくれ。それが私の最初で最後の一生のお願いであった。
私と他の女を天秤にかけないでくれ。私と他の女が混じった肉欲は、早く分別してくれ。
女としての機能を失った私の唇も乾ききった真珠も、なぜかこの時だけは溢れだしていた。
君に舐め尽くされたはずの何かが。
ハッカ飴のような白さを持つラムネも、錆びた水道管から漏れだす涙も、私が眠るように愛する未来を静かに見守っていた。
(終)
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