凶夢伝染
ALI PROJECT/キャプション:上野
凶夢伝染
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#七色連歌 #出席番号ゼロ
相澤旭葵:陽継
大好きだった姉は、もうこの世にはいない。
その日はとても天気が良かった。雲1つない、綺麗な青空だった。
バサバサと、赤いプリーツのスカートを風が揺らす。
このスカートは「絶対似合うから」と、プレゼントしてくれたものだった。
上の白いレースのブラウスは、姉の恋人がこのスカートと一緒にプレゼントしてくれたものだ。
姉も彼も、優しい人だった。そして、とてもお似合いの2人だった。
小さい頃から2人を見てきたからこそ分かる。互いが互いを思い、寄り添い、そして愛し合っていた。
彼の話をしている時の姉は、それはそれは花が咲いたかのように綺麗に笑い、美しかった。
彼を好きなのだと、心から愛しているのだと。
そんな姉が大好きだった。
けれど姉はもういない。姉が愛した彼も、いない。
姉が訪れたこの場所に、きっとここから飛び降りたのだ思われる場所に、今、立っている。
のだ思われる場所に、今、立っている。
姉は一体どんな思いでここを降りたのだろう。ここを降りて、彼に会いに行ったのだろうか。
もしそうなら、これから、姉に会いに行くことは許されるだろうか。
優しい姉ならきっと、許してくれるだろう。
いつもみたいに「仕方のない子ね」と、笑いながら許してくれるはずだ。
「ねぇ、待ってて。今、会いに行くから」
ふわりと、体が宙に浮いた。
大好きだった姉は、会いに行くことを許してくれなった。
病室の白い天井には汚れが1つもない。
「生きててよかった」と泣き声を押し殺す両親の声は、どこか遠くに聞こえる。
左腕に刺された点滴から流れるものが物語っているのは…。
ああ、何故生きているの。
顔を覆った指の隙間から零れ落ちる涙は安堵のものではない。
何故未遂で終わらせてしまったの。
何故死なせてくれなかったの。
何故会いに行かせてくれなかったの。
姉のいない世界に、「生きている意味」なんかないのに。
誰もいない病室に響く小さな泣き声。
そんな声に引き寄せられてか、1つの白い影は目の前に現れた。
人の形をしたそれは、ゆっくりと近づき、何かを呟く。
『……に…イケ……イ…ケ…バ………ワ…カル…』
掠れた声で告げられたそれは、死んだ彼が通っていた高校の名だった。
大好きだった姉は、もうこの世にはいない。
そんな姉のいない世界生きる術を生み出せなかったけれど、今は生きる意味がある。
あれから調べて知った、この高校の七不思議。
『出席番号ゼロ』
彼が、その『出席番号ゼロ』であったこと。
一体彼の身に何が起きたのか、『出席番号ゼロ』とは一体なんなのか。
それがわかれば、きっと姉のような、負の連鎖を断ち切ることが出来るかもしれない。
絶対に、突き止めて、真実にたどり着いて見せる。
ねぇ、お姉ちゃん。真実に辿り着くことが出来たその時は、
『会いに行く』ことを、許してくれますか?
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