泥中の幼子
朗読: 葦巻 伴奏:シュリさん 台本:じん
泥中の幼子
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こういう朗読好きです。
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【泥中の幼子】
殴打された背中の鈍痛で意識が浮上する。
あぁ。
また朝が来た。
天井のシミが少し大きくなった気がする。
部屋には失敗して握りつぶした反省文、軍人勅諭の書き写し、写経が散乱している。
吸い込む空気は鉛のように重たい。
肺一杯に詰まって、身体が床に沈んだまま動かない。
毎朝、階下では泥酔した上官が待ち構えている。
『 部下だけを逝かせるとは軍人の屑以上に人間の屑だ。畏くも陛下からお前の分まで賜っているんだ。残すなよ。卑怯者。』
昨日はそんなことを言われた。
まだ誇りは心の何処かで燻っているのか酷く傷ついた。
しかし、鏡に映る渇き切った顔を見てそれが事実だと知った。
あなたの言う通りだ。
これ以上息をして貴重な資源を無駄にしてはならない。
枕元の鉢巻。
顔を埋め涙を拭う。
母の匂いがした。
コメント
2件
- まっきー
- 饒速日 人大尉の無気力な感じと上官のコントラストがはっきりとしていて、とてもいいですね! 後半の諦めに似たような読み方も聴いていてとても辛くなりました。 ありがとうございます!