「飛空挺の秘密、解錠6」
秘密結社 路地裏珈琲
「飛空挺の秘密、解錠6」
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「残っ酷な、天使のように!」
ノリノリで粉チーズのマイクを片手に、キッチンの奥で歌って踊り、爆笑と歓声を掻っ攫う愛しの彼女に、僕は力いっぱいミトンを振ってファンサを求めた。
移動距離が長いとやることなんか早々に尽きてしまうから、みんなバカをやる事に長けてくる。ジッとしてると退屈を通り越して不安に駆られるし、珈琲の練習もしてみたけれど、ポタポタ落ちる雫でノイローゼを起こしそうだと思ったのは初めてだった。
それにしても可愛い。お茶目なキメ顔に、ステップ踏むと揺れる豊かな谷間。抱きしめたいと喉まで出かかって、気心の知れすぎた相棒に“やめておけ”と肘で小突かれる。いいじゃないか、何十年も待った初恋で、事実上の彼氏なんだから。年少の子に握手をして回るその3回に1回、こっちへ手を差し伸べちゃくれないものだろうか、って、顔でぼやく僕にチャンスが訪れた。
何かを踏んで、姐こちゃんが短く“あっ”と声を上げてよろめいたのだ。
「アンナ!」
咄嗟に人の隙間から進み出て、抱きとめたら、感じたことのない薄気味悪い振動で、僕は彼女を抱え飛び退く。キリキリと、歯車の音が増えてって、さっきまで食器棚だった場所が回転し始めた。その様子を、その場に居た全員がジッと見届けている。これは最近流行の、アレである。
「.......またスイッチ」
現れた新たな秘密に、驚きのあまりシンと鎮まり返ったホール。
抱えた弾みでうっかり、ちょうどいい位置に頬を埋めてしまった僕を、ぺちんと叩く音がよく聞こえた。
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“キッチンのアンティーク本棚”が解禁されました。
古代文字で書かれていて、まだ解読はできませんが、どうやら料理に関する本のようです。美味しそうな挿絵がたくさん載っています。
今後の展開に影響します。
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