来福の紅色の箱
wowaka 現実逃避P
来福の紅色の箱
- 49
- 1
- 0
「さぁさ!お客さん!最後にご連絡だヨ。御付き合いよろしくネ」
今日も路上で大道芸のライブ。人集りと拍手の中、メアリは叫んだ。
時間は数時間遡る。たまたま通りかかった出張所で困り顔のニフが気になってしまったが運の尽き。宛も分からない箱を任されてしまった。最初はキラキラ綺麗な箱だと思ったが、憂いに満ちた白濁色に涙の様な水色が走る箱…湿っぽいというか、なんというか…。まぁ、仕方ない。私は人を集めるプロである。早速びっくりするようなショーをゲリラで行う。観客が1人、10人、50人…もうみんな私の技に釘付けだ。
最後の叫びの後、何も無かったメアリの手からパッとあの箱が登場する。拍手喝采、皆は箱に注目した。この箱が送られるはずだった人を探していると問いかけたが、私だ!と声が上がらず、ショーは時間を迎えた。ゾロゾロと解散する中、冴えない狼の獣人が1人立っていた。
「…や、やぁ…最後の演目の箱なんだけど…きっとあれ僕のだと思うんだ…渡してくれないかな」
何処と無くオドオドとしている。あまりに怪しいので、一旦箱を獣人に渡して後を付けることにした。箱を受け取った獣人は案の定、街をウロウロした後、箱を質屋に持ち込もうとした。
「哎!!嘘つきだめヨ!それは誰かに送られた物!お客さん、メアリにそれ返して」
飛び上がるほど驚いた獣人は逃げようとしたが身体能力の高いメアリから逃げられるはずもなかった。獣人は膝をついて懇願した。
「ゆ、許してくれ!どうか話を聞いてくれ!」
「聞くだけなら、聞いてやらない事もないネ」
獣人は項垂れて話し出した。
「実は…僕は鍛冶屋の見習いだったんだ。でも、才能がなかったんだ…親方に注意されても失敗ばかりで…挙句に自分の不注意で怪我をした上に親方の大事なハンマーを壊してクビになってしまって。うだつの上がらない僕に愛想尽きて、恋人も出ていってしまった…」
不幸の詰め合わせのような話。怪我に失業に失恋とは!メアリは絶句した。
「仕事出来ないんじゃ金の工面もできない…ヤケクソになってた…本当に申し訳ない!…でもこれからどうしていこう」
…ぷっ!と吹き出したかと思うと、なんとメアリはこれだけの不幸を聞いて笑いだしていた。
「…な!笑うなんて、僕をバカにしてるのか?」
「おにーさん!これだけハプニング集めるなんて天才ネ!こんな状況なかなかないヨ!楽しまなきゃ!ドン底なんてなかなか味わえないヨ」
メアリの笑い声に合わせるように花火が舞うような閃光が輝いている。獣人が握っている箱がバチバチと輝いた。
眩しさに瞑った目をゆっくり開くと、あれだけ不幸に取り憑かれていた獣人が幸せそうに笑っている。豪華な家にご馳走が並ぶテーブル。メアリは混乱して見ていると彼は語り出した。
「あの後何とか見つけた花火師の仕事で、親方のお嬢さんと結ばれて、ギルドの運営を任されたが…僕は運営の才能があったんだ。あのまま鍛冶屋をはじめ、人に雇われる仕事をしていたら一生気づかなかっただろうね…笑顔だ。楽しむ心だ。それさえあれば、幸せは向こうから寄ってくる」
男はメアリに顔を向けると穏やかに微笑んだ。
「君は本当に大切な事は何かを教えてくれた。贈られるべき人に届いて欲しい…過去の僕にちゃんと届くといいが…」
混乱するメアリを他所に、お祭りの様な真っ赤な花火が目の前いっぱいに広がっていった…
「お嬢さん!大丈夫かい?…あ…気がついた…」
気付くと倒れていたらしく、獣人に抱えられていた。彼はさっきまで話していた冴えない彼に戻っている。あれは一体なんだったのか…
「箱は返すよ…箱を探してカバンを漁ったら、お金が入った紅色の袋があったんだ。こんな財布あったか覚えがないんだけど…これを元手に仕事探してみるよ。何もかも失ったけど、逆に全部新しく始められるんだもんな。楽しんでみるさ…」
ポカンとするメアリ。しかし、ふと箱のしている事を理解し叫んだ。
「そっか!メアリと一緒だ!悲しい時、辛い時、箱は笑顔を届けてるんだネ」
手元に目をやるがそこには何も無かった。
次の日、貴方は出張所の前を通りかかると、ドアの小窓からむむむと面白い顔で紅色のリボンのついた虹色と水色の箱と睨めっこするニフを見かけて、声をかける。
「メアリさんに渡した箱が何故かまた戻って来てしまって…届け先を見つけるの手伝ってくれません?」
‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇
謎の箱を預かってください。
尚、このクエストのアンサーソングはそのまま次のクエストソングになります。
コメント
まだコメントがありません