花吹雪のショータイム
高屋亜希那
花吹雪のショータイム
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春の強い風に花びらが舞う。花の香が花びらと共に辺りを漂っていた。良い香りは人にも魔族にも愛されるんだな!と呑気に考えながら、鼻歌混じりに家へと向かう。とてもこれから戦闘をするとは思えない程、メアリは自然体でリラックスしている。
ギャーーー!!と耳が痛くなる様な酷い鳴き声を上げて、姑獲鳥はメアリを威嚇した。殺気立つ姑獲鳥に対して、メアリは突如準備体操をしだした。体をしっかりほぐして一息いれる。
「焦らない焦らない!どんな時も楽しくヨ!思い切りいくから覚悟よろしくネ」
ニコニコと姑獲鳥に話す姿は、どこまでもいつものメアリだった。あまりに緊張感のないメアリをハラハラしながら不動産屋は見詰める。すると、メアリはドスン!と華やかな装飾を施した鉄球を装備した。
「さぁさ!お立ち会い!!これからお見せします演舞!!シカトご覧あれ!!瞬きするのも勿体ないヨ!」
急に大声を張り上げた為に、ついに姑獲鳥は威嚇をやめ、先制攻撃を繰り出した。翼を広げると、辺りが陰る程の大きさだ。高く舞い上がると鋭い爪を立てて、メアリに向かって急降下していく。
「大きい鳥!すごいね!でも、そんなに大きいと煽られた時大変だ!どうするかな??」
ニヤリと笑って姑獲鳥を睨みつけた。
「来来、乱風!攻、斉天大聖!」
詠唱と同時に姑獲鳥目掛けて嵐が吹き荒れる。白い花びらが舞台の紙吹雪のように大量に撒き上がる。嵐を受けた羽は制御を失い、姑獲鳥はバサバサと体勢を必死に取り戻そうともがいた。
「お次は華麗な手毬の舞ヨ!ご覧あれ!」
ヒュンヒュンと鉄球を振り回したかと思うとすごいスピードで鉄球を姑獲鳥に飛ばした。ギャアギャアと叫びながら鉄球を避けるが、メアリは鉄球に付いた鎖を華麗に操り、避けられても即座に引き戻しては次の攻撃を連続で繰り出す。その動作はまるで舞を踊るかのようであった。ショーを見るかのような戦闘、武器の鉄球すらも演舞の小道具の様相である。
ペースを崩され攻められる一方だったが姑獲鳥も黙ってはいない。ギャー!!!と雄叫びをあげると羽を大きく広げ、メアリ目掛けて羽ばたいた。先程の魔法に負けない暴風が襲い、メアリの動きは止まってしまった。しかも暴風と共に羽根を飛ばしていた為、メアリはあちらこちらに切り裂かれた様な傷を負った。
「哎!せっかくの衣装が!!師匠に怒られるー!しかも舞を止めるなんて…まだまだだネ」
ガックリと自分の芸の未熟さに肩を落とすが、ふぅ…と一息いれると笑顔で顔を上げた。
「ショーの途中で凹むなんて、もっともっとダメよ!何時如何なる時も楽しむ!これ、師匠の究極の教え!!」
ギャ!ギャ!ギャ!とけたたましく叫びながら姑獲鳥は舞い上がり、また急降下しながら迫ってくる。風の魔法で応戦するが、同じ手は二度も食わないと翼を翻して、上手く風を掴んで猛攻に拍車をかけた。爪で更に切り裂かれるメアリ。しかし、どんなに追いやられてもメアリの目の光は輝き、この状況を楽しむかのようだった。
「さてさて!最後の演目、カミツキによる魔法と体技の合わせ技!とくとご覧あれ!来来、斉天大聖!跳舞!!」
花びらを纏いながらクルクルと回り出すメアリ。それに合わせ鉄球が不規則に起動を変えながら姑獲鳥を襲う。メアリと鉄球を導くかのように風がうねりを上げて吹き荒れる。目まぐるしく変わる風向きと息もつかない連続攻撃に為す術もなく、攻撃を食らう姑獲鳥。その後ろに美しく咲き乱れる白の花…これはひとつの舞台だ…不動産屋はその画に息を飲んだ。どの場面も目が離せない…。
ドサッ…ついに姑獲鳥は力尽きて地に落ちる。メアリは風を操りながら鉄球を花のようにクルクル振り回し、最後に大きく一礼した。不動産屋は無意識に拍手を送っていた。
後日、すっかりメアリの芸のファンとなった不動産屋はこの戦闘の興奮を家主に熱弁したらしく、それに感化された家主がなんと家を綺麗に管理してくれるなら、家賃はいらないからぜひ住んで欲しいと言ってきたそうだ。
「まいどあり!!」
ニッコリ笑顔で感謝すると、メアリはスキップしながら新しい住居へと向かった。
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キリエに住む家を手に入れました。
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