届くことない彼の独白
ジョゼフ:雪乃 、クラウド:渚 真琴
届くことない彼の独白
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※記念日の手紙のネタバレを含みます。ご注意ください。
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いつからだろうか。
新しい生命が芽生えるこの季節に暖かさを感じなくなったのは。
ぬくもりを求め、待ち遠しいと思わなくなったのは。
目に映る全てが、単調で、酷くぼやけたものになったのは。
「クラウド、具合はどうだ?寒くはないか?」
『大丈夫だよ、ありがとうジョゼフ』
「そうか……」
『………ねえ、ジョゼフ』
「どうした?」
『叔母様から聞いたんだけどね、この部屋の景色、春になると色とりどりの花が咲いてすごく綺麗なんだって』
「へぇ……」
『暖かくなったら、みんなでお茶会でもしようよ。きっと少しは気持ちも明るくなるよ!』
「……そうだな。それには、まずお前が良くならないとな」
『む、わかってるよ、………ごほごほっ(激しく咳き込む』
「クラウド!?」
『(咳き込みながら)大、丈夫……ごめんね、ジョゼフ』
「クラウド……」
その年の春、花は色を付けることなく枯れていった。
「…………今日も寒いな」
我が最愛の人。我が半身よ。
私は今でも、あの日の事を覚えているよ。
どんなに足掻いても、縋っても、お前の元に行けぬと言うならば。
せめて。
この記憶の中だけでも、永遠に。
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