蝶々結び
祈り子と式神
蝶々結び
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「アナタに言いたいことがあるって、ボクが以前言ったのを覚えてます?」
「あ、ああーうん…何のお叱りかって怖くて、触れられなかったやつ…」
「ボクの話と聞いて即叱られると考えるそのネガティブな思考回路どうにかなりませんかね…まあ今はいいです。それよりも、
名前をください。ボクに」
「ん?…千代くん、だよね?」
「アナタがつける名前です」
「……んん?」
「『千代』は正確には名前ではありません。アナタに出会うより前、先代戦神サマがボクを作り出したときに、仮としてつけた『呼び名』です。呼称がない状態は不便だからと。
式神として、主であるアナタに、正式に命名してほしいと言っているんです」
「………えっどうしよう荷が重い」
「そんな風に言うんじゃないかと思いましたよ…だから覚悟しろ、と言っておいたんです。
呼びやすければボクは何でもかまわないので、べつに考え込まなくていいですよ、適当で。
先代なんて三秒で考えてました。ちょうちょだからちよ、と」
「神さま…意外にテキト、……ご、豪気なところありそうだもんね…
ってあれ、そういえば…その神さまって今どこに…」
「先代ですか?そういえばしばらく姿を見ていませんね」
「え?それってひょっとすると…神さまがまた何か危ない状況にいるって可能性も」
「さあ。無きにしもあらず、でしょうか」
「えぇえ関心が薄い……さ、探しにいってみようかなあ」
「あの方のことですから、修行にのめり込んで山奥で滝行でもしてるんじゃないですか」
「それはすっごく似合ってるし想像に難くないし実際やってそうだけど…!」
◆◇◆◇◆◇◆
「…なんて会話をしたあとすぐに面狩との戦闘でそれどころじゃなくなってましたし、ボクの名前の話なんてすっかり忘れられているかと思ってました」
「覚えてたよ、忘れるわけない。嬉しかったし」
「嬉しい?」
「主である私に、って言ってくれたから。
紫苑くんが、こんな私を主だってあのときちゃんと認めてくれたってことなのかな、って考えると嬉しいなあって」
「そ、…………」
「(あれ黙るなんてめずらしい…)」
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