ギルド御用達のお店にようこそ
sumika
ギルド御用達のお店にようこそ
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「今日はやってるかなぁ?秘密のお店なんだけど…ニフにこっそり教えてあげるね!」
そう言うと笑顔でニフの腕を掴んで走り出した。
「あの!お店…!?通り過ぎてますけどぉ!」
ナギは声を無視してずんずんと走っていく。やっとナギは立ち止まりここだよ!と微笑んだ。必死に息を整えてニフは言った。
「ここは…どう見てもお家の様ですが…?」
住宅エリアから少し離れた隠れ家のような家だった。ナギはニタッと笑顔で答えると、ごめんください!と元気な声で扉を開けた。
なんだい?と声が聞こえ、恰幅の良いドラコン族の女性がのしのしと奥から現れた。厳しい顔つき、堂々とした態度にナギの大声に負けない響き渡る声。本物のドラゴンかと思う威圧感だ。
「女将さん!お友達連れてきました!」
「昼来るなら予約しておけって言ってるのも守らないで、部外者まで連れてきたのかい!?…てまぁ!可愛いお嬢さんじゃないの!いらっしゃい!」
大きなテーブルのある部屋に通され、待っててちょうだい!と女性は上機嫌で部屋を出ていった。ニフが状況を掴めず困惑していると、ナギは語り始めた。
彼女は先代の親方の奥さんで、ずっとギルド員の食事を趣味で世話していたらしい。先代亡き後、思い出の地に居を構えてひっそり暮らしているのだが、女将さんの味が忘れられず、度々ギルドのメンバーが訪れては食事をするので、そのうちレストランを営む様になったそうだ。
「とはいえ、看板も出さないし、場所も場所でしょ?来るのはギルドメンバーばっかりで。
女将さんああ見えて実は可愛い物とか女の子大好きなんだー。だからニフが来て嬉しいんだよ。私がギルドに来た時もすごかったなぁ」
「全くだよ!あんたがギルドに来た時はどれだけ期待したか…ところがとんだ飛竜バカでねぇ…」
女将さんは大皿に山盛りの美味しそうな料理を持って戻ってきていた。
「お、女将さん…そんなたくさんの料理…お、お代払いきれる程持ってきてたかなぁ」
慌てるニフに豪快に笑いながら、奢りだよ食べていきな!と女将は言った。
どんな料理もびっくりする程美味しい。飛竜ギルドの関係者だけあって、珍しい輸入品の食材がふんだんに使われていて、何を食べても飽きが来ない。…とはいえ…
「女将さん、ギブアップです!!これ以上食べたら破裂しちゃいます!」
優しい顔で笑う2人。全く違う種族なのにまるで親子みたいだとニフは思った。
「もう少し耐えておくれ。せっかく作った金雲の花のゼリーを食べて欲しいんだよ」
女将がゼリーを取りに部屋を出た。程なくしてナギは何かを思い出し、そうだ!と大きな声を上げてカバンから奇妙な形の果物を取り出した。
「今日の仕事先で買ってきたんだ!すごくいい香りでしょ?」
確かに取り出した瞬間から、何とも甘くうっとりするような香りが漂った。
「美味しそうでしょ!?帰ったら食べようって思ったけど、ニフにもあげるね!女将さんの分までないから今こっそり食べちゃお!」
女将に申し訳ないと思いつつ、素晴らしい芳香に負け、ナギが手持ちのナイフで食べやすく切った果物を受け取り、2人同時にパクリと口に放り込んだ。
ぎゃーーーーーーーーーーー!!!!!!!
「どうしたんだい!!!…って、まさか!」
女将は周りに転がっている果物の残骸を手に取り
「ククミの実を食べたのかい?!これはね、九つの不味い味が混ざってるから九苦味って呼ばれてるんだよ!全く…香水の材料を食べるんだからあんた達は…」
よく分からない物は気軽に食べるなという女将の説教に凹みつつ、フルフルの甘いゼリーが2人とその舌を優しく慰めた。
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とても贅沢なランチを堪能しました。
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