キリエの絶対ヒロイン
石田よう子
キリエの絶対ヒロイン
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「こぉらぁー!弱い者いじめは許さないから!」
小鳥に群がっていた妖鳥に栗色の尾を靡かせて果敢に切かかる小柄な姿。妖鳥はギャギャ!と不気味な声を上げて反撃を繰り出す。栗色の小さな剣士は半泣きになりながらも、諦めずに剣を振り回す。やがて妖鳥の方が根負けし、大声を上げながら飛び去った。
「はぁ、はぁ…ぐすっ…痛たぁ…大丈夫だった?怪我してない?小鳥さん」
ピピッと鳴き声をあげると剣士の周りを飛び回り、やがて飛び去った。
「元気でね!やっぱり正義は勝つ!えへへっ」
喜びで栗色の尾はパタパタと踊り出した。
彼女はちぇり。犬の獣人である。尾と同じ色の髪の毛には、また同じ色の耳が垂れ下がっている。小型犬の獣人であるため、他の犬の獣人に比べ小柄で可愛らしく、戦闘にはとても向いているとは言えない。しかし、彼女は幼い頃魔族に襲われ、危ない所を通りがかりの旅人に助けられた事がある。大振りの大剣を華麗に操り、見事魔族を倒す姿に憧れを抱いてしまい、危険に晒されたのにも関わらず、彼の様なカッコイイ人になりたい!と、日々困った人を助けながら女戦士を目指している。
バタバタバタ!今度は騒がしい足音が迫ってきた。はっと気づき、剣を抜いて構える。そこに現れたのは、髪を乱し、息を切らしたニフであった。
「獣人の方が襲われてると通報がありまして!!ってちぇりさん!!腕から血が!!」
ニフは顔を真っ青にして叫んだ。小鳥を助けた満足感で気付かなかったが、傷に気付いたちぇりも一緒になって叫ぶ。2人でアワアワした後に、何とか力を合わせて応急処置をした。
「くぅーん…イタタ…まだまだこれじゃみんなを守れない…もっと頑張らないと!」
「えええ!危険な事はやめてくださいね!軍の方にすぐ相談してください」
えへへへっとちぇりは笑って誤魔化した。ニフは急に、あ!!っと声を上げると羽根ペンと羊皮紙を差し出した。
「すいません、住民帳に不備が見つかりまして!書き直しをお願いしていいですか?」
勿論!笑顔で受け取ると、ちぇりは鼻歌交じりに記入した。
「ありがとうございます!!ちぇりさん、犬の獣人…えーっと…はい!バッチリです!ありがとうございます!ちぇりさんの憑神はヴァーチァー。光と物理の魔法が使えますね」
…どこかで叫び声の様な音が聞こえた。垂れ下がった耳がピクリと動く。
「…誰かが助けを呼んでいる!私、行かなきゃ!」
きっと外壁に取り付けた錆びた風見鶏が動いた音じゃないかな…と突っ込めずに、走り去るちぇりの背中をニフは見詰めていた。
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ちぇり 獣人(犬) 女性
ヴァーチァーのカミツキ
データを保管致しました。ようこそ!キリエの商店街へ…
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